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手の平のうえ

作者: 小雨川蛙

 

 その人はいつも言っていた。

「価値のない人間は死ぬべきだ」

 過激な発言だ。

 そして、質の悪い事にその人には地位があった。

 故に、その人の考えを聞いた者達の何人かがその考えを実行し始めた。

「あなたの発言により人が死んでいっているんです。あなたはそれをどう考えているのですか?」

 憤りのままに問う相手にその人は答えた。

「価値のない人間が死んで嬉しいよ」


 ある日。

 その人は囲まれた。

「価値のない人間は死ぬべきだってお前は言ったよな」

 囲んだ人々は武器を出してその人を睨みつける。

「お前みたいな人間が一番価値がないんだ」

「そうだ。だからとっとと死ぬべきなんだ」

 叫び声と共に彼らはその人を襲い、その人はあっさりと死んだ。

「ざまあみろ」

 罵り言葉を手向けの花代わりに浴びるその人の顔は満足気だった。


 その笑顔に誰も気づかなかったのは幸運だったかもしれない。

 その笑顔の意味に誰も気づかなかったのはもっと幸運だったかもしれない。

 その人が自分自身に価値を見出せていなかった不幸を誰も知らないのはきっと幸運だっただろう。


 何せ、全てがその人の手の平の上だったのだから。

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