17.ゴブリン「生きたい!」
レイさんのところで、冒険者の手続きを終えると、丁度、アリスとハルがやってきた。
「終わったのですの?」
「終わったよ。 Fランクからになった」
「Fランク…すごい…」
ハルは少し残念そうに言った。
「それじゃあ、討伐クエストと採取クエスト受けよう!」
何となく嫌な空気があったので、場を変えようと俺は思った。
「行こ!行こ!」
ハルは笑顔で言った。
クエストを受注した後、町を出て、1時間程歩いただろうか。
ハルやアリスがいつも行く、薬草採取の場所へ向かっていた。
この世界は四季があるかわからないが、森の中を歩いていると、春のような優しい空気を感じた。
そういえば、夜寝る時は暑すぎず、寒すぎない、丁度いい気温だなと思い出した。
そんなことを思いながらも、町を出た辺りから、ずっとこちらを見ている視線に意識を割いていた。
かなり遠くから見ているようで、相当な腕だと思った。
町の方からではないな。
視線の角度から俺を見てるというよりは、アリスとハルを見ているのかなと思った。
理由はよくわからないが、俺に分かるようにみているようだ。
遠くの視線に気を取られていたため、気づくのに遅れたが、4人?4匹?が少し離れたところで隠れており、こちらを見ている。
木の上に2匹、他2匹は草むらに潜んでいる。
「ゴブリンかわからないけど、4匹?がこちらを見てる」
「「え!?」」
「全くわからないですわ」
アリスが不安気に言った。
ハルの方を見ると、どうやら恐怖で言葉が出ないようだ。
「ゴブリンならクエ対象だ。行こう」
そうして、潜んでいる場所に近づいた。
すると、木の上から矢が数本飛んできた。
避けると、アリスとハルに当りそうなので、切り落とした。
「ありがとうですの」
「ひぃっ」
アリスはともかく、ハルは完全に怯え切ってるなと俺は思った。
「ぶしゅっ」
「もう倒したよ」
色々と観察したかったが、ハルの精神状態が危なそうなので、彼女らが認識する前に倒すことにした。
「「えっ?」」
木の上からゴブリンの頭がない死体が落ちてきて、草むらからも2匹の頭がない死体が倒れ込んできた。
「いきなり4匹だ!」
「あの…ゴブリンの討伐証明に必要な部位は耳なので、頭を残さないといけないですわ…」
「ということは、未だ0か…」
「ですの」
「すごい!すごい!」
ハルは笑顔で言った。
どうやら、恐怖は消えたようだ。
一先ず、彼女らが普段行っている採取場所に改めて向かうことになった。
着くと、二人は一斉に走り出し、採取を始めた。
見通しが悪いし、一人は周辺を警戒した方が良いんじゃないのかと俺は思った。
危ないなと思っていると、10匹が近づいてきているのを感じた。
1匹はずいぶんでかいが、他9匹よりかなり距離を取って近づいている。
「アリス、ハル!10匹が近づいてきてる。一旦見通しの良い場所まで移動しよう」
「はい!」
ハルは笑顔で言った。
どうやら、俺がいれば安全だという信頼を得られたようだ。
少し走り、比較的見通しの良い原っぱの中央で敵が来るのを待っていた。
流石に広いのか、一旦広がったが、囲むことができず、少しばらけて、草むらに隠れたままこちらの様子を見ているようだった。
敵が彼女たちに視認できない内に倒すのも良いが、もう少し彼女らに実践に慣れて欲しいと思った。
可能なら、1匹は彼女たちで倒してほしかった。
5分ほどだろうか、敵は様子を見ていたが、完全に気づかれていると思って、6匹のゴブリンが姿を現してきた。
3匹は隠密し、もう1匹のでかいやつは後ろで待機しているようだ。
ゴブリンってもっと頭が悪いかと思ったけど、どうやらかなり狡猾らしい。
2匹のゴブリンが互いに頷くと、俺に向かって走り出した。
2匹の間合いに入る瞬間に後方から矢が飛んできた。
俺は良い連携だと思った。
正面からは矢、左右からゴブリンが同時に襲い掛かって来た。
すると、時間差で他2匹も俺に向かって走り出し、2匹は後方から矢を撃ってきている。
前衛4匹、後衛2匹が矢を放ち、もう3匹は見えないところから矢を放っている。
本当にゴブリンって異世界で弱いモンスターなのか??
見事な連携に俺はそう思った。
もっと連携を見たい!そう思ったが、アリスたちの方を見ると、ハルは腰を抜かしていた。
仕方がないと思い、矢を全て撃ち落とし、4匹の首を斬り落とした。
後衛のゴブリン達は互いに顔を見合わせ、一目散に逃げだした。
「こっちも生活が懸かっているんだ」
俺はそう言って、後衛の2匹の首も斬り落とした。
隠密している3匹と少し距離を取っていたでかい1匹は離れていくようだ。
「すごいですの…」
「すごい…」
アリスとハルは言った。
「なんでこのレベルがFですの…」
「今度は頭を飛ばさないようにしたけど、大丈夫?」
「問題ないですの」
「これで6匹だね!」
「6匹なら3人分の宿2泊と2日分の食費よ」
「やっと、ギルド運営の宿から解放される…まともなものが食べれる…」
ハルは涙を流しながら言った。
今までの生活がよほど辛かったのだろう…
「ゴブリンって高いんだな」
「PTメンバーが全員Fランク以下の場合、ギルド側が生活のために色を付けてくれるのですわ」
「あ、色を付けてくれないかも」
「どうしてですの?」
「実は研修終わった後、Dランクからで始めれるって言われたけど、断っちゃったから…」
「「D!!?」」
「ごめん」
「Dランクスタートって講習担当者が与えれる上限ですわ!」
「すごい…やっぱり、私なんかじゃ…」
ハルは愕然としていた。
「そうなると、報酬は少し下がる可能性が高いですの。 でも、今日の宿代と食事代は問題ないですの」
「そうか!」
「薬草採取もあるわ」
「そうか…」
俺はもっと戦いたかった。
薬草採取を再開した。
ただ、またゴブリン達が襲撃してきた。
今度は4匹ほどだったが、流石に逃がさずに、全て狩った。
今回は大した連携ではなかった。
あの10匹が特殊だったのだろうか。
このとき、アリスが魔法を初めて使おうとしたが、プレッシャーで不発だった。
ハルは相変わらず腰を抜かしていた。
何はともあれ、ゴブリン10匹分、恐らく3人の2日分の宿代と食事代を稼ぐことができたと思う。
夕方には冒険者ギルドに戻り、3人なら大体3日分の宿代と食事代の報酬だった。
少し色を付けてもらったようだ。
その後、個室だけしかない宿を取り、夕食に向かった。
流石にステーキとはいかないが、野菜と肉が入ったポトフ?のようなものと柔らかいパンを食べれて、満足だった。
「美味しいですわ…美味しいですわ…」
「今まで食べたものの中で一番美味しい…生きててよかったよ…」
アリスとハルは泣きながら食べていた。
そんなアリスたちをみて哀れに思ったのか、店主はサービスでウィンナーを1本ずつくれた。
二人はさらに号泣した。
ちなみに、俺にはサービスしてくれなかった…
宿の個室は、ギルド運営の宿よりはちょっと広い程度だが、何より簡易ベッドがあった。
これには、俺も彼女たちも涙を流して感動した。
互いに、部屋を少し見て、解散となった。
明日は朝からクエストを受けようという話だった。
「私、今日なんにもしてないな…」
ハルはため息をついた。
久しぶりのベッドとまともな食事で高ぶった気持ちも、少し時間が経ち、落ち着いてきた。
気持ちが落ち着くと、今日、何も役に立てれてないことを思い出した。
特に、ゴブリンとの戦闘は腰を抜かしていただけだった…
このままでは寝れないと思い、少し散歩をすることにした。
「冒険者に向いてないのかなぁ… アリスとあれだけ頑張った日々を1日であっという間に追い越されちゃった」
「はぁ…」
目の前に白い猫がいた。
何も考えずに後ろをついていく。
気がつけば、人気のない路地に入っていた。
「あれ、ここどこ?」
「にゃ~」
白い猫の声だけが響いた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
ブックマーク、評価をして頂けると励みになります!!
o(*'▽'*)/☆゜'・:*☆ありがと☆




