27/29
27.雨は冷たかった。暖かった。
仰向けになった身体は動かなかった。
雨が僕の顔にぽつぽつと落ちた。
とても冷たかった。
とてもアツカッタ。
「じーちゃん、もういいよ」
「若いもんはしっかり食べないといけない」
そういって、じーちゃんは僕たちにあつあつのパンを皿の上に置いた。
初めて。
初めて、殺意を持って人を殺した日。
僕は、僕達は疲れ果てた。
「おい、これでも食え」
そういって、僕達の前にパンが差し出された。
年は60を過ぎてるのだろうか。
「なんで…」
僕は上手く言えなかった。
「なんで、優しくしてくれるんだよ」
時間はかかったが、やっと言えた。
老人は困った顔をした。
「人はお腹が空くものだ」
僕たちはじ~っと老人の目を見た。
老人は苦笑いをした。
「腹が減ってるだろう?」
老人は優しい声で言った。
そう、この日は雨が降っていなかった。




