10.鬼「魂にも限度がある」と云った※鬼は登場しません
おっさんに対し、先手で攻撃を仕掛けるのは無理だと思っていたので、まずは攻撃を受けることに専念した。
しかし、受けに専念すると、おっさんは、間合いに入ったからといって攻撃を仕掛けてこなかった。
そもそも俺の意識に変化があった瞬間に攻撃を仕掛けているようだった。
受けから、ちょっと攻撃しようかと意識を変える瞬間には攻撃をくらっていた。
じゃあ、受けの意識を持ってると攻撃は仕掛けてこないが、こちらの受けの意識が弱まった瞬間には攻撃を仕掛けてきた。
攻撃をしようと意識を持つと、受けの意識が疎かになり、攻撃をくらう。
受けの意識を持つと、攻撃を仕掛けてこないが、受けの意識を同じレベルで維持し続けるのは無理なため、意識が弱まった瞬間に攻撃を必ずくらった。
こうなってくると、攻撃をする意識や受ける意識を持つこと自体が不利に働いてるように感じた。
意識に変化があった瞬間、どうしても意識の空白ができてしまう。
単に棒を振るだけならおっさんと同じことはできるだろうが、相手がいる状態で棒を振るとなると話は大きく変わる。
今までは基礎でしかなかったのだ。
いざ、実践で利用するとなると、基礎の時に意識する必要のなかったことを意識する必要が出てきた。
こうなると対策や分析も何もないような気がしてきた。
無意識な状態を保ち、意識せずに攻撃し、意識せずに防御するといった、非現実的なものを目指させられてるように感じた。
さらに1か月、2か月と時が経った。
ごく稀におっさんの攻撃を棒で受けることができるようになったが、相変わらず意識が飛ばないまでも、おっさんの攻撃を受けていた。
ただ、せっかく棒でおっさんの攻撃を受けても、こちらの攻撃の機会が全く作れなかった。
攻撃を受けることができたという事実に、自分の成長を少し実感し、喜びを感じることはあった。
さらに1年が経った。
10回に9回くらいは攻撃を受けれるようになってきた。
自分の意識に隙間ができたときには防御の姿勢に入れるようにはなってきた。
この頃になると、おっさんに対し、積極的に攻撃しようという考えはなくなっていた。
まずは、おっさんの攻撃を防御し、その上で攻撃することを考えていた。
けれど、おっさんの攻撃のタイミングの種類も増えてきた。
意識の隙間がなくても攻撃してくるようになってきた。
攻撃を受けた瞬間、こちらの意識に隙間ができるため、そこでは攻撃をくらった。
そう、意識の隙間を作るための攻撃もするようになってきた。
そのときになって気がついた。
全く逆のことをしてることに。
意識を常に張り巡らせ続けることには限界があったのだ。
結局、隙を作る攻撃を延々とされ、どこかでできた隙で攻撃をくらうだけの未来が見えてしまった。
こちらからの攻撃も攻撃をしようという意志の方が実際の挙動よりも早く出てしまうため、おっさんに察知されて、通用しない状態だった。
そこまで考えると、攻撃を受けたりする頻度は上がってきたものの、1年前から進歩がないように感じた。
このままでは課題をクリアできないと思い、攻撃を受けることを覚悟して、戦闘中でも瞑想をしてるときのように無意識を目指した。
さらに1年が経った。
少しずつではあるが、戦闘中であっても瞑想をしてる時と同じように何も考えなくなっていた。
おっさんも、今までとは異なり、こちらの心が無になったときに攻撃をしてくれていた。
恐らく、これが本来の形なのだと思った。
当然であるが、文字通り何も考えてないので、攻撃は普通にくらっていた。
さらに10年程経った。
戦闘中はほぼ瞑想状態を維持し、おっさんの攻撃を安定して受けれるようになった。
といっても、おっさんの攻撃は例の棒を振ってるときと同じ攻撃のみだった。
しかし、当初目指していた、おっさんの攻撃を受け、攻撃に転じることがついにできた。
こちらの攻撃は残念ながらおっさんに防がれたが、かなり大きな進歩だった。
そして、おっさんの攻撃の種類が増えた。
今まではいつ攻撃をするかだけが問題だったが、いつ、どこを攻撃するのかと、一気に選択の範囲が広まった。
さらに50年程経った。
増えた攻撃の種類にも対応できるようになってきた。
おっさんの攻撃を受け、こちらは攻撃を仕返し、おっさんの攻撃をさらに受ける。
また、訓練が終わった後に、攻撃の種類を増やす練習をひたすらしていた。
しかし、同じように攻撃を受け、返しているにも関わらず、徐々にこちらが不利になっていった。
受けてる感じからして、おっさんはこちらの力と同じになるように抑えてるので、肉体的な差ではないと思っていた。
攻撃を受けてから、攻撃に転じる瞬間であったり、新しく増やした攻撃の質の差なんだろうと感じていた。
さらに100年程が経った。
当初目指していた攻撃の種類は身につけた。
戦闘中であってもほぼ瞑想をしてる時と変わらない状態を維持できている。
おっさんとの攻防はかなり拮抗するようになってきたが、やはり勝ちきれなかった。
ほんのわずかずつであるが、不利な状況が積み重なっていく。
今、不利な方に少し傾いたと感じることはあるが、なぜ不利になったのかが分からなかった。
このまま、わずかな質を上げていっても、おっさんに勝てるような、いや引き分けれる感じがしなかった。
さらに500年程が経った。
500年前とそれほど変わらない状況だと思っていた。
肉体的な面はともかく、それ以外ではおっさんは全力を出していた。
おっさんの方が格上なのはわかっていても、こうも拮抗した状況で1度も引き分けにさえできない理由があるはずだった。
やるべきことをやりきった感覚がかなり強くなっていた。
諦めたくはなかったが、何をしたらいいのかがわからなかった。
ふと、おっさんを見ると、口を開こうとしていたがやめたようだった。
出口の見えない迷路、そうとしか思えなかった。
やるべきこと、やれることは確かにやったはずだ。
これは確信を持って言える。
一体、何が足りないのか全くわからなかった。
心に、魂に、小さな罅が日々入っていってるように感じた。
いつまで俺の魂は持つのだろうか。
そして……
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