②
階段が終わるまで駆け下りた先に、幼い子供たちが蠢いていた。
「ひっ」
予想もできなかったのでおののくが、よく見ると身体測定をしているようだ。
見渡すとここは小児科の階であるようなので納得する。
近くの椅子に座っていた、測定を待っているのであろう女の子たちにこの場所や状況を聞こうと声を掛けるが、そっぽを向かれてしまう。
「ふん。しらないもん。」
私がなにか悪いことをしたのだろうか。
困った私は手当たり次第に幼児たちに声をかけていくと、二つ結びにした静かな女の子がおずおずと話を聞いてくれた。
不安で満ちていた胸を撫でおろし、しゃがんで目線を下げて質問を投げる。
「ねぇ、ここがどこだかわかる?」
「あ、あ、あの。病院、高くて、灰色町の、」
彼女が戸惑いながら細く言葉を繋いでいこうとする。
大きな目が更に開かれつたない口調で説明してくれる、はずだったのだがその声は消されてしまった。
「あ、いた!おい!」
急に肩を後ろからつかまれ体勢が崩れる。
そこに立っていたのは先ほど階段ですれ違った教諭の一人だった。
「先生!?」
確か彼は英語科担当だったはず。小柄で細身な身長な上、胴の方が長さの比率を占めている特徴的な教諭だ。
その彼に腕をつかまれ、そのままどこかに連行させられてしまう。
なにがなんだかわからない私は、同じように呆然としている幼い彼女と視線を交わしていた。