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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第11章 鴉は舞い、狼は奔る
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第222話 賢狼の裏側

 アヴァリスの父親にしてブレヴァン侯爵トライゾンは、後世においても評価に賛否両論ある。


 彼の異名「賢狼」が示す通り、とても頭が切れるだけでなくその政治手腕は見事なもので、彼の治世の間、ブレヴァン侯爵領は農地開発や新しい鉱山の建設、そして西海岸一帯で独立している自由交易都市同盟との取引を拡大して収入を大幅に増やすなど、内政面の功績だけ上げれば間違いなく名君と言える。

 また、領内の開発にとどまらず、前皇帝オルセリオ三世に帝都に招かれ、タイラスルスの一部再開発を任され、見事成功させたという実績もあり、おまけに有力諸侯との交流も欠かさないなど名士としても名高かかった。


 しかし、彼には二つ大きな欠点があった。

 まず、トライゾンは非常に野心的であり、自らの権益を拡大することに人生をかけていると言っても過言ではないほど、とにかく貪欲だった。

 そもそも彼の父親は、彼が若いときに他の兄弟と共に不審な死を遂げており、30代で侯爵家を継いだ後、権謀術数を駆使して周囲の侯爵や伯爵家を弱らせて併呑するを繰り返していった。

 その結果、元々現在の半分程度しかなかったブレヴァン侯爵家は帝国でも一二を争う強大な貴族となったのだが…………やりすぎたせいか、前皇帝オルセリオ三世から帝国内の私闘禁止を命じられた上、直前に併呑しようとした伯爵家は宿敵ユルトラガルド家と対立した末に、逆に向こうの正統性を主張されて敗北、最も欲しかった金鉱山を手中にいれることができなかったのである。

 このように「賢狼」の異名は、その優れた政治手腕を示すだけでなく、狼のように油断のならない悪辣な人物であるという評価も含まれているのである。


 そして、もう一つの大きな欠点は――――軍事的素質に欠けることであった。

 戦略眼自体は悪くないのだが、トライゾン自身が軍を指揮しても思ったように部隊を動かすことができず、過去に魔族との戦いに駆り出された際には、2倍以上の兵力を持ちながら劣勢に立たされるという失態を演じ、以降は部隊の士気をほぼ部下の将軍たちに任せていると言った有様である。

 本人もこの欠点をある程度自覚しており、アヴァリスを士官学校に通わせているのも、自分のような戦争オンチにしたくないという思いもあると思われる。


 今回の内乱でも、魔族との戦いで鍛えられているユルトラガルド家を軍事的に制圧するという難題に直面するにあたり、彼は思い切った戦略を立てた。

 それは……調略によって国境沿いのユルトラガルド家の貴族を一部寝返らせ、さらには敵を圧倒する兵力を揃えて数的有利で押しつぶすというものだ。

 今まで蓄えてきた膨大な富や物資をすべて使って西帝国中のすべての傭兵を雇い、ありったけの流民や徴募兵をかき集め、一時的にではあるが西帝国本隊をはるかに上回る兵力を手に入れた。

 その数は5万人……宿敵ユルトラガルド家の最大動員兵力は7000人程度になるので、10倍近い兵力差となり、ベルリオーズに並ぶ猛将と名高いユルトラガルド侯爵ランツフートも、流石に野戦では勝ち目がないと判断し、首都リヴォリ城に籠城することを決めた。

 こうしてトライゾンは自らの軍事的素質のなさを政治的手腕と権謀術数で補うことに成功し、後は数にものを言わせて力押しで攻略出来ればそれでいい、はずだった。

 だがやはり、得てして戦いとは予定調和的に進まないものであった。

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