29.白色の髭はふわふわしていた
白色の髭が生えている。
ずっと手入れをしていないのか、3~4㎝くらいの不揃いの髭だった。
髭を触ると、ふさふさしていた。
優しい触り心地だった。
彼は生前優しい心の持ち主だったのだろう。
髭を触った後、頬を触った。
指先で頬を撫でる。
少し乾燥していた。
僕は目を少し瞑り、そして、勇気を出して、手を握った。
握った手は冷たかった。
じーちゃんは死んだ。
もう、優しい笑顔を見ることはできない。
僕たちを守ってくれる人はいなくなった。
僕の頬に水滴が流れた。
今日は晴れていたのに、雨が降っていた。
その夜、雨が降った。
僕たちは、何をしたらいいかわからなかった。
ただただ、悲しかった。
遺体を埋葬すべきなのだろうと思っていたけど、動く気力がなかった。
少しでも一緒にいたかった。
何もしなければ、いつものように優しい時間が訪れる、そうであればよかったのに。
僕たちはずっと悩んでいた。
すると、じーちゃんの家のドアが開いた。
知らない男が入って来た。
「なんだ、先客がいるのか」
男はそういった。
そして、次々と男たちがじーちゃんの家に入って来た。
格好からして冒険者のようだった。
「お前らなんなんだよ!?」
男たちは無機質な目で僕たちを見た。
気がつくと、仰向けになった身体は動かなかった。
雨が僕の顔にぽつぽつと落ちた。
とても冷たかった。
何とか起き上がり、じーちゃんの家の中に入った。
そして、じーちゃんの傍に行った。
髭を触るとふわふわしていた。
ずっと触っていたいくらい、絹のような優しい触り心地だった。
じーちゃんの笑顔を思い出した。
そして、手を握ると、冷たかった。
窓の外を見ると雨が降っていた。
僕の頬に水滴が流れた。
その水滴は冷たいのにとても暖かく感じた。




