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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第11章 鴉は舞い、狼は奔る
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第217話 青狼のラプランセス

 国境を越えたシャルンホルストたちの軍は、すぐにリヴォリ城に向かうのではなく、やや東に位置するオキメイという名の村まで向かい、そこに軍事拠点を築くこととなった。

 オキメイ村はアルトイリス領とコンクレイユ領の国境となっていたミッドルタ大河が、ある地点から流れを西から北に曲がった後、しばらく北に向かって再び西に折れ曲がるまでの経路のちょうど中間あたりの東岸に位置しており、このあたりはほかの場所と比べて比較的水深が浅くなっているほか、木製ではあるが幅広の橋が架かっている。

 彼がこの場所を選んだのは、いざとなった時に守りやすいということと、敵陣と良い具合に離れているので行動しやすいというのもあるが、ミッドルタ大河でアルトイリス領につながっているので、いざという時に船で物資を運搬することも可能だ。


「シャル君、青狼学級ウチの方の設営は終わったよ、今は手が空いた子から物資の運び込みに向かわせている」

「早いなレムリア……こっちはまだ設営の最中だ、すまないが先に進めていてくれ。なんなら、橙鷹学級の方も手伝ってやってほしい」

「ふふん、素早い動きこそうちの学級の取り柄だからね」


 レムリアと呼ばれた黒髪褐色の女子生徒は、そう言って自慢げに口角をニィと上げた。

 陣地の構築指示を出していたシャルンホルストの元を訪れたレムリアは、今回協力を申し出てくれた青狼学級の級長であり、シャルンホルストと同じく学級をまとめる立場にある。

 やや乱雑に切られた黒いショートヘアに、帝国では珍しい健康的な褐色肌、その中でひときわ強烈に輝く金色の瞳が特徴的なボーイッシュな女性であり、異星のみならず動静にすらよくモテる。

 そのため、ついたあだ名は「王子様ラプランセス」、そして彼女の学級もまるで全体が狼の群れのように、機動力で相手を翻弄する戦いを得意としている。

 紫鴉学級とは担任同士の仲はよくないが、白竜学級の生徒たちからよく見下される者同士でシンパシーがあるのか、学生同士の仲はかなり良かった。


「しかしシャル君、ここから敵の陣地までずいぶん離れているけど、もっと前線に陣を張らなくていいのかい? 流石にこの場所だと遠すぎると思うのだけど」

「そうさな、ここはあくまで土台のようなものだ。この陣地がある程度出来上がったら、ここから少し西に行ったバニュ丘陵地帯に次の陣地を構えて、さらにそこからリヴォリ城にほど近いマコンクールの田園地帯に布陣しようと考えている」

「ボクが言うのもなんだけど、随分とゆっくり進むね。君の実家が大軍に包囲されているというのに、随分と肝が据わっている」

「……急ぐ時こそゆっくり歩けと昔から言うだろう? 何しろ相手は5万人以上の大軍勢だ、慌てて突撃してもどうにもならないからな」

「くくくっ、どうやら君はすでに「奇術」の種を仕込んでいるようだね? 一体どのようなイリュージョンを見せてくれるか、今から楽しみだよ。それじゃあ、ボクたちは橙鷹学級を手伝ってくるから、そっちも手助けが必要ならいつでも言ってくれ」


 そう言ってレムリアは颯爽と踵を返し、格好つけるように後ろ手を振って作業に戻っていった。

 仲間とは言え探りを入れに来たのか、単にせっかちなのかはわからないが、とりあえずシャルンホルストの計画には満足してくれたようだ。


(今から楽しみ……か、戦いを楽しめるあのメンタルを少し俺にも分けてほしいんだがな)


 レムリアをはじめとする青狼学級は確かに仲は良いのだが、彼らは基本反骨精神旺盛で、自主独立の気風がほかの学級よりも強い。

 強力な戦力ではある反面、彼らに言うことを聞かせるのは並大抵のことではないだろう。

 今はまだ自分の考えを尊重してくれているものの、この先意見が対立した時、果たして彼らを軍としてまとめることができるか…………総大将となったシャルンホルストに責任が大きくのしかかる。


(場合によっては、リクを見習わなきゃいけないかもしれん)


 指揮系統が確立できていない軍隊は滅びる――――分かり切っていることだった。

 はたして紫の鴉は、蒼き狼と橙色の鷹を御すことができるだろうか。

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