5話 クルーのお仕事
ルドルフ視点です。
食堂を出て、コックピットでリラと別れる。今からアレクと見張りだ。
操縦席に座ったが、少し考えて立ち上がり、二人分コーヒーを淹れて一つをアレクの前に置き、コーヒーを飲みつつまた操縦席に座る。
目の前にあるあまり代わり映えのしない画面を見る。レガンティアのオートパイロットは優秀だ。全方位を常時観測し、小さな隕石に当たらないように結界を上手く使いながら進む。まるで意思を持っているかのようだ。まぁ、それに乗るクルーもすごいが。
アレクは外に加えてレガンティア船内のカメラなど総数三十台もの画面を一斉に脳内で処理している。少しの変化も見逃さず、集中力が桁違いなので「本当に人か?」と思うこともままある。情報処理能力が高いのだろう。
リラは俺と正反対でレガンティアなどの大きなものを扱うのが上手い。まるで自分の手足のようにレガンティアを動かす。こいつが砲士であるソルと組んだら最強コンビだ。
二年前に、八ジードぐらいのでかい宇宙船と鉢合わせ襲撃されたとき、リラとソルが巧みな操縦技術と確実に当てる砲撃で迎え撃った。結果こちらは無傷であっちは大破。おまけに二人で堂々と敵船に乗り込み、大量の物資をちゃっかりいただいて帰ってきた時はアレクと一緒に若干引いた。
生きるためには仕方ないことだけどな。この二人が敵じゃなくて良かったと心底思った瞬間だった。
となると一番まともな常識人、俺しかいねぇ……。いざとなったら奴らのストッパーにならないとな。上と下に問題児がいると大変だ。
しばらくアレクとエンジンルームの部品交換について話していると急にアレクが動かなくなった。どうしたのかと見ていると一つの画面に集中しているらしい。あれは方角的に2時の方向の側面外カメラだ。中央の大画面にそのカメラの視点を映し、アレクに尋ねた。
「なんか見つけたか?」
すると、いきなりアレクは手元のキーボードを操作し始める。
「ああ、あれはおそらく惑星だよ。まだ生物がいるか分からないけど」
「やっとか! どれだ?」
「ちょっと待って。もうちょっと拡大してみないと……この惑星大きいな……しかも表面が青い。あれが文献に出て来る海だとすると……」
「生物がいる可能性はあるな。アレク、二人を起こして良いか?」
「…………ああ。着陸出来そうなところもあるみたいだし、頼むよ」
「っし! OK! 待ってろ」
操縦席から勢いを付けて立ち上がり右後方にあるドアを潜る。
「ソル! リラ! 惑星見つけたぞ! 起きろ!」
二人のハンモックを同時にひっくり返して落とす。
「リラ! 着陸すんぞ! 早く行け! ソルは俺と出る準備!」
二人が一刻も早く覚醒するように大声で言う。
リラはすぐに立ち上がり寝室を出てコックピットへ入った。ソルも少しよろけながらも立ち上がり俺の後について寝室とコックピットのドアを潜った。