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第200話 打つ手なし

 ロディ渓谷での大敗により、帝国軍本隊は二回目の攻撃をするかどうか決めかねている状態で、山の上に陣取るコンクレイユ侯爵軍とにらみ合ってすでに10日が経った。

 元旦からすでに一か月が過ぎており、季節も後冬(この世界の人間の暦――春夏秋冬がそれぞれ前中後に3分割されている)となったにもかかわらず、進軍計画は遅々として進まなかった。

 攻撃できない理由としては、やはりコンクレイユ軍の守りがあまりにも堅く、突破するどころか行軍さえも困難な状態であることと、何より新型投石機の威力が驚異的で、騎士や兵士たちが恐れおののいてしまっているというのもあった。


「陛下は何を考えておられるのだ? このまま手をこまねいているつもりか?」

「そうは言うけど、あの守りを突破するのは難しいぞ」

「それにだ、この寒さでは兵たちの士気も下がる一方だし、これ以上進軍しても無駄に兵を損耗するだけだ」

「かといってこのままおめおめ帝都に引き返したら、帝国諸侯の結束に関わる」


 また、主戦派の筆頭であったヴィシーニや、先陣を切ることに前向きだった藍熊学級と黄獅子学級の両担任が戦死したことで、攻勢を声高に主張する者が減ってしまったことも、攻撃をためらわせる一因となっている。

 帝都での戦いのときにはあれだけ勇ましかった白竜学級も、流石に正面から山の上の防衛陣地に突入するのは自殺行為に等しいと考えており、どうにかして突破できる方法はないか日々頭を悩ませていた。


「なあアヴァリス、俺たちはもう10日も山の上の反乱軍を睨み付けるだけだ。そろそろ突破口を見つけ出さないと拙いんじゃないか?」

「ちっ、んなこと言われなくてもわかってるっての。けど、たとえ俺たちが突撃を命じても、兵たちがすっかり怯えちまってやがる。まずはあの防衛陣地に居座っている忌々しい投石器を破壊すべきだが……ロザーヴィア、何とかお前の炎魔術で焼き払えないのか?」

「冗談じゃないわよ。魔術士にとってただでさえ投石器みたいな兵器は相性最悪なの。それとも、私が岩に押しつぶされないように、あなたたちが身を挺して守ってくれるかしら?」

「無理だな。たとえ藍熊や黄獅子の連中がいても壁にすらならんしな」


 ロザーヴィアは炎魔術での遠距離攻撃を得意としているものの、その射程は長くても150ラザル程度で、しかも強力な熱量を持つ炎になるほど、有効射程は落ちてしまう。

 相手が弓だけであれば盾で防いでいる間に詠唱できるのだが、投石器相手では人間にかばってもらうことはできない。

 そう、兎にも角にも、コンクレイユ軍が持つ新型投石機が彼らの目下の最大の悩みの種であり、どうにか破壊できる手段はないかと散々検討しているが、今の季節では山道を回り込むことすらできないのでほぼ手詰まりであった。

 ブレヴァン侯爵トライゾンが蜂起を早めた影響が、まさかこのようなところで顕現するとは彼らも思ってもいなかっただろう。


 そのようなわけで、アヴァリスをはじめとした白竜学級の秀才たちがああでもないこうでもないと議論を重ねていたところへ、彼らの元にマルセランから呼び出しがかかった。


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