第198話 ロディ渓谷の崩落戦 10
「閣下、敵の殿がようやく迎撃に現れました。しかも、彼らは士官学校の生徒たちのようです」
「まだ参戦していない者がいたか……しかも、何人か見覚えのある顔がいるな。あれはアヴァリスか、ブランシャールもおるな、となるとヴィクトワーレがいた白竜学級が相手となるか」
ベルリオーズ率いるコンクレイユ侯爵軍は、勢いそのまま白竜学級たちの部隊に正面から激突する。
流石にお互いに実力者ぞろいである上に、装備もかなり良かったので、お互いに武器で打ち合うだけでなかなか相手を倒せない状態となった。
「これ以上の追撃は難しいようだな」
「はっ、わが軍の衝撃は完全に受け止められました。兵にもやや疲労がたまっておりますゆえ、これ以上の野戦は無意味かと」
「よし、潮時だ全軍退却」
これ以上の追撃戦は意味がないと判断したベルリオーズは、コンクレイユ軍に撤退の指示を出し、騎士や兵士たちも彼の指示に従って整然と退却を開始した。
「よかった……反乱軍は撤退するみたいだ」
「俺はまだ余裕がある、もう少し叩いておきたい、いいだろ?」
「そうだな、敵を止めたのはいいが損害を与えられないのも癪だからな」
白竜学級の学生たちは、一応当初の目的通り敵の追撃を止めることはできたが、敵を一人も倒せていないのは流石にいかがなものかと考え、撤退する敵をある程度追撃することにした。
しかし、そんな彼らの行動をまるで見透かしていたかのように、ベルリオーズが生徒たちの前に立ちはだかった。
「若造ども、いい機会だ、このワシがお前たちの相手をしてやろう」
「ヴィクトワーレ先輩の親父が出たぞ!? 確か滅茶苦茶強いって噂じゃ!?」
「いいやこれはむしろチャンスだ! ここで倒せば逆転勝利だぞ!」
血気盛んな白竜学級の生徒たちは、ブランシャールを筆頭に次々にベルリオーズに戦いを挑んだ。
ベルリオーズは一時的に10人以上の腕の立つ生徒たちを相手する羽目になったのだが、劣勢になるどころか彼らの攻撃を剣一本で余裕ではじき返し、改めてそのでたらめな強さを敵にも味方にも知らしめることとなった。
「なっ……なんて強さだ、本当に同じ人間なのか!?」
「畜生、この俺様が圧されているだと、ありえん!」
「まだまだじゃなひよっこども、次に戦場に出るまでもっと腕を磨いておくのだな。ではさらばだ」
コンクレイユ軍は一部怪我した者はいたが、ほとんど損害を出すことなく悠々と防衛陣地に引き上げていった。
白竜学級の面々も自分たちの側に死者が出なかったことでホッとしたが、相手を止めるのに精いっぱいで敵を倒すことができなかったことを悔やみ、次こそは勝ってみせると一同が強く心に誓うのだった。




