サーバックのミイラ
砂漠の国、サーバック。
地上で暮らしているのははジンとミイラとラクダ。
ここは 1滴も雨が降らない。
だから ミイラも生きられる。
だって 雨が降ったら乾燥しきった体が水を含んで崩れてしまうではないか!
ちなみに、ミイラの体に巻きついている包帯は、砂嵐の時に飛び交う砂粒で、体が削られるのを防ぐためにある。
ミイラ曰く、
「包帯だと、隙間から砂粒が入り込んでくるから不便なんだ。
だから 新しい服が欲しくて 旅に出た。」
「でもね、僕たちの体って、パサパサで曲がらないんだよねぇ。
なぜか 手足だけはちゃんと曲がるので、歩いたり、ものをつかんだりすることはできるんだけど、なぜだろうねぇ・・
もしかしたら 生まれた時から体に巻き付いている包帯のおかげかなぁ・・」
「とにかく、体が曲がりにくいせいで、服を脱いだり着たりすることが、かなりむつかしいことがわかった。
それで、体に合わせて服を縫ってもらうことにした。
最初はさ、半分縫いあがった服を選んではおり、
きちんと体にそわせて お店人の人に縫い上げてもらったんだ。
鏡に映ったわが身に 我ながらほれぼれしたねぇ・・。
ところが・・
あわせて、夜着をあつらえてもらおうとしてわかったんだ。
うまく 服を着れない僕は、身にまとった服を脱ぐこともできないって><
思わず泣きたくなったけど・・干からびた体からは 涙も出やしない!!」
「仕方がないから 一張羅をまとって 昼も夜も過ごすことにしたんだけど・・
さすがに 1週間、十日、二十日とたつと、服の汚れがめだってきてさぁ・・」
「泣く泣く 店に行って せっかくあつらえた服をほどいてもらった。」
「ン、ミイラ男は 泣けないんじゃないかって?
バカ野郎、 心で泣いたんだよ! ヽ(`Д´)ノプンプン」
というわけで、ミイラのコスチュームは、包帯の上から、色取りどりの貫頭衣をまとい、頭にかぶせた布を頭にのっけた輪っかで留めるスタイルとなったそうな。
ちなみに、ミイラが着用する貫頭衣というのは、身幅の布の真ん中に穴をあけて 頭を通す単純なもの。
丈は腰まで・股まで・ひざ丈・足首までといろいろ。
さらに、前側は足の付け根程度の長さ(つまり 股丈)に、後ろ側は膝丈に、なんて変化をつけて着こなしたり、
前後、左右にと垂れる向きを変えて2枚重ね、あるいは八方に垂らす4枚重ねの着用法もあった。
ようは、ミイラだって おしゃれをしたいのだ。
だから パーティの時には、貫頭衣にスリットを入れたり、裾にフリルをつけたり、何枚も重ねたり、金属ホック式のバンドを使って、タックをとったり、上部に膨らみを作ったりと、いろいろなバリエーションを工夫して
個性を競いあう。
最新モードは、色とりどりの細い布を紐に通して、首の周りや腰の周りにぶら下げるというもの。
カラフル腰みの? 吹き流しに首を突っ込んだ? すだれやのれんを首の周りに巻いている?
あまりに斬新すぎて、このデザインに関しては、目下のところ賛否両論である。
中には、奇をてらって、ひもに通したビーズをすだれ状に首回りにぶら下げて・・
案の定 体の周りに硬いものをまとうから、揺れたはずみにぶつかったそれで、体が壊れたやつもいた。
ミイラの体は脆いのだ。衝撃に弱いということを忘れてはいかん!!
このように、パーティファッションには いろいろなバリエーションがあり、流行もあるが、
砂漠を旅するときは、あくまでも実用重視で工夫を重ねた。
最近では、幅の広い布を前後に垂らして、
脇を、布に縫い付けた紐で留めて、ゆったりとした袋状の服のようにする着こなしも出てきた。
ラクダにまたがるときは、上着丈の貫頭衣を前後に垂らすだけにしたり、
砂漠を歩くときは、幅が広めの足首丈の布を前後に垂らして、脇をくくり留める。
脇を紐で留めるときには、仲間同士で、お互いに くくりっこするのである。
ミイラたちの仕事は、隊商。
オアシスからオアシスへと、砂漠を横切って旅をして 商いをしている。
一人で旅をすれば行商人、チームで移動すればキャラバン
とまあ 呼び名は変わるのだけど、
一般的には、ミイラの職業といえばキャラバン、といったイメージだ。




