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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第9章 ロディ渓谷の崩落戦
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第193話 ロディ渓谷の崩落戦 5

「先生っ! 俺たちは一体どうすればいいんですか!?」

「頭上からは投石器の石、前からは矢が飛んできます! これじゃあ先に進めません!」

「……大丈夫だ、先生が必ずお前たちを勝利に導く。敵の攻撃は激しいが、かいくぐれないことはない」


 目の前で帝国兵たちが次々に倒れていく中、藍熊学級の生徒たちは進むことも引くこともままならない状況に絶望していた。

 しかし、かつて歴戦の勇士だったラマズフテは、このような絶望的な戦況でもあきらめることなく攻略の糸口を手繰り寄せようとしている。

 するとそこに、黄獅子学級担任のロシームが、中断グループから何とか合流してきた。


「ラマズフテ、無事だったか」

「ああ、なんとかな」

「戦況は非常にまずい、私も陛下に防衛施設の破壊を命じられたが、このような状況では近づくこともままならん。何か良い方法はないか」

「……敵の投石器は脅威だが、一度投擲した後しばらくは装填に時間を要するようだ。我らはその隙を狙う」

「なるほど、それはいい考えだ。それに、あの投石器はおそらく射程の下限があるはずだ。懐に入ってしまえば、脅威はなくなる」


 この危機的状況を打破するべく、教師二人は次の投石のタイミングを見計らって一気に距離を詰めることに決めた。

 ラマズフテとロシームの見立ては正しく、コンクレイユ軍の投石器は一度投石すると次弾装填に時間がかかるだけでなく、その大きさと地形の関係で、距離が近くなると逆に狙えなくなるという欠点がある。

 よって、下手に慎重に進もうとするより、タイミングを見計らって一気に攻撃するのは正しい方法と言える。

 そうしているうちに、投石器から次の石弾が射出され、彼らの頭上を飛び越えて後方の集団に着弾、多数の兵士や騎士をグシャリと圧し潰した。

 自分たちの頭上に落ちなかった幸運を神に祈りつつ、彼らは意を決して突撃を開始した。


「今だ! しばらくはあの投石器からの石は降ってこない、その隙に前進だ!」

「行くぞ、我が学級の勇敢さを世に知らしめるのだ!」

「一人一人の持つ気骨こそ藍熊学級の強さと知れ!」


 藍熊学級の生徒たちは、疲れ切った体に残った最後の活力を振り絞り、重装備のまま一気に坂を駆け上った。

 そして、その後ろから黄獅子学級の生徒たちも続き、風の魔術で飛んでくる矢や石を弾くなどして前衛を担当する藍熊学級を援助した。

 普段はそこまで仲がいいわけではない両学級だが、今は生きるか死ぬかの瀬戸際にあり、自然と協力しなければならないという気持ちが双方を結んだのだった。

 果たして彼らは、その勢いのまま100ラザルほどの距離を進み、ようやく木製の防壁や櫓が魔術士の射程圏内にまで収まった。

 ここに来るまでに矢で怪我を負ったり、途中で体力が尽きて倒れる者もいたが、最終的には200名近い生徒や騎士たちが防衛陣地の直前までたどり着いたのだから、素晴らしい根性であった。

 彼らの勇姿を見たベルリオーズも、思わず感嘆の声を上げる。


「ほう……士官学校所属の騎士どもはもとより、若い連中もなかなか骨があるものが多いな。リクレールやシャルンホルストたちもなかなか優秀だったのを見ると、やはり今の若い者たちは将来有望なのだろうな。だが…………惜しむらくは、その力を魔族との戦ではなく、人間同士の戦いで浪費してしまうことだ」

「閣下、敵の魔術士たちが詠唱を始めました」

「炎魔術による防衛設備の破壊は定石かつ効果的だ。しかし、それゆえ対策も数多く存在する。あの憎き魔族どもも、時々用いてきた手ではあるからな」


 そう言ってベルリオーズは、あえて敵が壁を破壊しようとするのを止めなかった。

 なぜなら、彼が眼下に見据える最前列の防壁の後ろには……大量の丸太が積んであるのだから。

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