①
エレベーターが下へ下へを降りていく。
誰だかわからない”皆”と共に降下していく私はひねくれたもので、皆と同じ階で降りなかった。
ドアを跨ぐと目の前に数人の医者らしき人物と遭遇した。
私が姿を現した瞬間、お医者様殿たちは目を訝しげに細めた。
「どこの子なんだろうね?」
「さあ。」
どこかの病院の関係者だけのみ入ることができる階のようで、その無機質で淡々とした空気に居心地の悪さを感じる。
いてもたってもいられなくてエレベーターが来るのを待たずに階段を探す。
幸いすぐそこに階段の絵が描かれたドアがあったのですぐさま飛びつき、ドアノブをひねる。
相も変わらず無機質な空間は広がり続けていて、階を示す明かりだけが強く光っていた。
階段を駆け下りていくとなんと、階段が途中からぽっかりとなくなっていた。
よくよく周りを見渡すとほとんどの階段が途中までしか繋がっておらず、とぎれとぎれに螺旋した鉄骨たちはまるでオブジェのような空間だった。
なぜ今まで気づかなかったのか?
しかし踊り場が階段のない空間を挟んで存在していたので、降りられないことはない。
飛び降りながら足を進めると、下の階から騒がしい足音が響いてきた。
「いた?」
「いない。」
「私はこの階を。」
そんな会話も一緒についてきた。
構わず降りていると馴染んだ学校教諭達が皆険しい表情で階段を駆け上がっていた。
よく上れるなあ、と感心して突っ立って、声でもかけようかと悩んでいると先生殿達は私には気づかないようでそのまま通り過ぎてしまった。
なんだか薄気味悪いものを感じ、私はそのまま下へを歩む。
上から聞こえる声は
「いた?」
「いない。」
「あの階は。」
相も変わらない。