表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクイレギアの心臓  作者: 佐倉真由
嘘なら要らない
25/50

 重く鋭い破裂音が、路地裏に響いた。

 音で直接頭を殴られたような衝撃に、男たちは身を竦め、倒れ伏した仲間の姿を見やる。


「……ひ……っ」


 額に開いた丸い穴から血を垂れ流す男に、既に息は無い。

 ぴく、ぴく、と痙攣する死者の手指を感情のない目で一瞥し、彼は顔を上げた。


「これの弾は貴重なんだよ。知ってる? 今の時代ではまず手に入らない。一から作るのも結構な手間でね、こんな原始的な銃の復元にだって何度失敗したことか……」


 嘆くような調子だが、呟く青年の顔には薄い笑みが浮かんでいる。

 火薬の臭いと血の臭い、路地裏の悪臭が入り混じる中、彼は鉄の塊を片手に冷たく言った。


「さて。言ってごらん、誰が君たちに矢を放てと命じたのか」


 鉄の塊は、鼻をつくような臭いと白い煙をその先端に纏って、残った男たちを順々に睨んでいく。

 屈強な男たちが、襲いかかることも、逃げ出すことさえもできず、ただただ震えて死を待つ異様な光景の中に、重い沈黙が圧し掛かる。


 魔女の手先め、と口走った男が、まず撃たれた。

 もつれる足で逃げ出そうとした男が、その次に。


 淡々と積み重なっていく死体の山を前に、とうとう最後の一人が、叫んだ。


「やめてくれ! ウルフズベインだ! 依頼主はウルフズベインの――」

「大正解」


 にこ、と笑った青年は、よくできましたと褒美を与えるが如く引き金を引く。


 とうとう自分以外動く者がいなくなった狭い路地裏で、彼は独り、華やかに微笑んだ。


「ルーナの薔薇に傷を付けろなんて誰が言った?」


 鉛の弾を受け止めた壁面には、真っ赤な花が咲いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ