おっさんのお話
ある居酒屋で一人のおっさんが酒を肴に枝豆を食べていた。
え、おかしいって?本当に酒を肴に枝豆を食べていたのだ。
するとそこに通りがかったもう一人のオッサンが酒を肴に枝豆を食べるおっさんに声をかけた。
「おいおいなんだいその食べ方は。酒を肴に枝豆なんて食べるんじゃないよこのう。」
「なんだとっ。酒を肴に枝豆を食べるぐらい俺の自由だろうがこのやろう。」
「俺なんてな、そんな呑み方しねぇ。せめて酒を肴に焼き鳥でこう、くいーっとだな。」
「おうおうっ、なんだ気が合うじゃねーかオッサンよお。」
「どこが気が合ってんだ。てやんでいばかやろう。おっさんは黙って枝豆ぷちぷちしてやがれい」
そこに一人の若者が通りかかった。物わかりのいい若者は、二人のおっさんとオッサンが酒を肴に枝豆を食べるか焼き鳥を食べるかで口論している現場に遭遇した自分を心底不遇に思った。
「おいおい。おっさんもオッサンも醜い言い争いしてんじゃないよ。」
「んだとっこの若いもん!俺の若い頃なんてなあ。そりゃあお前らなんかと違ってうんたらかんたら」
「おうおうっ言ってやれ、この若いモンに世の中の厳しさってもんを叩き込んでやれオッサン。だいたい俺の若い頃はだぞ、うんたらかんたら。」
「いやもう本当いいっすよ。なんで俺こんなおっさんとオッサンに絡んだんだろ?おっさんもオッサンもどっちがおっさんでオッサンなのか分かんねえからいいっすよ、すいませんでした。」
「「あっそう?」」
なんて二人のおっさんとオッサンは言うとお勘定を払い、そのまま居酒屋を出ていった。
若者だけがそこにただ一人取り残された。
end.
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