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変身ヒーローだった俺は転生してオムツをつけた1歳児になっていた

『待て!ジャッカー!!』


『来たなライダーマスク!今日こそお前の命日だ!!』


そんな場面を見ていた時である。

雷のように『俺』は思い出した。

『俺』は世界平和を守る変身する戦士(変身ヒーロー)であったことを。

今生で齢1歳半のことであった。


前世の俺は、世界を牛耳ろうとする悪の組織『暗黒結社ゴルゴン』と戦う戦士であった。

元は、民間の世界を股に掛ける医師だったが、街中で暴れるゴルゴンの攻撃から、見知らぬ親子を助けた際に捕まり、彼奴等に改造手術を施された…!

自力で組織を脱出した俺は、知り合いの科学者の協力を得、敵組織と戦う日々に明け暮れた…

今もその戦いは胸に熱く、苦く刻まれている。


最初番組を見た時は、それが現実のもの(ニュース)か作り物か分からなかった…

だから俺は興奮して吠えた。

「だっこえ!だっ!(何だこれは!何なのだ!)」

「わぁ~見て見て!りっくん大興奮してる~!」

「おお~!本当だ!りっちゃんもこれしゅきなんでしゅか~!う~♡パパといっちょでちゅね~♡」

「ぱぁぱ、こえだー!(父よ!これは何なのだ!)」

「ううーんそうでしゅねー!だーでしゅねー!」

通じない。

くそう!口は動かしづらいし頭は重い!ぐらんぐらんするし体は言う事を聞かん!

無理やり何とか動かそうとしたところ。


どてっごち!


「「あっ!」」


「ふっ…ふええあああああああ!!!!!」

(な、何なんだこれは!俺の意思とは関係なく涙がーーー!!うおおおおとまらーーーーん!!!)


俺は泣いた。男泣きした。

「ふぎゃあああああああああああ!!!!」

「「りっりっく~ん!よちよちよちよち~!!」」

例えそれが男泣きと伝わらなかったとしても。

うっ!

「あ、泣き止んだ…今おしっこ出たね!腕があったかくなったよ~!」

う、うおーーーー!!!情けない!!!

この俺が…この俺が…抱っこされながら小用をオムツにするとは…!!なんたる恥辱…!!

その後俺はオムツ替えという更なる屈辱を味わうことになり、泣く。





俺は3歳になった。

その間に分かったことがある。

ここは俺の生きていた世界ではない、らしい。

というのも科学技術はそっくりだが、固有名詞が所々違うことや、何より『暗黒結社ゴルゴン』や俺の仲間達の記録が一切流れない為だ。

過去の世界では『暗黒結社ゴルゴン』や他の悪の組織の行状はニュースになっていた。

『あれから〇年…』といった話題も出ない以上別の世界なのかもしれない。

そして今の俺はとにかく心がけていることがある。

それはトレーニングだ!!!

何時いかなる時、敵の襲撃があるとも限らない。

前世でも敵は平和な時代に突如として現れた。

気を抜くことは出来ない。


「こら!りく!」


びくぅ!!!


か、体が反射で固まるのは仕方ないのだ。

母の声というのは、何度生まれても逆らえないものなのだ。


「ベッドで飛ばないの!この間もソファでジャンプして怒ったでしょ!」


ち、違うのだ母よ!これはトレーニングなのだ。

こういった反発のある場所で飛び跳ねることは大きな下半身強化に繋がり…


「壊れたらベッドさんもソファさんもバイバイよ!」


それは困る!!

「ご、ごめんなさい~!!」

じょっ。


あ…!





4歳、俺は考えた。

まずは両親…特に母に俺の事を打ち明けよう。

そして理解してもらわねばなるまい。

その上でトレーニングをさせてもらうのだ。


「あのねぇオレね!むかし、へんしんヒーローでおいしゃさんでかがくしゃで、せかいじゅうたびしてたんだよ!」


「あらぁ~そうなの~」


「あんこくけっしゃゴルゴン!てやつにね、かいぞうされてねー」


「あらたいへん!」


「とう!たぁ!てたたかってね!」


「仲間はいたの~?」


「なかまはねぇ~…いたんだけど、しんじゃった!てかんじ…」


「あら~悲しかったねぇ~」


「でもそのあとでね、いきかえったの!」


「わぁ!よかったね!」


何だろうかこの聞いては貰えてるが、信じてもらえない感。

俺が医者で科学者で戦士(ヒーロー)だったことは間違いがなかったはずなのに。

この世界では戦士をヒーローと呼ぶのだろう?


「りっくんの中にはお話がいっぱいね~」


くそう!諦めるか!

何度でも話してやる!


その夜俺は夢を見た。

前世の夢だ。

前世の昔…子どもの頃、俺は母に捨てられた。

忘れていて…もう乗り越えたと思ったのに…


「ひくっひくっままぁ…」

「…りっくん?どうしたの~?」

眠たげな今生の母の声。さらに涙が溢れる。

「りっくんね、まえのときね、まえのママにすてられちゃったの…いまそのゆめみたの…」

「…そうなのぉ…おいでママのお布団で一緒に寝よう。大丈夫だよーりっくんのママはここにいるよ~」

「まま…!」


ぎゅうっと抱きしめてくれる母はとても温かくて…

別の涙がまた…溢れて止まらなくなった。


しゃわわわ…


……他のものも溢れてしまったようである。




俺は気がつくと12歳になっていた。

幼少期はひたすら研究資料としていわゆる特撮物(ヒーロー物)を見た。見まくった。

父が元々好きだったらしく、山のように解説付きで見ることが出来た。

5際になると習い事をさせて貰えた。

空手、水泳、体操(ボルダリングやパルクールも小学校からはやらせてもらえた)を習い事もも希望して塾もさせて貰えた。

その結果学校ではどの教科も優秀だと言われるようになった。ただ…


「陸くんは、本当に勉強も運動も優秀で!ただ…」


「は、はい!…ただ?」


「その、少し、趣味と現実がですね…」


ああ、またこれだ。

三者面談、言葉を濁すように教師が言う。

俺は弱い者をいたぶる様な真似が大嫌いだ。

だからこそ目につく範囲では注意する。

そして心を開いた人間には何度か昔の話をした事がある。

すると


『え?もう厨二病?(笑)』

『やばいっしょー!オレらの歳でヒーロー好きとか(笑)』


『現実見ろよもったいねー(笑)』


返される掌。

そして始まる陰口。

悲しかった。

だが何てことはなかった。

俺は知っているだけだ。

前世を。平和じゃない世の中を。突如として失われるものがあること。

だからなんてことはない。


「いけない、ことでしょうか?」


「え?」


「この子は誰かを悪者呼ばわりして…それで誰かを傷つけたりしてるんでしょうか?」


「い、いえ…それは…」


「…では、見守っていただけないでしょうか?悪いことをしてるわけでもないのなら。好きなものを好き、といえることは大事にしてあげたくて…」


よろしくお願いします、と頭を下げる母。

気になんてなってなかったのに。

俺は男泣きを止められなかった。

ちなみにその夜父は荒れ狂った。


「学校に抗議する!!」


「落ち着いて!」


そして落ち着いたあと父はいった。


「陸、お前は優しい。それに強い。知らない人にも優しくできるな。誰かに嫌な目に合わせられても、同じ目にあわせてやろうなんて考えないな。辛かった分、お前は周りを大事にしてる。凄いぞ!お前は本物のヒーローだ!お前が辛い時は父さんと母さんがいるからな。くじけて立てなくなりそうな時は父さん達が助けてやる!ヒーローには仲間がいるんだからな!!」


そういって泣いた。

俺が泣く暇もなかった。嘘だ、二人で一緒に男泣きして、母さんが呆れていた。





16歳、俺は単身アメリカに渡った。

中学在学中に製作したアプリがあたり、自分の留学費用をまかなえるようになったからだ。

体の鍛錬は欠かさなかったが、知識は求めれば求めるほど、別環境が必要になる。

悩んだが、両親に相談し、海外留学することにした。

両親は大層心配したが、最終的には背中を押してくれた。

生活のことの細々した注意、治安上の注意など…

『あちらは日本で暮らすより、人種差別は露骨だ。だが、主義主張をすることに対しては寛容だ。体に気をつけて、行ってきなさい。』

父はそう言ってくれた。

母は本音では反対したかったかもしれない。

心配そうな顔をして、いくつもいくつも生活指導や注意をしながら、送り出してくれた。

…本当にふたりには感謝してもしきれない。

結果、アメリカ滞在は非常に有意義だった。

飛び級制度も利用し、元々前世で研究していた生物学のほか、物理学、宇宙工学も博士号をとることが出来た。

また空手、柔道、パルクールの他、銃の扱いについても学ぶことが出来た。

他は兎も角、銃は今生では扱えてなかったからな。

しっかり鍛錬出来て良かった。

ちなみに空手は21歳で世界王者になれた。


だが何より。


この国に来て、ようやく友人と、親友と呼べる人間が出来た。

確かにこの国で人種差別にあうことは少なくなかった。

だがそれ以上に、『主義の違う人間』を受け入れる土壌もあった。

というか『自分の主張』が出来ることが当たり前だったのだ。

そんな中で、ようやく同調圧力のない、対等な友人を何人か得ることが出来た。

彼らに会えたことは僥倖だ。





そして27歳。

俺は日本に帰ってきた。

そしてコネクションと資金を使い、自身が脚本・主演となる作品を作り上げた。

俺はまだこの世界にいつ悪の組織が現れるかわからないと思っている。

俺がこの世界に生まれた以上、同じ世界からの転生者がいないとも…それか『暗黒結社ゴルゴン』の人間とも限らないのだから。

だからこそ、俺は俺の物語をつくった。


もしかつての仲間がいたのなら『俺もここにいるぞ』と言うために。


もしかつての敵がいたのなら『俺もここにいるぞ』と警告のために。


そして俺は今、制作発表の場でインタビューに答えている。


「この映画をだれに届けたいですか?」


「この映画は…まずはずっと俺を育んでくれた両親に。そして『共に生きた』すべての人にです」


「ありがとうございます!では最後に変身シーンをお願いします!」




すっと席を立ち、深呼吸する。

脳裏を駆け巡るのは、前世のと今生と。

全ての思い出たち。

オムツ替えは恥辱に耐えかねた。

今生で初めて母の愛と厳しさを知った。

今生で初めて父の愛と背中を見た。

かつての友人は今はなくとも、過ごした思い出があればこそ今生を生きられた。

そして今生の友人が出来たからこそ今の俺がある。

そして我が敵よ。

お前達もまた俺をつくったものなのだろう。

だがこの世界に現れることを許しはしまい。


俺はここにいるぞ。


かつての仲間たちよ。


俺はここにいるぞ。


かつての敵たちよ。


俺はここにいるぞ。


お前達との戦いを覚えているぞ。


苦しみを。


悲しみを。


絶望を。


あの時の全てを抱えて俺はいるぞ!!








「俺の名前はゴーストバリア…ライダーマスク ゴーストバリアだ!!!」





ちなみに、映画封切り後、『ゴーストバリア2号だった』『俺3号』…『俺は50号でした!』と名乗る男達に出会う事になるとは…この時の俺は全く予想もしていなかったのだ。

子どもの話って面白すぎますね。

5歳まではまんま息子の話してるネタです。

記録替わりに投稿してやんぜ!

最近は「あと小説家だった!」といいはじめました。設定盛りすぎィ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 改造人間を作る悪役がまったくいない世界とも考えられますが、転生者が多数いるなら誰かが食い止めていた可能性もありますね。早々と大首領を無力化してたとか。
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