1話 宇宙船のクルー
「まぁたそれ読んでんのか? リラ――って寝てんのかよ!」
「……ん?」
自分の名前に反応して顔の上に乗っていた本を退ける。目の前には赤髪黒眼の男、ルドルフことルドがいた。
「んあー。寝ちゃってたか。――っいて! こ、腰がぁぁ!!」
「イスで寝るからだろ。ソファで寝ろよ。たった三歩じゃねぇか」
「ははっ。気づいたら寝ちゃってるんだもん。しょうがないよね」
横から声が聞こえて顔を向けると金髪碧眼の王子……ではなく、アレクシスことアレクのご尊顔がこちらに笑顔を向けている。
「あれ? アレク? ソルといつ代わった?」
「ほんの十分前だよ。僕が交代した時にはもう気持ちよさそうに寝てたよ?」
「まじかー。ごめん。いつも言ってるけど遠慮なくはたいて起こしても良いんだよ?」
「そうだそうだ。こいつ自分の仕事ほったらかして寝てんだから遠慮はいらねぇ」
バシバシとルドが私の頭をはたきながら言う。ちょっ、腰に響いてるから、止めていただきたい。
「こらこら。女の子を叩いちゃダメだよ。リラ、ルドと朝ご飯食べてきなよ。夜勤、お疲れさま」
「うん、そうするー。じゃ、あとよろしく、アレク」
「了解」
本を持って立ち上がり、ルドの後についてコックピットを出る。
今、私達がいるここは宇宙船「レガンティア」の中。
今から百年前。まだ暦がアメデア歴だった頃。私達の祖先の惑星は巨大隕石によって消滅したらしい。らしいって言うのは実際その目で見ていないから。文献によるとそこらへんが当時の人たちは混乱してるのか、表現が曖昧で要領を得ないのだが、ただ一つ読み取れたことはもう帰る惑星は私達にはないってこと。
その時からずっと私達は宇宙を彷徨っている。
でも、この百年もの間についに生き残りは、私達四人だけになった。
私とルドとアレク。そしてソル。
ちなみに四人とも戦闘能力や生活能力は抜群。でないと、やってけないからね。というわけで代わりばんこに四人でレガンティアを回しておるわけです。