12.2回目のっつよ
修行していた場所から歩き始めて2日程経った。
流石に水なしでは厳しく、川をまず探し、見つけてからは川に沿って歩くようにしていた。
森の外にはまだ出れそうにはなかった。
ようやく、修行から解放され、次は何をしたらいいか悩んでいた。
課題を人から与えられることがありがたいことだと今更ながら実感した。
自分で何か目標を立てる、どうやって達成するかを考えることは難しかった。
おっさんからは最強を感じて来いと言われたので、なるべく旅をする生活を考えていた。
いずれにせよ、どうやって生計を立てるのか、この世界はどういう世界か、そもそも森から出れるのか。
せっかく自由になったのに、不安を抱えながら歩いていた。
不思議に思う。
修行が終わり、出発した当初は最高に幸せな気分だった。
でも、数日経って、現実が見えてくると途端にその気分は消えた。
別に状況が変わったわけではない。
単に物事の考え方、受け取り方が少し変わっただけで、こうも気分に落差ができた。
そういったことを考えていると、叫び声が聞こえた。
「ひぃぃー」
若い女性の声だ。
状況が分かる位置まで森を走った。
15歳くらいの女の子二人がゴブリンっぽいのに追いかけられている。
ピンクの髪のショートカットの女と金髪のツインテールの女だった。
ピンクの髪の子には黄色、金髪の子にはピンクの布をそれぞれの腕に巻いてあるようだ。
正直、ちょっと感動した。
異世界に転生したことは分かっていても、ファンタジーの世界の実感がなかったからだ。
小さめなゴブリンの数は10体程で、1匹でかいゴブリンがいる。
異世界転生前の知識を基にするならホブゴブリンというやつだろう。
普通に考えれば、女性二人を助ける方が良さそうだが、ゴブリン達の方が悪というわけではない。
しかし、数ではゴブリン達の方が圧倒的に多い。
もし、おっさんがいう最強を既に体現してるのであれば、あれくらいの数は容易くさばけるはずだ。
女の子二人を助けたいというよりは、自分の力がどれくらいあるかを試したかった。
そう思ってると、金髪ツインテールが躓いて、転んだ。
ゴブリン達がすぐに追いつき、襲い掛かろうとしていた。
背後からゴブリン達を倒しても良いが、力試しをしたかったので、金髪ツインテールの少女の近くに飛び出した。
「えっ、誰?」
「助ける」
そう言い、ゴブリン達の方に向き合った。
ゴブリン達が襲い掛かってくる。
不思議な感じだった。
ずいぶんとゆっくりとやってくるのだと。
まずは最初のゴブリンの頭に軽く棒をあててみた。
あたった瞬間、ゴブリンの頭が弾け飛んだ。
「あれ?」
襲い掛かろうとしていた他のゴブリンは足を止め、驚いた表情をしていた。
「今、何が起こったのよ?」
金髪ツインテールの少女も驚いたようだった。
ピンクの髪の少女も足を止め、驚いていたようだった。
俺も軽くなでたつもりなのに、頭が弾け飛んだことに驚いた。
攻撃した側も、された側も、観ていた側も全員が驚き、気まずい沈黙が訪れる。
5秒ほど経ったのだろうか、沈黙を破ったのはホブゴブリンだった。
雄たけびをあげながらゆっくりと襲い掛かってきた。
今度は、先ほどと異なり、もっと力を抜いて、少しあてるイメージでホブゴブリンの足に木の棒をあてた。
ホブゴブリンはその場で半回転し、頭から地面に落ち、鈍い音がした。
死んだようだった。
他のゴブリン達はそれを見ると、すぐさま逃げて行った。
流石に追撃する必要はないと思った。
戦闘前は気にならなかったが、戦闘に入った途端、とてもゆっくりと時間が流れるような感覚になった。
木の棒も振ったわけじゃなくて、あてただけでゴブリンの頭が弾け飛んだ。
今の戦闘を振り返っていると…
「「ありがとうございました」」
金髪ツインテールの女とピンクの髪の少女が言った。
「間に合ってよかった」
「ゴブリン達が攻撃を仕掛けた瞬間に頭が弾け飛んだりしていましたが、その木の棒で殴ったのでしょうか」
金髪ツインテールの女が言った。
どうやら、何が起こったかわかってないようだった。
「そうです」
「その木の棒は何か特殊な武器なのでしょうか」
「わからないです。 修行でずっと使ってたもので、恐らくただの木の棒だと思います」
「それであの威力なんですか…… 何か魔法を使っていたのでしょうか」
「魔法? 魔法ってあるんですか!?」
「ありますが……」
「すみません。物心ついたときから、ずっと森の奥で修行していたため、世の中の常識に疎いんです」
「森で修行されてたんですか!? 森の奥には武を極めた人物がいるという噂は聞いたことがありますが、貴方ですか」
「わからないですが、多分、師匠なのかな?」
「ゴブリンに襲われた場所にずっといるのはちょっと怖いからそろそろ移動しながら話さない?」
ピンク色の髪の少女が言った。
「そうですね」
どうやら二人とも町に戻るようで、案内してもらうことになった。
金髪ツインテールの少女の名前はアリス、ピンクの髪のボブカットの少女の名前はハルというらしい。
アリスは魔法使いで、ハルは戦士という職業のようだ。
「ツヨシさんは、どうしてそのような恰好なのですか?」
ハルが尋ねた。
「森の奥でずっと修行に明け暮れていたんです。 ずっとこの格好だったので、服装について気にしてませんでした。 すぐにボロボロになってしまうので…町に入るのはこの格好ではまずいですか?」
「男性冒険者の中には上半身がほぼ裸みたいな人もいるので、大丈夫だと思います。 下の布1枚だけだとちょっと目立ってしまいますね……」
ハルは少し顔を赤らめて言った。
「町に入ったら、すぐに服を買いたいですが、お金がないんですよね…」
「お礼に服を差し上げますわ」
アリスが言った。
少し慣れたようで、本来の口調に戻ったようだった。
「助かります!」
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