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第207話 皇太子蜂起

 西帝国北方にある辺境の町イリーシュにて――――澄み渡った青空の下、町の中心部にある壇上に、栗毛色の髪の毛に柔らかい物腰の青年が堂々と登壇し、集まった老若男女に対し高らかに宣言した。


「私こそ、皇帝の正統なる後継者レオニスである! 私は今ここに、僭称者マルセランを討ち果たし、正統なる帝位を取り戻すことを宣言する!」

「うおおおぉぉぉっ! レオニス様万歳! 皇太子殿下万歳!」

「レオニス様! 生きているって信じていました!」

「俺たちもあなた様に協力するぜ!」


 レオニスの両脇には、彼のもっとも信頼する腹心にして近衛騎士団長のビュランと、一族を上げてレオニス側についたエスマイク伯爵家の若き家長であるザイドリッツが控えていた。

 エスマイク伯爵ザイドリッツは、遊牧民たちを率いて戦っていた際に戦場にいた、炎のようなオレンジ色の髪の毛が特徴の熱血漢で、

 周囲の貴族たちがマルセラン側に靡いたり、日和見を決め込む中、彼は自身の領地を失うこともいとわず、自らの騎士団と共にこの一月の間レオニスを守り抜いたのである。

 彼の助力もあって、密かに帝都を脱したレオニスは、マルセランたちが帝都を離れた隙をついて北方で急速に勢力を拡大し、驚くことに帝国北方の辺境に住まういくつもの遊牧民たちと交渉してその力を借りることに成功したのだった。

 少し前まではやや世間知らずな皇太子だったレオニスは、いつ命を落とすかもわからない放浪の旅を経験したことで、精神的にもぐっと成長したのだろう。

 壇上で堂々と演説する彼の顔からはお坊ちゃまのような甘さは抜け落ち、立派な次期皇帝としての威光が垣間見えた。


 レオニスの蜂起の知らせはたちまち周囲の町や村、それに地方の貴族たちにも伝わった。

 彼らは今まで表向きはマルセランに従うそぶりを見せていたが、以前リクレールが発した檄文でレオニスの娘が生きていることを知ると、とたんにマルセランが信用できなくなり、さらには先日のコンクレイユ侯爵軍との戦いで軍が半壊するほどの敗北を喫したことを知ると、彼らの心はさらに離れていった。

 そんなところに、正統な後継者が生きていたという知らせが入ったのだから、機を見るに敏な貴族はこぞってレオニスの傘下に加わることを申し出たのだった。

 そして……レオニスが生きていたという知らせは、当然彼らのところにも届いた。

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