第158話 タイラスルス大内乱
目出度い新年早々に突如もたらされた西帝国皇帝崩御の報と、それを端に発した内乱によって、帝都タイラスルスの住人たちは、幸せだったはずの新年があっという間に地獄へと変わってしまったことで、たちまち大混乱に陥った。
ランタンやろうそくで照らされていた賑やかな大通りを騎士や兵士たちが必死の形相で駆けていき、寒空の下で屋台の温かな料理と酒を堪能していた住民たちは、たちまち駆逐されていく。
「皇帝陛下が急死しただって!? あんなにお元気だった陛下がなぜ!?」
「第二皇子殿下と第三皇子殿下が反乱を起こしたそうだ! 王宮に火の手が上がっている、急いで避難しなければ」
「避難すると言っても、どこに行けばいいのよ!?」
帝都タイラスルスは魔族軍との最前線から遠く離れた北方に位置するため、西帝国内では最も安全な場所と言われてきた。
その最も安全な地が一夜にして内乱によって危険地帯と化したので、住民たちは逃げようにもどこに行ったらいいか皆目見当がつかなかった。
そうしている間にも、アシュドット派の貴族とヴァリク派の貴族双方ともに武力衝突がさらにエスカレートし、対には戦いの場が王宮内から市街地まで拡大していく。
この内紛に参加した貴族や騎士、そして兵士の数は実に3万人に及んだと言われており、中にはどちらの派閥でもないにもかかわらず巻き込まれ、やむを得ず戦闘に加わった者もいる始末。
そのような大混乱がさらに1日続いたところで、戦場と化した帝都にとある衝撃的な知らせが飛び込んできた。
「た、大変だ! れ……皇太子のレオニス殿下が戦死されたそうだ! 王宮内での戦闘に巻き込まれたとのことだ!」
「それだけじゃない! 皇太子様の館にも火が放たれ、中にいた家臣や召使が大勢亡くなったらしい!」
「そんな……皇太子妃シャルロッテ様は身籠られていたはず! あぁ……なんと惨い事でしょう!」
レオニスが戦死したという知らせは、帝都全体にさらなる激震をもたらした。
次期皇帝の後継者に指名されていた皇太子の戦死と、その妃となるはずだったシャルロッテの死亡……この二つの訃報は、西帝国の貴族や騎士、兵士たちにとってあまりにも衝撃的だった。
そしてそれは、タイラスルスの市民たちにとっても同じことである。
「レオニス殿下が戦死されたなんて、ああ……おいたわしや!」
「あのお方は次期皇帝に相応しいと思っていたのに……!」
「これじゃあますます争いが激化するばかりだ! どうにかして内乱を止めてくれる人はいないのか!?」
急速に荒廃していく帝都に、この期に及んでも内乱をやめない貴族や騎士たち……人々は誰かこの状況を打破し、平穏を取り戻してくれることを強く願った。
また、貴族や将軍たちの命令で戦わされている兵士たちや、派閥争いに興味のない騎士たちも、皇太子が死亡したことで失意のどん底にあった。
このままでは偉大なる西帝国は崩壊する…………心ある者たちがそう嘆いていた時、ついにあの人物が立ち上がった。




