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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第6章 進む東帝国、乱れる西帝国
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第118話 出征式

 慌ただしい3日間が過ぎ、いよいよ帝都アルクロニスにおいて魔族討伐軍の出征式が開催されることとなった。

 この日のために東西両帝国から有力諸侯が大要塞に集い、その熱気で冬の凍える空気すらも燃え上がるのではないかと思うほどだった。

 大要塞の中央広場に集まる騎士や正規兵たちは、誰もが堅牢な鎧と輝く武器に身を包んでおり、その姿には一部の隙も無い。

 その数は広場にいるだけでも兵の数はざっと2万人を超え、この場に入りきらずほかの広場で整列する部隊を含めれば、なんと5万以上にも及ぶ大軍であった。

 そして、彼らの最前列において、笑顔で身の丈ほどの白銀の剣――聖剣アレグリアを掲げるのが、15歳という若さで軍の総司令官を任された少女セレネ。

 この日の澄んだ青空のように爽やかな碧髪に、色白の肌にくっきりと映える薄紅色の口紅に彩られた唇、そして頭上にはミュレーズ家が特注した銀色のティアラを装着し、とても15歳とは思えないほどの美しさに、誰もが感嘆の声を上げていた。


「ミュレーズの姫様は、また一段と美しくなられましたね」

「ああ、一目見るだけで思わずため息が漏れてしまったよ。あの姿はまさに帝国の至宝と言っても過言ではない」

「それだけではない、周囲を固める将たちも帝国の力を結集した綺羅星のごとき才能たちばかりだ。これで期待するなと言う方が無理というものだ」

「あの聖剣は本当に美しい……! 見ているだけで、こちらも勇気をもらえる気がする!」

「セレネ様が聖剣アレグリアを受け継いでくださって本当によかった。それに、マリア様の元で活躍した騎士たちもいるというのだから、これほど心強いことはない」


 今日に至るまで、魔族軍があちらこちらで侵攻を繰り返してきた結果、人類の領域はかつてないほどまで縮小し、人々はいつこの都まで魔族軍が攻め入ってくるか戦々恐々とするばかりだった。


 だが、今は違う。

 西帝国の多大な犠牲はあったものの、魔族軍の主力は数か月前の戦いで大被害を被り、その数を大幅に減らしていた。

 西の同胞たちの犠牲を無駄にしないためにも、そして人類の安寧のためにも、東帝国の精鋭たちが一世一代の反撃に赴くのである。

 そして、今回の最終的な目標は、東帝国の領土からはるか南方……魔族軍の勢力圏に取り残されている『正統教義』の聖地エウリュディケーへの陸路を確保すること。

 包囲された聖地を開放することで、人類全体の士気が大きく向上するだろう。

 討伐軍の出征を祝う人々の期待もまた非常に大きく、誰もがこの遠征の成功を心から願っていたのだった。


 しかし…………彼らが喝采を上げる裏で、ひっそりと「とある噂」が広まっていた。

 それはまるで、降り積もった鬱屈とした雪を熱狂と言う業火で燃やしたその下で、融けた水で地面が泥濘むかのように……

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