第11話 少女は一人想う
その後3日間、葬儀は滞りなく執り行われた。
家臣たちは改めて伯爵家の大黒柱が失われたことに涙し、領民たちも次々に城を訪ね、圧倒的カリスマを持っていた指導者の死に慟哭していた。
そして、その間にもリクレールはヴィクトワーレやシャルンホルストの力を借りながら、家臣たちに矢継ぎ早に指示を出していく。
セレネとも何度か顔を合わせたのだが、やることがあまりにも多いので残念ながら短い挨拶だけ済ませるにとどまった。
「リク君……なんだか別人みたいだった。サミュエルさんたちから何か言われたのかな、それともヴィクトワーレさんが? いずれにしても、次期当主になるってあんな風なんだ……」
葬儀が一通り終わった後、セレネはこの城に来た時にいつも使っている部屋でお茶を飲みながら、一人物思いに耽っていた。
ついこの前までは「仲のいい内気な男の子」だと思っていたリクレールが、まるで中身をすり替えられたのではないかと思うほど活発に動いていたのだから、セレネも困惑しっぱなしだった。
「それに、あの剣…………」
それ以上に彼女が気にしていたのが、城のどこからか探し当てたという謎の「魔剣」についてだ。
マリアからもそのような剣があるということは聞いたことがなかったし、何よりリクレールと会うたびに何やら物騒な気配を感じる上、聖剣アレグリアからどこか緊張感のようなものが発せられているように感じた気がする。
「嫌な予感がする。でも、私はもう明日には出発しなきゃいけない。今は、リク君を信じるしかないか。ううん、大丈夫、私がこの剣で早く戦いを終わらせれば、リク君が無理をすることはなくなるんだから」
魔族の侵攻におびえる人々のためにも、幼いころからの親友のためにも、彼女は改めて自らの手で世界に平穏を取り戻すことを聖剣アレグリアに誓った。




