プロローグ
初投稿の見切り発車です。
拙いかもしれませんが、広い心で見守って下さい。
アメデア歴 二五六九年 二月四日
もうすぐあれが完成する。人類が求めた続けた空。その果てに何があるのだろう。それがやっと解明するのだ。今も身体がうずうずして堪らない。早く見たい。あの青い空の先にある景色を。きっと空から見たこの王都はちっぽけだ。シアヌ山やミリアヌ川ですら地上で見るほど大きくはないのだろう。俺をこの歴史的瞬間に立ち会わせて下さる神に感謝を。あの空飛ぶ船の名前はもう決めてある。あいつの名前は―――。
アメデア歴 二六二一年 八月二十一日
ついに宇宙まで行ける! 長かった。まだ初めて飛行船に乗ったあの日のことは忘れていない。どれだけ自分がちっぽけな生き物だったかを思い知らされたあの日。あの日からどんなに研究を重ねても空の果てに、宇宙に行くことは叶わなかった。だが今日! 遂に完成した! 窮屈だろうがかろうじて一年は生活できる物資と乗組員五十人を乗せ、宇宙へ旅立つ。私も長年研究してきたものとして、乗せてもらえることになっている。愛する妻と息子達を残していくのはしのびないが、たった一年会えなくなるだけだ。笑って送ってくれるだろう。帰ってきたらたくさん宇宙の話を聞かせてやるのだ。イヴァスが一番悔しがっていたから写真もたくさん撮ってきてやらねば。出立は一週間後。飛行艇の中なので最低限の物しか持って行ってはならないことになっている。慎重に選ばねばならないだろう。
アメデア歴 二六二二年 五月八日
大変なことになった。帰るための目印となるポイントが急に地図上から消えたのだ。距離や時間などを考慮すれば算出可能だが、機器が壊れたのか? だとしてもちゃんと、毎日整備していたはずだ。方角を見失ってしまえば一年どころか一生家族と会えなくなるのだから、最も注意していた機器の一つと言ってもいい。今朝、私とリカルドで確認した。考えたくはないが王都で何かあったのか? しかし、周辺国とは良好関係を保っていたはずだ。この九ヶ月の間に揉め事でも? それよりも家族は無事だろうか。リア、イヴァス、リヴィト、ヴァン。どうか無事でいてくれ。
アメデア歴 二六二二年 八月二十五日
目の前の光景を疑った。改めて算出したポイントを頼りにできるだけ急いだ。だが、すでに帰るところはなかった。何があったのか分からない。ただ、私が最初に思ったのは――家族の側を離れるべきではなかった。
『セイルド・カラントの研究日誌』より