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チート使いの主人公



 狩元幽気──主人公

高校二年生、軽度の中二病。

友達はいるが、色々あって生徒を脅かす存在に。


 宇都宮秋──親友

高校二年生、サイコパス。

普段は格好良い成績優秀の優等生、だが、本性を知って普通に接するのは難しい。

ちなみに、その素顔を知るのは幽気だけ。


 西澤愛菜──幼なじみ

高校二年生、百合のロリコン。

容姿は幼女、好きになるのも幼女。

幼女のことになると下ネタトークが止まらない。


 佐々岡彩香──秋の彼女

高校二年生、秋が大好き。

秋のことが好き過ぎて、たまにヤンデレる。

風紀委員ということもあり、下ネタクイーンの愛菜に敵意を向けている。


 狩元ツグネ──姉

25歳、重度の中二病。

綺麗なのは外見だけ、中身は──

親はよく長期旅行に行くので、家のことはツグ姉がやっている。


 狩元ひかり──妹

高校一年生、自意識過剰。

自分中心、幽気のことは下僕呼ばわり。

実はブラコンだったりするツンデレ。


 槙原洋子──保健室の先生

美人教師、ドS、ツグネの親友。

言葉だけで人の心をえぐる要注意人物。

今まで自分の事を好きになった男は全員泣かせた。


 清川隊喜──掃除部顧問謙部長

42歳、熱血教師、独身、掃除大好き。

幽気たちが入っている部活の顧問謙部長。

掃除が好きで部活まで作る人。

数学の教師で、相似も大好き。


 一変目 世界観の崩壊


「ねみ~、てかだるい~」

 狩元幽気、活動停止。

「学校やだ~」

 夜通しゲームをやって現在朝の6時。

「もう寝よ」

 ドーン!

「さあ起きろ下僕野郎!」

「おやす──」

 バサッ

「寝るなバカ!」

「朝からうるさいぞ、ひかり」

「あ、ごめん、えと、起きて?」

 ひかり、デレる。

「この流れ、これで5回目だぞ」

「そ、それは、お兄ちゃ、下僕くんが悪いんだぞ!」

「はいはい、そうですか」

 俺の名前は狩元幽気、平和な日々を送りたいごく普通の高校二年生だ。

「おはよー」

「おはよ、あ、悪いんだけど、そこにあるごみ捨ててきて、あと朝刊取ってきて」

「はい」

 この人は姉の狩元ツグネ、今は大魔王を倒しに行くために準備をしているらしい。

「はい、朝刊」

「ねえ下僕くん、今度六時に起きてみてよ、まあ無理だろうけど」

 いい加減『下僕』って呼ぶのは止めてほしい。

「あのな、俺はお前が思ってるほどダメじゃないんだぞ」

 二人してすごく驚いた顔をした。

「下僕くん、寝言は寝てから言うんだよ、知らないの?」

「わかった、じゃあ明日六時前に起きてやるよ」

「幽気、止めておきなさい、どうせ結果は目に見えているんだから」

「なっ……そんなこと言ったらツグ姉だって夜更かしばっかして、よく遅刻ギリギリまで寝てるじゃん」

 実際半日遅れて行った日もあった。

「私は幽気のことを心配して言ってあげているのよ?」

「はっ?」

「だって、もしも幽気が日の光を浴びて灰になってしまったら、なんて考えると、私……」

「おい、ちょっと待て、俺が日光浴びたら灰になると思ってんの?」

 俺は吸血鬼かなにかかよ。

「ああ、お前は引きこもりのクズだ、そんな奴が清き光を浴びたりしたら……」

「下僕くん、今まで楽しかったよ、死んでもわたしの下僕でいてね?」

「お前らな……」

 いつもこんな感じだ、俺の唯一の味方であった親は、ここ数年世界を渡り歩いている。

 毎月、絵葉書と外国の紙幣で十万円が送られてくる。

 俺たちの生活が困らないようにと思っているのだろうが、ツグ姉は換金するのはもったいないと、送られてきたお金全てを脳内に保管したと言っていた。

 正直、何を言っていたのかわからなかった。

「ひかり、一緒に学校行くか?」

「は? なに言ってんの?」

 そんな口当たり強くなくても……

「幽気、私はお前のことを犯罪者に育てた覚えはないぞ」

「俺だって犯罪を犯すつもりはないよ」

「とにかく、独りで行って」

 独りって……

「おい、漢字──」

「早く行って」

「灰にならないようにね」

「はい……」

 こんなの序の口だ、もっとヤバい奴らが学校にはいる……

 俺が行っている高校は、家から歩いて一時間ほどのところにある。

 家と学校の近くには、三十分以上歩かないとバス停がないので、バス通学の方が時間が掛かる。

「あー、朝から疲れたー……」

 頭痛が……

 ちゃんと寝とけばよかった。

「おはよう、幽君」

「ん、あ、おはよ」

 こいつは西澤愛菜、幼稚園からの幼なじみだ。

 容姿は無邪気な子供みたいで、よく告白なんかもされるらしい。

 でも、愛菜は絶対に彼氏なんてつくらない、それは彼女が──

「幽君! 見て! 幼女! 幼女! かあいい幼女らよ!」

 百合のロリコンだからだ。

「かわいかったね!」

 かわいい幼女を見つけてはいつもこんなテンションになる。

 そしてマシンガントークが始まる。

「それはよかったな」

「家どこだろ」

「ついて行くんじゃないぞ」

「ついて行こっかな」

「人の話を聞いてたか?」

「何のこと?」

「だから、ついて行ったりするなってこと」

「分かった、じゃあ、お友達になって……」

「止めとけ、怒られるのがオチだ」

「大丈夫、怒られない程度に友達になるから」

 なんだよそれ。

「不審者だと思われるぞ」

「あ、そっか、じゃあアメちゃんあげる!」

「典型的なやつだろ」

「じゃあ頼む!」

「どうせ、お友達になってください!とか言うんだろ」

「よくわかったね!」

「それで上手くいくと思うのか?」

「じゃあ……やめとく」

「そっか」

 よかった。

 これはまだいい方で、最長で4時間も幼女について語ったことがある

 愛菜は明るいのが取り柄だが、こんなにも明るく話されると気が滅入ってくる。

「見た目はいいんだけどなあ」

「何が? あの子?」

「いや、愛菜が」

「えっ、まさか幽君、私に恋しちゃった? だめだよ、私には心に決めた子が……」

「安心しろ、一応俺にもいるから」

 やばい、口が滑った。

「私が幼女と遊んでいるところに幽君が、そして、私達は、末永く幸せに……」

「あ、聞いてないんですか、そうですか」

 むしろよかった。

「てか、なんだよ末永く幸せにって」

「私と、幽君と、その子」

「そっか、じゃあな」

「ちょ、ちょっと待ってよ! 置いてかないで! 私が誘拐されてもいいの!」

「いいよ」

「なっ……幽君の、幽君の変態! バカのロリコン!」

 それはお前だろ。

「知らないのか、男はみんな狼なんだぞ」

「えっ! そうなの? 幽君、変身しちゃうの?」

 そういう訳ではないけど。

「ほかの女子には話すなよ、あと、男子に向かって『あっ! 狼だ!』とか言うなよ」

「うん、わかった!」

 愛菜は女性に関しての知識は広辞苑並みだが、男には全く興味が無いという。

 だから間違った知識でもすぐに信じる。

 まあ、すぐバレるけど。

「ねえねえ、女子にも狼っているの?」

 女子ってなんて言うんだろう。

「まあ、強いて言うなら、愛菜かな」

「へっ? 私???」

「実はお前は人狼なんだよ」

 なんか変なこと言い出したぞこいつ。

「じゃあ、私、人を襲っちゃうの?」

「いや、お前は幼女を愛でるために生まれてきた、ロリータウルフだ」

 マジでなに言ってんだ、多分正気を失ってる。

 頭が痛い……

「幽君?」

「ごめん……今日全然寝てなくて、ありがとな、こんな話に付き合ってくれて」

「いいよいいよ、学校行ったら保健室で休みな?先生には言っておくから」

 あ、もう、無理。

 バタッ

「えっ、ちょっと、幽君? 幽君!」


 ──???


 ……あれ、俺、どうなったんだろ、あ、花畑が見える……

「おい、起きろアホ幽気、大丈夫か」

「……花畑」

「どうした、いつにも増して気味悪いぞ」

「ここ……どこ……」

「保健室に決まってるだろ、今度はバカ幽気か?」

「保健室?」

「本当にどうした、記憶喪失か?」

「記憶……?」

「はあ……どうせまた夜更かししたんだろ、朝ご飯も食べないで、少しはツグのことも考えろよ?」

「……ツグ?……あっ!」

「おい、雑音幽気、うるさいぞ」

 この人は槙原洋子、この高校の保健室の先生だ。

 ツグ姉とは幼なじみの親友で、俺も子供の頃はよく可愛がってもらった。

 小学生の時から保健室の先生になりたかったらしく、今は保険室の先生としてこの学校の先生をしている。

「ツグ姉には言ってないよね?」

「言ってないよ、こんなことでツグに心配かける訳にもいかないしな」

「うん、ありがと」

「休んだ方がいいぞ、というより、休んでくれ」

「えっ?」

 洋子姉ちゃんが、優しい?

「勘違いするな、誰も変態幽気のことを心配なんてしてない……愛菜以外はな」

 愛菜が……

「あいつ『幽君に何かあったら、私、一人で女の子を誘拐しなきゃ……』って言ってたぞ」

 うん、知ってた。

 でも、なんで俺もやることになってんの?

「よかったな、共犯幽気に昇格だぞ」

「それ、下がってるよね? 犯罪者に昇格って、なにそれ聞いたことないんですけど?」

「おっ、いつもの調子が出てきたな、もう授業に出てきていいぞ」

「あ、はい……」

 キーンコーンカーンコーン──ガラガラッ

「あっ! 幽君! おか──」

「声がデカい、俺はお前じゃないから」

「はひふっへんろはやややみゃいひょー」

 (なに言ってんのかわからないよー)

「それはこっちのセリフだ」

「もー、わかってんじゃん!」

「俺は、お前のテンションに合わせるのは無理な……ん……」

 ものすごい視線を感じる、クラスの人とは違う、殺気が混ざった視線。

「あら、狩元さん、何故遅れたのかしら?」

「出た、モンスタースチューデント」

「なっ、誰がモンスタースチューデントよ、大体、あなたの方がモンスターでしょ」

 こいつは佐々岡彩華、このクラスの風紀委員だ。

「なんで俺がモンスターなんだよ」

「そうだよ、幽君はモンスターじゃないよ」

 まあ、モンスターではないけど。

「ただの狼さんだよ」

 そうなるわな。

「お、狼って、西澤さん、あなた……」

「愛菜、勝手に言うなって言っただろ?」

「あ、そうだった、ごめん幽君」

「そう、あなたたち、そういう関係だったのね」

「んなわけねえだろ」

「幽君とは無いから」

「え……そんなに否定するの? 私は別に、あなたたちの関係について何か言いたい訳ではないから、そんな私のせいみたいな目で見ないでよ!」

「別に見てないぞ」

「あ、おはよう、幽気」

「おー秋、おはよう」

 こいつは宇都宮秋、俺の親友で、危険人物だ。

 これが物語だからまだいいが、こんなのが現実に存在したらヤバい。

「あ、秋くん、話があるんだけど……」

「いいよ、なに?」

 ちなみに、佐々岡は秋の彼女だ。

 本人は隠しているつもりだが、クラス全員が知っている。

「あの二人、今日もラブラブだね」

「片方は一線を越えたラブだと思うけどな」

「あの、えっとね……」

 キーンコーンカーンコーン──

「あっ、ごめん、あとででもいい?」

「あっ、うん……」

「やばっ、授業の準備しないと」

「荷物は全部置いといたよー」

「おお、サンキュ」

「俺も座んないと」

 佐々岡、なに言おうとしたんだろ。

「……なんかごめんな」

「なに? 狩元さんが謝るような事なんてしてないでしょ」

「おう……」

 佐々岡には悪いことをした、二人の関係が悪くなったらどうしよう。

 まあ、どうせ消えるやつなんかに関係ないか……


 ──放課後


「やっと終わったー!」

「声でかいって」

「元気があっていいんじゃないか?」

 俺が言ったら確実に怒られるわ。

「たまにはクールダウンしてほしいんだよ」

「なあ、部活どうする?」

「無視かよ!」

「私行くよー、幽君は?」

「いや、行くけど……」

「俺も予定ないし、行こっかな」

 いや、予定あったら行かないのかよ。

「佐々岡は……」

「行くわよ、当たり前でしょ」

「わかった……」

 俺が入っている部活『掃除部』は、変わった人材が集まった部活だ。

 この四人が入ったのも運命だったのかもしれない。

 学校全体を掃除するのが主な活動内容だが、部室は校舎とは別の建物で、そこに行くまでに、ほとんどの部活動中の生徒とすれ違う。

 俺ら四人は学校の──

 いや、この三人は学校の有名人で、俺はある出来事のせいで三人を脅して従えているなんて言われている。

 だから、誰かとすれ違う度にありもしない噂が流れる。

「おい、またあいつだよ」

「あいつ、この前佐々岡さんに怒鳴ってたって……」

「今朝なんか、保健室の槙原先生襲ったって……」

「教室でも西澤に狼って言われてたぞ……」

 ……辛い、辛過ぎる。

 確かに佐々岡には怒鳴られた。

 洋子さんにも言葉責めにされた。

 愛菜は男子を狼だと思っている。

「俺のせいなのかな……」

「気にするなって、無視すればいいんだよ」

「そうだよ、みんな! 幽君は悪い子じゃないからね!」

「西澤さん、あんなこと言わされて、かわいそー……」

「あなた達、そういうことを言わな──」

「いいよ、誰も俺のいうことなんて信じないから」

「俺達は信じてるからな?」

「そうそう、幽君はいい子だからね~」

「ありがとな」

 佐々岡は……

「……なによ、信じるわよ」

「ありがと」

 相変わらずツンツンしてんな。

「ほら、早く行こ~!」

「おう」

 ──掃除部 入るときは元気よく挨拶

「なんか書いてあるな」

「幽気行ってみろよ」

「うん……こんに──」

「こ~んに~ちは~!」

「……」

「ドンマイ」

「おっ、来たな、ようこそ!掃除部へ!」

 この人は、清川隊喜、掃除部の顧問をしている。

 掃除部は、俺たちが入った年に先生が作った部活だ。

 顧問だが部長もやっている、もちろん掃除が大好きだ。

「部長、俺ら部員なんですけど」

「そんなことは関係ない!」

「そうだぞ幽君!」

「なんでお前も一緒になってんだよ」

「差し入れはないのか」

 いきなりそれかい!

「それ、部長が食べたいだけでしょ」

「よくわかったな、てことで、活動を始めるぞ!」

 いや、色々おかしいし……

「まだ全員揃ってない──」

「よし、準備するぞ」

「さっさと終わらせましょう」

「幽君、頑張ろうね」

「え、始めちゃうの? あと、なんでこういう時だけ息ぴったりなの?」

「じゃあ、みんな来るまで体操してよっか!」

「部長、今日は何周ですか」

「とりあえず十周だ、頑張ってこい!」

「ラジャー!」

「マジか……」

「ほら、西澤さんに置いていかれるわよ」

「幽気、行くぞ」

「はい……」

 掃除部とは、表向きは掃除をしているだけの暇な部活だが、活動内容は本格的だ。

 まずは準備運動。

 部長の気まぐれで外周十周以上。

 今日は、あの後二十周走った。

「なんで……みんな……疲れないの……」

「幽君、ちゃんと走んなきゃダメだよ~」

「そうよ、普段から運動を怠っているからこうなるのよ」

「幽気、たまには外に出ないと倒れるぞ」

「うるさいな……はあ……別に……いいじゃ……ねえ……か……」

「大丈夫? また保健室行く?」

「そうね、ついでに精神科にも行ってきたら?」

「もう行ったんじゃないのか?」

「お前ら……」

「よーし、終わったか、じゃあ二手に分かれて行ってこい!」

「はい……」

 次に、三時間で、一棟丸々。

「幽君、行こ」

 ん?

「……どうした?」

「へ?」

「なんか元気ないから」

「ううん、大丈夫」

 なんかあったのかな……

「部長のことか?」

「違うよ?」

「心配するな、ああ見えて、ていうか、あの調子だ、それに、頑張りすぎだ、なんて言ったら『お前に言われたくない!』って言われるぞ」

「だから違うって」

「じゃあなんだ、幼女との一線を越えたか?」

「それは今度やる」

 真面目な表情でなに言ってんだこいつ。

「絶対にやるなよ?」

「振り?」

「振りじゃねえよ!」

「相談があるの……」

「無視していきなり話すのかよ!」

「私ね……」

「今のも無視か……」

「好きな人が出来たの」

 幼女のことか。

「言っとくけどな、俺は浮気のアドバイスなんか──」

「男の子なの!」

 でき……ない……ぞ……

「……」

「違うクラスの人」

「……」

「私、こんなの初めてで、誰にも言えなくて、幽君なら聞いてくれると思ったの……」

「……」

「幽君?」

「……のか?」

「ん?」

「本当に男……なのか?」

「うん、ホント」

「そう……か……」

 なんだこれ……

 愛菜が男を好きになった、それだけのことだ。

 なのに、なんだこれ……

「そいつって、どんなやつだ?」

「うーん……かっこいい人……かな」

「そ、そうなのかー」

 嘘だろ、愛菜が、男子を、かっこいい?

「な、名前って──」

「ダメッ! 言わない!」

 誰なんだ……

 他クラスのかっこいい男子……

 駄目だ、同じクラスの秋以外思いつかねえ。

「じゃあ、いつからだ?」

「昨日」

「きのっ、昨日って、休みだったし、どこで、会ったんだ?」

「買い物してたら、ぶつかっちゃって」

 なにその漫画みたいな展開。

「ぶつかって怪我なかったか?」

「うん、カート走らせて遊んでたら、その人のお腹にドンッ!って」

 ご愁傷様です。

「でもね、何事もなかったかのようにトイレに駆け込んでったの」

 あったぞ、それは十分何かあったぞ。

「で、なんで好きになったんだよ」

 なんでトイレに駆け込んだ奴を好きになったかなんて聞けね~!

「あっ、そう、その後ね……」


 ───十分後


「……つまり、ぶつかったのに怒らず優しくしてくれた彼に恋をしたと」

 漫画だよな。

「それでね……告白したいの」

「おお、そうかそうか、告白……告白?」

「うん、そう」

 ……は、早くね?

「明日、頑張るね」

「明日、明日……あし、あた、明日……は?」

「よーし! 掃除するぞー!」

「おい! ちょっとまて!」

 その後は何も聞くことができなかった。

 聞こうとする度ごまかして、もう触れてほしくなさそうだった。

「あー、疲れたー!」

「……」

「どうした幽気」

「なにが?」

「いつもの軽快なツッコミがないぞ?」

 そんなのあったっけ……

 ……あったか。

「そうだな」

「もしかして、愛菜となんかあったか?」

「ちょっとな」

 本当はちょっとどころじゃないけど。

「なんだ、聞いてやるぞ」

「愛菜が男を好きになった」

「いや、それは普通のことだろ」

 そりゃそうだ。

「けど、昨日好きになって明日告白するって言ってるんだよ」

「なるほど、お前はそれが気に入らないと」

「気に入らない訳じゃないんだけど、それでいいのかなって」

「確かに、昨日の明日は早いかもな」

「それでさ、心配なんだよ愛菜が」

「まあ、女子専門だったもんな」

「男子に対してそういうこと言えるのかなって」

「お前はどう思ってるんだよ」

「俺は……」

 だめだ、答えられない。

 今まで愛菜は男子のことなんて気にしたことさえなかった。

 それが、いきなり好きな男ができた、なんて受け入れられない。

「そういう体験はした方がいい、でもその先が心配、どっちなんだよ」

「……」

 自分でもわかってる、矛盾している。

 でも、どうも腑に落ちない、昨日好きになって明日告る?

 いくらあいつでも、関係を築いてからの方がうまくいくとわかっているはずだ。

 もしかしたら、なにかあったんじゃないか?

 もしかしたら、その男に脅されて……

 やばい、変な想像が頭をよぎる。

「好きなんだろ、愛菜のこと」

 そうか、俺、愛菜のこと好きなんだ……

「は?」

「だってそうだろ、いつも愛菜のこと気にして、俺が小学生の頃に引っ越してきた時だって、自己紹介のときに愛菜、『わたし、狩元愛菜!』とか言ってたろ」

 そういえばそんなこともあった気がする……

 秋は、俺が小学三年生のときに引っ越してきた。

 頭はいいし、運動はできるし、女子にはモテモテだし、正直、なんだこいつって思った。

「って、いつの話してんだよ」

「今のはお前が勝手に頭ん中で語ったんだろ」

「メタ発言はやめろよ、面白くないぞ、ただでさえつまんないのに」

「それ、言ったらおしまいだろ」

「もうちょっとファンタジーな世界が良かった」

「知らないよ、どうにもなんないだろ」

 そうとは限らない。

「いけるかも」

「え?」

「現実逃避」

「なに言ってんだよ、流石に無理だって」

「俺のこと見くびってんだろ」

「そんなことないけど」

 ならいいよな。

「じゃあやるぞ」

「いいよ」

 明日には……

「ファンタジーな世界、理想でなくてもいいから、えーっと……なんだっけ?」

「はあ……学園物から、だろ」

「あ、そっか、よし、学園物から──ファンタジーワールドへ!」

「あっ、とりあえず所持金一万円で」

「界変!」

「転換!」

 カイヘンテンカン……ショウニン

 キーンコーンカーンコーン──ただの中二病発言にしか聞こえないかもしれない。

 だが、日を重ねるごとに……

 俺の日常は少し変わっている。

ここまで読んでくださってありがとうごさいました、昇蛙です。

初めての投稿で、内容が分かりにくい部分が多々あると思います。


これから変わる日常を 幽気はどう過ごしていくのか。

次変、

愛菜のトークが炸裂!

秋の正体も明かされる?


とりあえず、ねむいのでお休みなさい。



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