第108話 遥か遠方の味方
ともあれ、ブレヴァン家側につくことが明白となった白竜学級の生徒たちに対抗すべく、紫鴉学級はアルトイリス家とユルトラガルド家側につくことをこの場で決定するとともに、数日以内に遠征の準備を整えて西帝国へ戻ることになったのだった。
するとそこに、ヴィクトワーレを呼びにコンクレイユ家のタウンハウスに向っていたレイが、ヴィクトワーレを連れて戻ってきた。
「ご主人様、ただいま戻りました」
「リク! 一体何があったの、士官学校の生徒たちまでこんなに集まるなんて!」
「あ、おかえりレイ。トワ姉も来てくれてありがとう。実はね――――」
リクレールはヴィクトワーレにも先ほどの話を要約して聞かせると、みるみるヴィクトワーレの表情が険しくなる。
「いつ起こってもおかしくないと思っていたけど……もう後戻りできないところまで来たのね。一応、ビュラン兄上には何かあったらすぐに連絡をよこすようには伝えてあるから、何かあればすぐに父上が知るはずだわ」
「ビュランという方は、兄上と言うからにはヴィクトワーレさんのお兄さんで?」
「ええ、コンクレイユ家を代表して、西帝国の帝都タイラスルスで帝国軍を率いているわ」
「だから、ビュランさんは真っ先に危険が及ぶ可能性が高いんだ。無事だといいんだけど……」
ゼークトをはじめとする東帝国出身の生徒たちは知らなかったので確認したが、ヴィクトワーレが口にしたビュランという人物はコンクレイユ侯爵ベルリオーズの長男であり、ヴィクトワーレの3つ年上に当たる。
彼女は領地を出発する前に、リクレールから西帝国内で内乱の気配があることを聞き、予め西帝国首都で活動する兄にそのこと手紙で知らせ、もし何かあったら連絡が欲しいということを伝えてあるのだが…………なにしろ、西帝国のアルトイリス領から東帝国のアルクロニスまで早馬を走らせても10日以上かかる上に、そこからさらにアルトイリス領から北西に遠く離れた西帝国首都タイラスルスからの知らせとなると、リクレールたちのところに届くまで非常に時間がかかる。
(くっ……やっぱり、すぐに連絡する手段がないのがもどかしい。なんとかして、もっと伝達手段を早められないだろうか)
『そうですわね……現在では風の精霊による伝書が最も早いですが、やや確実性に欠け、機密の通信に向きませんわ。将来的に改良の余地は大いにありそうですが、今はそれどころではありませんわね』
魔法による伝達手段すら限界がある以上、今は早めの行動を心掛けるほかない。
(あ、伝達手段と言えば)
ここでリクレールは大事なことを思い出した。
「そうだトワ姉、今すぐ西帝国に戻りたいのは山々だけど、ガムランやマティルダ、ベルサたちがまだ……」
「それなら心配いらないわ、多分もうすぐ戻ってくるはずよ」
「え?」
ヴィクトワーレの言葉にリクレールがきょとんとしていると、居間の扉が威勢よくノックされ、レイが扉を開けるとまさにそのガムラン本人が堂々たる足取りで入室してきた。
見慣れた大きな腹と二重顎を揺らしながら。




