15.試験管「あの…胃薬ありますか?」
「こちらが実技講習の会場となります」
レイさんが笑顔で言った。
そこには、一言で言うなら筋肉の塊がいた。
鍛えることに生きがいを見出している、俺は彼を見てそう感じた。
「俺が実技講習担当のフランクだ。Bランク冒険者だ」
自信に満ち溢れている。
自分がやってきたことにきちんと誇りを持っているタイプだ。
「さっそくだが、お前らに質問だ。冒険者としてもっとも怖いものは何だ」
「はい!モンスターです!」
眼鏡をかけた、キノコ頭の男の子が言った。
「他にあるか?」
「はい!人です」
卵のような綺麗な頭の男の子が言った。
「その通りだ。特に、冒険者は仲間であるが、敵でもある。 ライバルがいなければ、その分自分の仕事が増える。」
「だからこそ、お前らには将来敵になるかもしれない同業との戦闘をこの講習でしたい。 丁度10人いるな。 二人一組で、実際に戦ってもらう。」
「これはあくまで講習であり、殺し合いではない。 そのため、各々の使ってる武器に最も近い形状のものをそこから選んで使って欲しい」
「誰と戦うかはお前らが決めろ。 10分後に試合を開始する。 一組ずつ行う。 勝敗は、俺が判断して決める」
俺は焦った。
こういったペアを決めることは苦手だ。
悩んでいるうちにどんどん周りはペアを決めていく。
ふと、ゆで卵のような頭をした男の子と目があった。
「やる?」
「おう」
こうして、ペアが決まった。
1試合目は、先ほど、質問に答えたキノコ頭の男の子と、タケノコみたいな尖った髪型の男の子の戦いのようだ。
「俺は農民だ」
「俺も農民だ」
どうやら二人とも農民らしい。
キノコVSたけのこ戦争が勃発した。
フランクの方を見ると、頭を抱えていた。
「あいつら、なんで冒険者になろうとしているんだ…」
どうやら、農民が冒険者を目指すことは珍しいようだ。
両者、鍬のような形状の武器を使って戦い始めた。
試合はとてもお粗末なものだった。
戦うということに全く慣れておらず、また人を傷つけるのをためらっているようだった。
互いに相手に当らないように振っている。
「あいつら、ダメだろ……」
皆が思っていることをフランクは言った。
両者ともに息切れをし、ふらふらになったところで試合を止めた。
「引き分けとする」
フランクは言った。
キノコとたけのこの戦いは引き分けに終わった。
2試合目は戦士同士の戦いのようだ。
互いに長剣を模した棒を使い、戦い始めた。
先ほどの試合と異なり、多少は慣れているようだ。
相手の隙をつこうとはしているものの、実践訓練が不足しているのか、反応が遅く、動くたびに重心が大きくブレている。
隙を何度も見逃していることに気づいていないようだ。
こちらも決定力不足なのか、引き分けに終わった。
3試合目は盗賊の男の子と魔法使い女の子の戦いのようだ。
「今日われに力を与え給え。 神が人に赦す如く、かの罪を赦し給え……」
どこかで聞いたような、某聖書のような詠唱を魔法使いの女の子が始めた。
「おいおい、こんなところで大規模な魔法を使うのかよ」
フランクも驚いている。
盗賊の男の子も、いきなり長大な詠唱を相手が始め、驚きの余り攻撃することを忘れている。
大規模魔法を使おうとしていることに驚いているのか、無防備に長大な詠唱を始めたことに驚いているのか。
皆が詠唱をしている魔法使いの女の子を見つめた。
「深淵なる…… 全ての罪を焼き、穿て! ファイアーアロー」
長大な詠唱の末、唱えられたのはファイアアローだった。
しかも、明後日の方向に飛んで行った。
「……」
気まずい空気になった。
フランクを見ると、顔面蒼白になっている。
「今年は、豊作だな……」
フランクは心にも無いことを言っていた。
魔力を消費しきったのか、魔法使いの女の子はふらふらだ。
盗賊の勝ちだった。
4試合目は神官見習い?の女の子と魔法使いの男の子の戦いのようだ。
「なんで神官が冒険者になろうとしてるんだ?」
フランクは困惑していた。
「今年はどうなっているんだ……」
魔法使いの男の子が神官の女の子に向かって手を向けた。
すると、ファイアアローが連射された。
「なかなかやるな。 無詠唱で、しかも連射速度が速い。 対人であることがわかっているな」
フランクはやっとまともな試合を見られると思って、安心したようだった。
魔法って無詠唱でできるのか!!?
それじゃあ、さっきの子は一体……
数十本にもなるファイアアローを神官の女の子が避けた。
そして、魔法使いの男の子に向かって走り出した。
男の子の方は避けられると思ってなかったのか、また、なぜ自分に向かって走り出したのか、困惑しているようだ。
そもそも、神官はどうやって戦うのだろうか?
相手はアンデッドではないぞ。
一気に間合いを詰め、そして、右ストレートが男の子の頬に見事に刺さった。
魔法使いの男の子は吹っ飛び、気を失ったようだった。
フランクを見ると、口をぱくぱくしていた。
「今年は一体何なんだよ……」
フランクは天を仰ぎ見た。
強さはともかく、どの冒険者も非常に癖が強いようだった。
これで新人冒険者なのだ……
いよいよ、次は俺とたまご頭の男の子の試合だ。
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