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第202話 謎の襲撃者

「アヴァリス、あれを見ろ! もしや帝国兵じゃないのか!?」

「くそっ、遅かったか!! この雪の中であの倒れ方……おそらく全員死んでいるに違いない」


 アヴァリスたちが街道で発見したのは、積もった雪を大量の血で染めて倒れている帝国兵たちの姿であった。

 数はおよそ300名程度で、何者かの襲撃を受けたのか、その傷はすべて武器や矢によるものだった。

 アヴァリスの言う通り、やられてからそれなりに時間がたっているようで、生存者は一人もいない。

 しかも、襲撃者はかなり欲深いようで、ご丁寧に帝国兵たちが装備していた武器や防具、所持品に至るまで根こそぎ奪われている。


「なあ、こいつら兵糧や武器を運んでいたはずだよな? 荷車が見当たらないぜ?」

「よく見ろ、道の向こうからは大量の「わだち」が続いているが、それがここから道を外れて北の方に向っている…………もしかしたら、兵糧は盗賊か何かに奪われたんだろうな」

「盗賊か……しかし、300人いる西帝国の正規兵を一方的に皆殺しにする賊なんているのか?」

「それは分からないけど、現にこの帝国兵たちは皆殺しにされて物資を奪われたことだけは確かだ。少し危険だが、この轍や足跡をたどって襲撃した奴らの正体を突き止めるぞ」

「そうだな、ここまで来て手ぶらで帰ったら笑いものだ」


 こうして白竜学級の生徒たちは、危険を承知で謎の襲撃者の正体を突き止めるべく、雪の上に残った荷車の車輪の轍と無数の足跡をたどって進んでいった。

 暫く進んで日も暮れ始めた頃、彼らは森の狭間で野営地を築いている大人数の一団を発見した。

 誰もが毛皮や粗末な鎧を着こんでおり、おまけに大量の馬を引き連れていた。


「何あれ、馬賊かしら?」

「いいや……奴らは北方の遊牧民どもだ。食料が取れない冬に、奴らは時々こうして西帝国の北方地方にちょっかいかけてきやがるんだ」


 どうやら襲撃者たちの正体は、西帝国よりさらに北方の大地に住む遊牧民たちのようだった。

 彼らは大量の略奪品を得てすっかり上機嫌になっており、奪った食料を食い荒らし、自前の酒を飲んで楽しそうに歌って踊っていた。

 もちろんアヴァリスたちに見つかったことには一切気が付いていない。


「奴ら、完全に油断しているな。帝国兵たちの仇だ、全員突撃!」

『応!!』


 アヴァリスの合図で、白竜学級の生徒たちは一斉に野営地に向って突撃を敢行した。

 敵が物資を奪い返しに来るとは思っていなかった襲撃者たちは、彼らの姿を見るなりびっくり仰天大騒ぎとなり、戦う気概すら見せず、慌てて手近な馬に跨って逃走しようと試みた。

 白竜学級の生徒たちも、そうはさせるかと猛攻を仕掛け、逃げ遅れた多数の敵を一方的に殺戮していった。

 結局、北方遊牧民と見られる襲撃者たちは、せっかくの略奪品を投げ捨てたままその大半が逃走した。

 全滅させられなかったことは悔やまれるが、ともあれ物資は何とか奪い返すことができたので、これを陣地まで持ち帰れば一時的には食糧不足の問題は解決することだろう。

 彼らは急ぎ陣地に戻るため、夜を徹して近くの村まで移動することにしたのだが…………


「あいつら……一度逃げ出したくせに、性懲りもなく戻ってきやがったか」

「一度奪ったものを奪い返されたのがよほど悔しいのかしらね? どうする? 追い返してやろうかしら?」

「そうだな、近づいたら適当に追い払え。どうせ大したことはできないだろ」


 一度逃げ出したはずの少数の襲撃者たちが、夜を徹して移動する白竜学級の生徒たちの後ろを、付かず離れずの距離を取りながら付いてくるではないか。

 真正面から戦う気はないようで、時々武器をかざして攻撃の構えを見せると、彼らはたちどころに退散するのだが……夜間の移動中にこれを繰り返されるせいで、生徒たちは急激に疲労が蓄積していくことになる。

 そして、それこそが――――襲撃者たちの狙いであった。

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