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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第6章 進む東帝国、乱れる西帝国
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第120話 今はまだ夢物語

 会場に入ってからはしばらく待機時間が続き、その間リクレールは広場を行進する騎士たちや正規兵たちの様子をまじまじと眺めていた。


「姉さんがいた頃は、西帝国もこれに負けないくらい騎士や精鋭兵がいた。でも今は……」

「私たちのような騎士がきちんとした戦力になるには、それこそ数十年という時間と、膨大なお金がかかる。今の西帝国が……目の前に並んでいるのと同じだけの戦力を用意するのに、いったいどれだけかかるのかしら」

「それこそ、百年単位で必要になるかもしれないな……」


 リクレール自身は西帝国と言う国家自体にさほど思い入れはないが、姉が命を懸けて守った土地や民を失うわけにはいかないとも思っている。

 目の前でずらりと並ぶ最高の戦力があっても、魔族軍全てを滅ぼすことはできないのだとしたら、リクレールが姉の仇を討つためには、いったいどれだけの戦力を集めなければならないのか…………考えるだけでも気が遠くなりそうだった。


『ご安心ください、主様』

(エスペランサ……)

『主様の心配はごもっとも……しかし、戦いは戦力がすべてというわけではない、というのは主様自身がご存じではないでしょうか』

(それはそうなんだけど、今はまだ夢物語にしか思えなくて)

『はい、今はそれでよいのです。主様はただ、お姉様の仇を討つという一点のみ、強く望み続けてくださいませ。その願いをかなえるために、わたくしがいるのですから』

(わかった。今は君を信じるよ、エスペランサ)

『ふふっ』


 魔剣とリクレールが心の中で言葉を交わす間、その隣でヴィクトワーレが少し不安そうな表情を見せていた。


(私の方がリクと一緒にいた時間が長いのに……エスペランサみたいに気の利いた言葉もかけられないなんて。でも、マリアの代わりにこの子の姉になると誓った以上、もっと頑張らなくては……)


 ヴィクトワーレもエスペランサの言葉が聞こえるせいか、ついつい彼女の言葉を意識してしまう。

 すっかり精神的な支柱の位置にぴったりと収まった魔剣に若干嫉妬心を感じつつも、ヴィクトワーレ自身もまだまだ努力が足りないと感じているようだった。

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