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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第7章 奇跡的に繋がった希望
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第147話 動き出す人々

 シャルンホルストの役割は非常に重要だが、今回の作戦でもう一つ重要な役割を担う人物がいる。


「ベルリオーズさんにもお願いがあります」

「ほう、ワシは何をすればよい?」

「帝国軍本体が来る前にシェムスタ侯爵領を攻略してください。シェムスタ侯爵は間違いなく反乱側につくはずですから、機先を制して向こうの土地を奪うのです」

「なんと! それはまた大胆な……確かに、シェムスタ侯爵は長年我らが魔族との戦いの度に物資の調達を依頼したせいで、我が家との関係は冷え切っている。我が家代々の不始末のせいとはいえ、奴らはチャンスと見ればすぐにこちらに牙をむくだろうな」


 シェムスタ侯爵家とは、コンクレイユ侯爵家と北側で領地を接する有力諸侯であり、その領土の大半が肥沃な土地に恵まれた西帝国の一大穀倉地帯の一つでもある。

 帝国内の協定があるとはいえ、彼らは魔族との戦いの度に食料や武器を供出させられるのにうんざりしており、今回の内戦では確実に敵側についてコンクレイユ家と絶縁することが目に見えている。

 もちろん、ここを確保すれば自軍はしばらく食糧供給に困らないという事情もあるが、リクレールには別の狙いがあった。


「敵勢力の撃滅ももちろん大事ですが、一番重要なのはシェムスタ侯爵領内にあるロディ渓谷の確保です。あの地は西帝国北方地方に抜ける重要な幹線道路で、大軍が進むにはどうしてもあの地を通らなければいけません。おそらくマルセラン様率いる帝国軍本体は、ブレヴァン侯爵とは別に西帝国北方を経由してコンクレイユ侯爵家を目指すでしょうから、予めロディ渓谷の要害に陣取れば相手は手も足も出ないでしょう」

「そうか、その手があったか! さすがにそこまではワシも思いつかなかった。そうと決まればワシらはすぐに動こう、ヴィクトワーレが事前に知らせてくれたおかげで、わが軍はすでに出撃の準備がある程度整っている。シェムスタ侯爵領にはロディ渓谷以外に大した要害はないゆえ、今月中には確保できるであろう」

「よろしくお願いします。ベルリオーズさんが北方を固めてくれれば、ひょっとしたら行方不明になったレオニス殿下も隙をついて挙兵してくれるかもしれませんから」

「そうなれば戦況は一気にこちらに傾くな! 殿下やビュランのためにも頑張らねばな」


 こうして、行動方針が決まったリクレールたちはそれぞれの役割に分かれて動き始めた。

 シャルンホルストはリクレールからアルトイリス家の正規兵2000人の指揮権を譲り受けると、紫鴉学級と青狼学級、橙鷹学級の生徒たちや、担任のウルスラとローレルを引き連れて北西の方角へと進軍していった。

 リクレールの留守中にサミュエルとアンナが鍛え上げたアルトイリス家の正規軍は、行軍中も一糸乱れぬ姿勢を見せ、その思いの外高い練度にウルスラとローレルも少々驚いていた。

 とはいえ、率いている士官学校の生徒たちは実際に軍を指揮する訓練を何度も積んでいるとはいえ、本格的な戦争は経験していない者も多い。

 戦場が近づいていくにつれ、若き見習い武将たちの間に重い緊張感がずっしりと漂い始めたのだった。


 その一方で、コンクレイユ侯爵ベルリオーズは、あらかじめ準備していたコンクレイユ侯爵家騎士団を全軍動員し、作戦会議3日後にはシェムスタ侯爵家宛てに一方的に宣戦布告を行い、即座に攻撃を開始したのだった。

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