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昔飼っていた猫に夢で再会した話

作者: なまくら刀

昨夜、夢をみた。


夢の中で、僕は自宅の渡り廊下に立っていた。

自宅といっても、現実ではとうの昔に無くなった場所。

僕が生まれてから小学校に上がるまでの7年間を毎日過ごし、その後も週末には戻ってきていた祖父母の住む家だ。

僕はこの家が好きだった。解体して同じ場所に新しい家を建ててから20年以上経つが、夢に出てくるのは決まってこの家だ。何故か現在の家の夢は一度もみていない。


その今は無い懐かしい渡り廊下の大きな窓から外を見ると、本来ならすぐ目の前にあるはずの我が家の小屋が随分と離れたところにあった。

おやと思って見ると、その隣に見慣れない家があることに気付く。

知らない家だった。トタンでできた壁のやや高いところに窓がいくつか並び、そこには昔見た瞬間湯沸かし器の裏側とおぼしき物があった。なんか昭和の情景といった感じだ。

その窓のところに猫が2匹いた。じっとこちらを見ている。

その姿に見覚えがあった。そうだ、昔飼っていた猫だ!


僕が幼稚園の時、家には2匹猫がいた。寝るときは祖父母の布団に入って寝ていたのだが、その時一緒の布団に入って寝ていたのが2匹の子猫だった。

確か、三毛猫だったと思う。子猫の体温は高く、冬の寒い日に布団の中で子猫に抱き付くととても暖かかったことを覚えている。


残念ながら、大人になる前に自宅の前で車にひかれて亡くなったらしい。「らしい」というのは僕自身がはっきり覚えていないのだ。ただ、家族に聞いた話だと、僕はその日一日ずっと泣いていたそうだ。遠い記憶で、理由は分からないが門に上がってただひたすらに泣いていたことがあった。もしかしたら、それだったのかも知れない。


その猫たちがいる!僕は感激して渡り廊下の窓を開け放った。

「おいでおいで」と声をかけて手招きすると、猫たちは窓から外に出て僕の方に向かってきた。その顔は嬉しそうに見える。

もう少し!というところで何故か現在飼っている猫が先に入ってきた。15歳の雑種のオスで、高いところにジャンプする時はいつも「にゃあ!」と気合を入れて登ってくる。一番乗りで窓のふちに腰かけると、その後にかつての飼い猫が1匹入ってきて、現在の猫のお尻をクンクンと嗅いだ。少し嫌がっているようだ。

そして2匹目が近づいてきた・・・ところで目が覚めてしまった。


目が覚めてからしばらくボーッとしながら夢の内容を振り返る。

愛しい猫たち。数十年という長い時間、久しぶりに逢えて本当に嬉しかった。せめてもう少し覚めるのが遅かったら撫でることができたというのに、肝心なところで何故目が覚めてしまったのか。


朝っぱらから未練たらたらで悶々としている僕。カーテンを開けると外は既に明るい。まだ朝だというのに太陽の光はジリジリと熱を帯びている。そういえば昨日はセミが鳴いていたなと思い、またあの熱波に耐えねばならないのかとうんざりした気持ちになりなりながらベットから身を起こす。


また一日が始まる。

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