2話 憂鬱と三毛猫
校舎を出て私と純恋は田舎の田んぼ道を歩いた。そうだ、純恋にあの人のことについて聞いてみよう。確かあの教室は純恋のクラスの2年4組の隣の5組だし何か知っているかも。
「ねぇ、さっき教室で寝てる男の子がいたんだけどさ、あの子いつもあそこで寝てるの?」
私は教室としか言わなかったのに即答で応えてきた。
「あー、あの子ね。この前3日間くらい教室に居残りしてた時、毎日突っ伏して寝てたよ。」
「そうなんだ。なんでわざわざあそこで寝るのかな」
「さあ。あ、あの子になんか言われた?あの子ちょっと素っ気ないから。」
「うん。でも、別に特に気にしてないし大丈夫!あ、家こっちだからバイバイ!」
彼女は手が紅色やおれんじ色の混ざった空に浮かぶ雲に届くのではと思うくらい思いっきり手を振った。それに対して私は顔の横で死んだような手を振った。
彼女が帰る方向に顔を向けながらポニーテールを左右に揺らしたら私はゆっくり手を下ろした。
家に帰ったあとのことを考えたくなかった。今日は病院で検査をする日。明日は病院の検査がないから明日にタイムスリップしたいなとか馬鹿なことを考えながらふと、横の広い草むら見た。すると、怪我をした尻尾の短い三毛猫が倒れていた。
私はその子を抱きかかえた。腕の中で丸まっている三毛猫は震えているのが分かった。私は片っ端に近くの家に助けを求めた。だけど大半の家がそれを拒否した。次、断られたら遠いけど自分の家で治療しようと思った。願って最後のインターホンを押した。すると白いドアがゆっくり開いた。開いた瞬間、甘いクッキーが焼きあがった匂いがした。出てきた人は黒髪ロングで外の風で髪が綺麗になびいていた。でも今はそんなことどうでもよかった。三毛猫が最優先だった。
「猫を助けてください!」
綺麗な女の人はキョトンとしていた。でも腕の中の猫を見て透明感のある大きな目を見開いた。
「とりあえず上がって」
綺麗な女の人は奥から包帯を取りだして猫の出血していた腕に優しく丁寧に巻き付けた。三毛猫派その間ぐったりしていたが近くにミルクの入った白いお皿を置いたらすぐに体を起こして顔をくしゃっとして勢いよく飲んでいた。
私は焦って言えていなかったありがとうを言った。お姉さんは構いませんよと言った。
「お、お姉さん、ありがとうございました。私この子連れて帰ります。」
「いいですよ。心配なら動物病院に連れてくといいわ。でもこの辺、田舎だから滅多にないけど。」
「ご、ご心配ありがとうございます。それじゃあ、さようなら。」
お姉さんは猫を抱えている私に気を使って重そうな白いドアを開けてくれようとしてくれた。しかし誰もドアに触れていないのに勝手にドアが開いたのだ。
開いたドアの向こうにはさっき、目の前で泣いてしまった男子がいた。私と彼は目が合った。ふつふつと湧き上がる気まずさで互いに早歩きで家に入ったり、出ようとしたからぶつかってしまった。私は焦って持ち前の吃音症をめちゃくちゃ発揮してしまったのだ。彼は何も言わず頭を下げただけだったと思う。私は吃音症がめちゃくちゃ出てしまってとても恥ずかしくて自分のことしか考えれなかった。
私はこのことはもう忘れようとしたけど、どう思われたかな、きもいと思われたかな、なんて考えていた。私は目から水が零れ落ちそうだったから目を閉じて走ろうかと思ったけど、三毛猫が腕の中にいるから目を閉じるのは危険だと思ってただ、がむしゃらに走った。
家にいたお母さんは遅かったねと言ったすぐに目線を私の腕の中にいる三毛猫に向けた。お母さんは驚いた顔をした。目を2回ほどぱちくりさせた後、申し訳なさそうに、
「ごめんね。うちでは飼えないや。外に放してきて。ごめんね。」
もともと飼えないとは分かっていたけどやっぱりかなしかった。猫は好きだし、まだ怪我も治ったわけじゃないから心配だし。
「あ、あと10分後には家出るよ。検査頑張ろうね。」
すっかり忘れていた病院のこと。このまま忘れていたかった。
私はラフな私服に憂鬱な気持ちで着替えた。
お母さんの車に乗り込む。やっぱりここは田舎だから病院も遠い。その間、病院のことを考えていたら本当に憂鬱だから過去や今、未来のことなんて忘れて、車に揺られながら寝るのが病院に行く時のルーティンだ。