あるオネエの話
「ねえ! 一体全体どういう事なのよ!! アタシたち聞いてなかったんだけど!!」
雪の降りしきる中二人の人間が向かい合って話をしていた。
「聞いてないって言われてもぉ店長には伝えてあったのよぉ」
「あったのよぉっていつなの?! どうしてアタシたちには伝えられなかったのよ!!」
一人は赤く派手な柄の丈の短いチャイナドレスを身にまといにょっきり突き出た短い脚には網タイツ。そして網タイツの上からも見えるもっさりと生えた汚らしいすね毛。 そしてチャイナドレスの上には防寒にかおしゃれにか分からないが高そうな毛皮のコートを羽織り四角い顔にはゴテゴテとした化粧をしているが化粧をしても消えない青髭をはやし顎が割れている男(?)がもう一人を睨んでいた。
「そんなの店長に聞いてよ。アタシはもう今日でここはお終いにして新天地でやっていくんだから」
睨まれた方はと言えば、低い声を除けは長身の美女と言われてもおかしくはないが、やはりというか女にしては肩幅が広く全体的にゴツい気がする。
「なんですって! あんたこの前まではここでずっとやってくって言ってたじゃないの! はっ! まさか男?! そうよね前に男出来た時は結婚までするとか騒いでたもの!」
「……うっさいわねアタシの勝手じゃないの!」
彼女らが働くのはおかまバー。その店先でギャーギャー騒ぐ彼女らの姿はギラギラとしたネオンに照らされ目立ってはいたが、それに気付く者は居なかった。
「勝手じゃないわよ! アタシたちは仲間じゃないのっ! 何年一緒にやってきたと思ってんのよ!」
「なんだあれ?」
「知らねー撮影かなんかか?」
初めは地面に落ちたシミのような小さな小さな光だった。
だから、彼女たちが気付いた時には既に手遅れだった。
「あんた……それ……何?」
「は? 話をそらさないで……よ?」
最初に気付いたのは通行人。外野がざわめいてるのに気付いた美人の方だった。
外野の騒ぎを聞き辺りの騒ぎに気付くとすぐに状況を確認する為に辺りを見ようとして顎割れのケバいオネエの足元を中心に円を描くように光に包まれているのに気付くと、ぎょっとなって、ケバい方のオネエから一、二歩後退った。
突然後退った美人のオネエが驚いた美人見て興奮していたケバいオネエも遅れて自身に起こった事態に気付き目を丸くする。
「な、なによこれ……ちょっと」
「どうなって」
その言葉は最後まで言えなかった。
一際光が強くなったと思った次の瞬間、ケバいオネエの姿がきえた。