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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第9章 ロディ渓谷の崩落戦
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第190話 ロディ渓谷の崩落戦 2

 帝国軍本体がロディ渓谷前面に到着した次の日、騎士や兵士たち、それに士官学校の生徒たちは束の間の休息を堪能していたが、その間にもマルセランをはじめとした重要な将たちは休む時間を惜しんで作戦会議に没頭した。


「斥候の報告通り、反乱軍は坂を登った切通しを塞ぐように陣地を構築しております」

「街道の両側に位置する高台にはいくつもの櫓が建設されております。そして、相も変わらず敵軍の戦力は不明とのこと」

「ふぅむ、流石に正面から攻撃するのは悪手ではあるか……シェムスタ候、敵を避けて進める間道などはないのか?」

「えっ」


 マルセランから話を振られたヴィシーニはやや困ったような顔で考え込む。


(まずいな……さすがに「知らない」と答えるわけにはいかん。ワシの沽券にかかわる……)


 シェムスタ侯爵領を統治するとはいえ、ヴィシーニは自領の細かい道など知らなかった。

 もっとも、自領の詳しい地理を知らない領主など珍しい事ではないので、彼自身が悪いわけではないのだが。


「恐れながら陛下、我が領に向かう道はこの街道以外他はございませぬ。仮にあったとしても、今の季節ではとても通行は叶わぬでしょう」

「ううむ、それもそうか」


 実際、ヴィシーニの言っていることはあながち間違いではなく、地元民だけが知っている抜け道があったとしても、冬の真っただ中に地理に疎い者が進むことはできないだろう。

 やはり現状では敵の防衛陣地への正攻法以外に道はなさそうだった。

 となれば、どの部隊が危険な先陣を担うのかという話になるが、ここで真っ先に挙手したのが藍熊学級担任のラマズフテだった。


「マルセラン様、今こそ我ら藍熊学級に先陣をお任せください! どれほどの困難が待ち受けようとも、正面から突破して見せます!」


 すると、彼らにばかりいい顔させるかと黄獅子学級担任のロシームも自信満々に挙手した。


「敵が築いている防衛陣地は、木製の急造製でございます。我が学級には炎の魔術に心得があるものが揃っておりますので、片っ端から焼き払って進ぜましょう」

「そうか、両名とも実に頼もしい! だが、前途有望な士官学校生徒たちばかりを危険な目に遭わせるわけにもいくまい。我が配下の近衛騎士たちも随行させるゆえ、堅実に攻めるのだ」

「陛下! 我らも後詰として出陣いたしますぞ! 何しろ我が領の存亡がかかっておるのですからな!」

「ヴィシーニも行ってくれるか! もし前衛が危機となったら、そなたも助けに入ってくれ」


 こうして着々と戦闘計画が進んでいくが、今回は珍しく白竜学級がほぼ空気の状態であった。

 一応、代表としてアヴァリスが参加してはいるのだが、以外にも彼はまじめな顔で諸省の意見に賛同するばかりで、いつものように自分が自分がとアピールしてはいない。

 そしてなにより、この場には白竜学級担任のデュカスがいないというのもあった。

 デュカスは短時間で編成を終わらせるために、すぐに行動できる部隊を第一陣として出陣させ、まだ編成が終わっていない部隊を第二陣として編成し、増援とするためにまだ帝都に残っているのだった。

 そのため、この場にはラマズフテやロシームをはじめとした威勢のいい将校の動きにくぎを刺す者がほとんどおらず、全力で正面突破するという方針で進んでいってしまっているのだった。

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