ワンちゃん
此処は何処だろうか。
黒いなぁ。
ひたすら黒い闇だ。
ピロリン♪
『あなたには新しい生を受ける権利があります。そこにいる対戦者とのゲームに勝ったら転生出来ます。なお、特に要望が無ければ負けた方の意識はデリートされます。』
犬が現れた。
耳が長いけれどドーベルマン種の様に見える。
犬やな。
思わずエセ関西弁になった。
え?犬ですか?
対戦者、犬?
対戦犬?
「?!」
いきなり犬が人の形になった。
黒い髪に色素の薄い緑の目の美丈夫だ。
「あんたが対戦者?」
「あぁその様だな」
「私は生きなくちゃいけないんです。死んだ親友の為にも」
「俺にも…理由がある」
まぁ突っ込んだら負けな感じだしおっぱじめるとしよう。
距離を詰めて体当たり。
3歳で会得した技。
最近よく使ってたから威力もまあまあだ、が、あっさり避けられ男の手が私の腕を掴み上げる。
すかさず私は奴に蹴りを入れ、腕を捻るように捻って拘束をはずして距離を置く。
「がぁ!!」
「い!?」
ボキィ
そいつはとても素早く、重い一撃だった。
乙女の顔に裏拳がクリーンヒット。
鼻が折れた。
気がする。
だが、おちおち倒れても居られない、スグに横に転がり、奴の踵落としを回避する。
そして男に飛び掛り鼻面を強く掴む。
パンパカパーン
男の姿が人から犬に変わる。
『ナゼ?』
理由なんて無い。
ただ直感が此処をつかめといった気がしたからだ。
最近よくこの直感に助けられてた。
ゲームのルールは知らないが、私の勝ちと認識されたようだ。
負けた事をを悟ったのかおとなしくなった。
犬が喋り出した。
『オレ、アンタ二負ケタ。アンタガ、ボス』
どうやらゲームは、私の勝ちで、犬は従ってくれるらしい。
さっきは私が勝ったが、気がつかなければ持久戦で負けていただろう。
つまり私と能力的に互角なのだ。
しかも、犬だから本来の姿は先程より格段に素早く、私など一瞬で噛み殺されてただろう。
「身体は私のモノだ」
『オレ、アンタノもの』
「身体の支配権は私にある」
『オレ、イラナイ』
「しかしお前の意識には価値がある」
『?』
首をコテんとすんな。
可愛い。
「よって私は1ヶ月に2度お前に主導権を渡す」
『イイノカ?』
「あぁ」
尻尾が振れている。
可愛い。
よくわからないけど、私の転生が決まった。
短かった?