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ウズメ異伝  作者: 東雲昴
3/3

真実

柾弥は語りだす。彼の祖先と星蘭池の関わりを。

それは、個人の力ではどうしようもない、時代の大きな流れが原因だった。

「すいません。遅くなりました!資料を探すのに手間取ってしまって」

足音を響かせ、柾弥が居間にやってきた。

その手には巻物や古めかしい綴本が握られていた。

柾弥はそれらをテーブルの上に置き、まず始めに巻物を手に取った。

「これは守川家の家系図です。私は十五代目にあたります」

巻物を広げ、柾弥は十五代と書かれた場所に指を指す。そこには確かに「守川柾弥」と書かれていた。

「初代は弥七郎。各地を巡り、動物を使った見世物で生計をたてていたそうです」

「弥七郎…」

白い蜘蛛の記憶にあった名に、悠子は反応した。

次に柾弥は綴本を取り出し、頁を開く。そこには流麗に書かれた文字の海が踊っていた。

「ここに、弥七郎のことと、この星蘭神社が造られた経緯が書かれています。要約するとこうです」

柾弥は、一度息を吹い、小さく吐き出すと、弥七郎の物語を語り始めた。


光凛35年ー今から五百年前のこと、弥七郎は、母を幼くして亡くし、父と友人夫婦とで動物を使った見世物をして生活していた。

彼が十七の頃だった。

この頃、飢饉や凶作のために米や物の価格は沸騰し、幕府の財政は逼迫していた。

そのため、幕府は必要のない金の出入りを取締り、質素倹約を掲げた。

具体的にはこうだった。

大奥内で華美な着物を買ってはならない。

武士は節約し、質素に暮らすこと。

吉原を縮小し、場所も限定する。

歌舞伎の舞台を減らす。

浮世絵師は人の購買意欲を与えるような絵を書いてはならない。

流しの芸人や一座は往来での見世物を禁ずる。

このお触れは各地に配られ、違反すれば番所に突き出され、牢屋に入れられた。


弥七郎達は家族のように暮らしていた動物達を安楽死させ、芸人を止めた。

友人夫婦は弥七郎の父の伝手で、小料理屋で働き、弥七郎と父親は宿屋の従業員として働いた。

もともと人を喜ばせることが好きな弥七郎は、食事の盆に織り鶴や色紙で季節の物を置き、彩りを添えた。父の弥吉は下働きの少年や少女の世話を進んで引き受けた。

彼らの真面目な働きぶりが評価され、弥七郎は宿屋の娘と結婚し、その宿屋を継ぐことになった。

弥七郎は、子供にも恵まれ、幸せな生活を送っていた。だが、その生活も長くは続かなかった。

娘が十歳の時、義理の父と実の父を相次いで亡くし、その年の冬、火事が起き、弥七郎の経営する宿屋も消失した。そして、最愛の娘も失ってしまった。

娘を失ったことで、妻は精神を病み、二年後、息を引き取った。

全てを失い、途方にくれた弥七郎を、娘と妻を看取り、墓を用意してくれた寺の住職が見かね、弥七郎を住み込みで住まわせてくれた。

ある日、住職に使いを頼まれた弥七郎は、どこか懐かしい風景と出会った。

そこは、彼が十七の時、彼の相棒であった蜘蛛ー星蘭を置いていった池だった。


星蘭を置いていってから、すでに十三年の歳月が経っていた。

弥七郎は池の周辺を見て回る。

その時、茂みの中で弥七郎の目に何かが光っているのが見えた。

弥七郎はそれに引き寄せられるように近づく。

夕日の光を受け、きらきらと輝いていたのは何本も重ねられた蜘蛛の糸だった。

弥七郎は息を飲んだ。

それは、弥七郎が星蘭に教えた美人絵だった。

美人絵だけではない。動物、歌舞伎絵。弥七郎が星蘭に教えた物が茂みにいくつもできている。

十三年も経ったのがまるで信じられないくらい、ほつれも破れた跡もない。まるで、蜘蛛の糸だけ時間が止まったかのようだった。

「……あ、あぁっ!」

弥七郎は、崩れ落ちるように膝を折った。

六年前の約束を今更のように思い出す。

『生活が安定したら会いにくる』。

だが、日々の忙しさにかまけ、星蘭のことを思い出すこともなくなっていった。

蜘蛛の寿命は長くて七年。当時の星蘭の寿命は、一年生きられるかどうかだっただろう。

そのなかで、星蘭は待っていてくれたのだ。たった独りで。

そして死んでいったのだ。

「すまないっ!星蘭!本当にすまないっ!」

涙が零れそうになるが、弥七郎は耐えた。

涙を流し、星蘭に許しを得ようとする自分自身を恥じたからだ。

弥七郎は自分の愚かさを憎みながら、日が沈むまで星蘭に謝り続けた。



弥七郎は、寺で働きながら、時間が空いた時に度々池を訪れた。

六年前に利用していた宿ー「安寧屋」は未だ健在だった。

宿の主人が宿の前を掃除しているのを横目に見ながら、弥七郎は池に向かおうとする。

その時、主人から声をかけられた。

「旦那、ちょっといいかね」

弥七郎が立ち止まると、主人が言った。

「またあの池に行くのかね?」

「あぁ、そのつもりだ」

弥七郎が頷くと、主人は眉をしかめ、声を潜めた。

「朝方、あの池に手足が四本浮かんでいたそうだ。死人も下手人も探している最中だというし、行かないほうがいい」

弥七郎は目を丸くし、主人の真剣な眼差しを見て、池に行くのを断念した。

この事件を番所は何ヶ月もかけて調査をしたが、結局、死人と下手人は分からないままだった。


だが、数年ごとにこの池から死人が出た。そのどれもが手や足だけのもの、首だけがないものなど様々だった。いずれも何か巨大なものに食いちぎられたような跡を残していた。

それが七人目となった時、番所は、自分たちの力ではどうにもならない何か別のものが関与しているのではないかと考え、猿田彦の巫子のいる出雲と鈿女の巫子がいる高千穂まで出向き、調査を依頼したが、すげなく断られてしまった。

仕方がなく、番所は民間の陰陽師に頼むことにした。

陰陽師は、池の気配を探るやいなや顔を真っ青にさせ、「この池には妖がいる。だが、私の力で滅することはできない。しかし、結界を張って誰も入らないようにすることはできる」と言い、池の周囲に結界を張った。

その結界のおかげで、池から死人が出ることはなくなったが、池での噂があるために安寧屋は寂れていった。

やがて、一人も客が来なくなり、主人は宿を畳む決意をした。

結界のために入ることができなくなっても、池の周辺を訪れていた弥七郎は、安寧屋を愛おしむように一撫でする主人の姿を見た。

弥七郎が、主人を見たのはそれが最後だった。

人づてに聞いた話では故郷に帰ったという。

安寧屋の周辺は活気もなく、ただ、人が往来するだけの道になった。

夜になれば、一面の闇となり、旅人は足早に通り過ぎる。更に人は少なくなった。

困ったのは、村人達だった。村には安寧屋の他に小さいながらも宿屋がいくつかあり、旅人が落とす金と自給している野菜や米で日々の暮らしを立てていた。

このままでは暮らしが成り立たなくなるかもしれない。そう考えた村人達は金を出し合い、安寧屋があった場所に神社を建てることにした。厄を祓う神直昆神かみなおびのかみ大直昆神おおなおびのかみを祀り、旅人が訪れない状況を打破しようとした。

大工に神社を作ってもらった村人たちは、神社の名をどうするか考えた。様々な案が出たが、なかなか決まらない。皆、自分の考えた名前になれば、神々の恩恵がより己の所にくると考えたのだ。

村人の考えを読んだ村長は、村のそばにある寺―輪音寺りんねじの住職に名前を考えてもらうことにした。輪音寺は、弥七郎が寝起きし、働いている場所でもあった。


神社の名前を寺の住職に決めてもらうなど荒唐無稽な話だったが、村人達を説得できるほどの人物を村長は知らなかった。

輪音寺の住職ー海導は、昔は西の国で知らない者はいないというほどの武人であったという。どういう経緯で輪音寺の住職になったかはさだかではないが、眼光鋭い悪人顔の割に、人懐こく、大らかな男だった。また、酒も飲み、賭け事もする生臭坊主で、こんな者が住職で大丈夫かと不安を覚えたが、仕事は真面目にきっちりと行っている。人は見た目で判断してはいけないという言葉を地でいっている男だった。

また、かつて、人買いに浚われた村の子らをたった一人で助けに行き、人買い達を踏んじばって簀巻すまきにして、彼らの所業を書いた半紙を懐に突っ込ませ、町奉行に捨て置いたこともあった。

そのため、子供達を救ってくれた海導を慕う者は多く、今では、この阿祁斗あぎと村の村民全てが海導を尊敬していた。


村長は、さっそく輪音寺を訪れた。海導に訪れた理由わけを話すと、海導は笑って快く引き受けてくれた。三日後に来ると約束をして、村長は足取りも軽く輪音寺を後にした。


「弥七郎、ちょっといいか?」

回廊の拭き掃除をしていた弥七郎は、海導に呼び止められ、振り返った。

「何ですか?」

「お前に話がある。掃除は後でいいから俺の部屋に来い」

海導はそう言って、そのままくるりと体を反転させ、歩きだしてしまった。

弥七郎は、雑巾を水の張った桶の縁に引っ掛けると、慌てて海導を追った。


締め切っていた障子を開け、部屋に入った海導は、鶴と亀が描かれた掛け軸を背にして胡坐をかいた。弥七郎は海導と向かい合う形で畳の上に腰を下ろす。

「それでお話というのは?」

口火を切ったのは、弥七郎だった。海導の部屋に通されるくらいだから、何か個人的なものだろう。そのほとんどは、酒を買ってきてほしいというものだった。今度もそれかと半ば呆れながら、海導を見た。

「あぁ。昨日、阿祁斗村の村長から相談を受けてな。村の連中が金を出し合って、神社を作ったそうだ。その神社の名前を考えてほしいと言ってきた。そこで、だ。俺はお前に考えてほしいと思っている」

さらりと言われ、弥七郎の脳に海導の言葉が深く浸透するのに、いくばくかの時を要した。

「は、私にですか?」

言葉の意味を理解した弥七郎は、目を丸くし、うろたえた。

「どうして私なんですか?頼まれたのは海導様のほうでしょう?」

「まぁ、俺が考えてもいいが、お前の方が適任だと思ったんだ」

「適任、ですか?」

弥七郎は訝しげに海導を見る。海導は真剣な目で弥七郎を見た。

「お前、あの村の方にちょくちょく行っているだろ?というか、池の辺りに」

「なぜ、それを・・・」

池に行っていることは誰にもいっていない。

驚いて目を見開く弥七郎に海導は苦笑する。

「たまたまだよ。あの村にはいい酒が飲める飯屋があってな。よく食いに来るんだ。その時、お前の姿を見かけた」

海導は続ける。

「ふさぎこみまくっていたお前が外に出るほど活動的になって、正直ほっとしていた。けど、今度は別の意味でろくでもないことになっている」

「ろくでもない・・・」

「飯は少ししか食べない。いつも目の下に隈がある。それなのに仕事は徹底的にやる。苦行僧じゃねぇんだから、しっかり食って寝ろ。過去を忘れろとは言わねぇ。だが、過去にばかりとらわれているとお前のこころが壊れるぞ」

「・・・・・」

俯く弥七郎に海導は言った。

「区切りをつけろ。今、お前がどこにいるかを思い出せ。死者は責めもしなければ恨みもせん。そう感じているのなら、それはお前がお前自身を許せないだけだ」

弾かれたように弥七郎は顔を上げ、海導をまじまじと見つめた。目元を和らげ、海導は告げた。

「お前のような目をした人間を俺は大勢見てきた。だから分かる」

「・・・久しぶりに聞きました。あなたの説法を」

「止せよ。そんなありがたいもんじゃねぇよ。じゃ、名前の件、頼むぞ。三日後には村長が来るからな」

「えぇ?本気ですか!?」

叫ぶ弥七郎に、海導はにやりと笑った。

「あぁ、本気も本気だ。いい名を考えてくれよ」

海導の顔を見て、気が変わることはないと悟った弥七郎は、しぶしぶ頷いた。

「・・・わかりました」

「おう、楽しみに待ってるぞ」

海導は、腰を上げ、手をひらひらと振ると、部屋を出ていった。


弥七郎は膝の上で、両の拳をぎゅっと握りしめた。

「区切りをつける・・・」

我が子を助けられなかったこと、妻の心を救うことができなかったこと、そして星蘭を置き去りにしたこと。それがどうにもならないことだったとしても、弥七郎は、自分が許せなかった。それに、海導に言われたからと言って考えを改めることができるほどできていない。

あの池のそばにできた神社に名をつけることで区切りをつけることができるかどうかは分からない。

だが、自分を責めることに疲れを感じ始めていたのも事実だった。

「名前か」

名をつけるなど、星蘭と娘につけた時以来だ。

懐かしさを覚えながら、弥七郎は部屋を出て、再び掃除を始めるべく歩き出した。


「せいらん?」

二日目の夜、弥七郎は海導に神社の名を告げた。向かい合わせに座る海導は、その名を繰り返す。

「はい。星の蘭と書いて、星蘭と」

弥七郎は話した。昔、家族のように暮した蜘蛛がおり、その名が星蘭だったということ。蜘蛛は益虫でもあり、厄を食べてくれるようその名をつけてみたこと。また、星蘭を独りきりにしてしまったことへの罪滅ぼしの意味もあった。

「ふ~ん。いいんじゃないか?空の星と地に咲く花。天と地にあるものを冠した名だ。それを結ぶのがあの神社なんて壮大じゃねぇか」

「そこまで考えたわけではないんですが。あの、いいんですか?この名前で。かなり私的なものが入ってますが」

「ん?あぁ、かまわねぇよ。俺はお前の考えた名にすると決めていたんだ。天と地にあるものって説明しとけば、村長も村人も納得するだろうからな」

「はぁ・・・」

「そんな顔をする奴があるか。村のことを思わなかったわけじゃねえだろう。自信を持て」

「・・・はい」

次の朝、海導は訪れた村長に名を伝えた。村長は嬉しそうに微笑み、礼を言って去っていった。

村長は村人たちを集め、名を告げた。大きな反対もなく、神社の名は「星蘭」となった。


やがて、神社、または村人達の力か、阿祁斗(あぎと)村には徐々に旅人が集まり、往来も活気に溢れるようになった。村人は神社に感謝し、交代で行う境内の掃除も念入りに行った。弥七郎も名前をつけたこともあり、寺の仕事の合間に掃除を手伝うようになった。

数年が経ち、村人達は神社を保っていけるよう継いでくれる人間を選ぼうと考えた。だが、村人たちは家業もあり、なかなか手が上がらない。村長は再び海導に頼んだ。海導は弥七郎に勧めた。弥七郎は、これも何かの縁と思い、承諾した。晩年は、養子を迎え、その子を神社の後継者とした。


「・・・・以上が、ここに書かれている話の全てです」

柾弥は本を閉じた。

「あんたはその養子の子孫ってことか」

「えぇ」

達騎の言葉に柾弥は頷く。

「弥七郎の代じゃ、あの池は神社の敷地じゃなかったようだな」

「そうですね。養子となった太一という人の代でそうなったと書かれています。その時、池に妖が住んでいると伝えられたそうです。太一は、その池を星蘭池と名付けました」

「そういうことか」

達騎は頷き、同じように柾弥の話を聞いている藤花をちらりと見てから、ふんと鼻を鳴らした。

「ま、家族同然だった蜘蛛が七人もの人間を喰った妖だったと知らなかったのは、不幸中の幸いだったな」

「そうね・・・。でも、星蘭が弥七郎さんに会えることはもう二度とないのね」

達騎の言葉に悠子は同意しながら、星蘭を思った。生まれ変われても、姿かたちは前世とは別だ。弥七郎は星蘭の死に目に会えないまま死んだとこになる。悠子の力で、弥七郎の姿を星蘭に見せたが、あれは弥七郎本人ではない。

悠子が寂しげに呟くと、達騎が言った。その表情は厳しい。

「人を喰った妖には、お前の力で見せただけでも僥倖だ。気にする必要なんてない」

「・・・・」

有無を言わさない達騎に悠子は複雑な表情を浮かべた。

そこに藤花が割って入った。

「ちょっといいかしら?あの妖もあの世―高天原に行くの?」

不安げな表情を浮かべる藤花に、達騎は首を横に振った。

「いや、悪いことをした奴や妖は根之堅洲国に落ちる。そいつらを荒御魂と呼ぶんだが、荒御魂は己の罪を認めて、心を入れ替えない限り、生まれ変わることはできない。だが、すぐに人や妖になれるわけじゃない。植物、虫、動物、人または妖の順に生まれ変わる。そういう決まりだ」

「罪を認めて、心を入れ替えなかったらどうなるの?」

「生まれ変わることはできず、魂が摩耗するまで根で活き続ける」

すっぱりと言い切る達騎に、藤花は安堵するような息を吐いた。


達騎と藤花の話が終わったのを見計らって、悠子は柾弥の方に顔を向けた。

悠子は気になっていた。星蘭神社にあった犬、猿、蛇の飾りを。あれは、もしかしたら弥七郎と一緒に暮らしていた動物達なのではないかと思ったのだ。

「あの、守川さん」

「はい、何でしょう?」

「星蘭神社に犬や猿、蛇の飾りがあったんですけれど、あれも昔からあるものなんですか?」

「あー、えぇ、そうですね。あの飾りは、確か弥七郎が自費で作ってもらったものだそうです」

「・・・そうですか」

柾弥と達騎が不思議そうに悠子を見る。悠子は、星蘭の記憶の中で見た弥七郎の家族のことを話した。

「弥七郎さんは、星蘭と同じ、家族同然だった彼らのことを忘れることはできなかったんでしょう」

柾弥は納得したように何度も頷いた。

「そうですか。あの飾りにはそういう意味があったんですか。縁起が良いものだと思っていただけだったので。ありがとう。教えてくれてよかった」

そう言って、柾弥は微笑んだ。

「あら、もうお話していたんですか?」

その時、玲子が人数分の茶と湯気のたったトウモロコシを盆に載せ、現れた。

「一区切りついたよ。ところでどうしたんだ?そのトウモロコシ」

「さっきお隣の坂下さんが来て、おすそ分けをしてくれたのよ。せっかくだから皆さんもどうぞ」

そう言って、玲子は麦茶の入ったコップと大皿に盛ったトウモロコシをテーブルに置いた。

「それじゃ、遠慮なく」

達騎が手に取る。

「これはうまそうじゃのう」

八雲が舌なめずりをしながら、トウモロコシを取った。

「・・・・いただきます」

悠子もそっと手に取った。藤花は手を伸ばそうとしたが、スイカのことを思い出したのか、すぐに手を引っ込めた。


「ただいまもどりましたー」

その時だった。真白が庭に降り立ち、縁側に降りて来たのだ。その毛皮は、ふわふわに乾いていた。八雲が網戸を開け、真白を招き入れる。そして、ぽつんと置かれた真白の分のスイカを指さした。

「おう。お前の分のスイカもあるぞ」

その言葉を聞き、真白の目が輝いた。

「え、ほんとうですか?ありがとうございます。いただきますー」

言うやいなや、真白は皮ごとスイカを食べた。

「お前、皮ごと食べるのかよ・・・」

「ん?おいひいですよー」

ばりばりと音をたて、もぐもぐと口を動かす真白に達騎は呆れた表情を見せた。

「トウモロコシもあるから食べるといい」

トウモロコシをすすめる八雲に真白は尻尾を振り、言った。

「ふぁーい」


トウモロコシを食べ終え、落ち着いた一同は話も済んだから、と帰ることにした。

柾弥は玲子に言って、達騎の制服と悠子の緋雷ひらい装束を持ってくるように頼んだ。

玲子から乾いた服を受け取った二人は、それぞれ別の場所で着替え、達騎は甚平を、悠子は浴衣を玲子に返した。悠子は、浴衣を洗って返しそうかと聞いたが、玲子はその気持ちだけで十分だと笑って首を振った。


「草壁くん、私、星蘭を土に還して上げたいんだけど、手伝ってくれる?」

着替えを終え、一息ついた頃合いを見計らい、悠子は達騎に言った。

星蘭の魂は根に行ったが、その体は池に放置されたままだ。そのままでは忍びないと思う。また、結界が消えたあの池に視える人間が入ってしまうとも限らない。そんなことになれば、騒ぎが起きてしまうかもしれない。

「あぁ、いいぜ」

すんなりと了承してくれた達騎に、悠子は少しほっとする。人を襲う妖を人一倍嫌悪する彼だが、魂のない妖の体をそのままにするほどではないらしい。

「よければ、私も行かせてもらえませんか」

柾弥が口を開いた。

「神社を預かる宮司として、見届けたいのです」

その眼差しは真剣だった。

「私は別に構いません」

「俺も別にいいけど」

「ありがとうございます」

頷く二人に、柾弥は嬉しそうに頭を下げた。


「色々とお世話になりました。ありがとうございました」

玄関まで見送ってくれるという玲子に悠子は頭を下げた。達騎もそれに倣う。

「いえいえ、こちらこそ。あなた達のおかげで助かりました」

玲子も頭を下げる。

「何かありましたら遠慮なくおっしゃってください。これ、住所と電話番号です」

そう言って、玲子は一枚のメモを悠子に渡した。

「ありがとうごさいます」

悠子は礼を言い、メモを袖の中に入れた。


柾弥を伴い、悠子達は池へ向かった。

池から吹き出した水はあらかた収まり、周囲の草原は水溜まりとなっていた。

水溜まりをよけながら、悠子達は星蘭の遺骸にたどり着いた。

達騎が槍を出したその時、藤花が遺骸の前に進み出た。そして、掌でその遺骸を勢いよく叩きつけた。

「どうして、食べたのよ!どうして隆彦さんを襲ったのよ!」

怒りに満ちた藤花の言葉に、悠子は息を呑んだ。

なぜ、考えられなかったのだろう。いや、朧気に浮かんではいたが、藤花がすんなりと納得したために、「星蘭に怒りを向ける」というごく自然な考えが抜けていた。

藤花にとって、星蘭は愛する人を奪った憎むべき相手だ。怒りを露わにするのは当然だった。

藤花は何度も叩く。しかし、星蘭が反応することはない。ただ藤花が出す音だけが池に響き割った。

「はぁ、はぁ、はぁ」

両手を赤くさせ、藤花は肩で息をしていた。

「藤花さん・・・」

悠子はかける言葉を持っていなかった。どんな言葉を言っても、二人が引き剥がされた事実は変わらない。

「気は済んだか?」

達騎の静かな声が藤花の背中にかけられた。藤花は睨むように達騎を見た。

「藤花、お前に聞きたいことがある。なぜ、池の名が星蘭だと知っていた?」

藤花の肩がぴくりと上がった。達騎は続ける。

「名がついたのは、この池に結界が張られた後だ。お前は隆彦とよく行ったと言うが、それだと辻褄が合わない。どういうことだ?」

藤花は何も言わない。ただ、達騎を挑むように見つめるだけだった。反対に、達騎は凪いだ海のような静けさで藤花を見る。

先に視線を外したのは、藤花の方だった。大きく息を吐き、息を整えた藤花は話し始めた。

「隆彦さんが京に行ってから、しばらくはあの榊の樹で待っていたわ。でも、三年経っても帰ってこないから、私も京に行こうと思ったの」

あの時代に、女性が一人旅をするのは並大抵のことではない。それだけ隆彦に会いたかったのだろう。

「お金と最低限の荷物だけを持って、京に向かったわ。その時、この池の事を思い出したの」

藤花は池に視線を向ける。しかし、その焦点はどこか遠くにあった。

「・・・・初めの頃は隆彦さんから手紙が来ていたけど、しばらく経って手紙も来なくなってしまった。寂しかった。隆彦さんに愛想をつかされたんじゃないかしら、とかそんなことばかり考えていたわ。いつまにか、隆彦さんを思い出すのも辛くなっていた。この池は逢引する時によく来ていたの。隆彦さんのことが好きでたまらなかった気持ちを思い出したかった。好きな人を嫌いになんかなりたくなかった」

そして、藤花は語りだした。


藤花は池を見渡していた。四年前に見た時と同じ、静かで水の綺麗な池だった。

もうすぐ日が暮れる。空には宵闇が迫り、一番星が銀色に輝くのが藤花の目に映った。それは、池の水面にも映り、幻想的な雰囲気を作り出している。

だが、それだけだった。池を見つめても、隆彦の気持ちがひどく遠くに感じられた。

藤花は池を出て、村と繋がる通りに出た。

隆彦と二人で来ていた時には、この辺りも活気に満ちていたが、今は人通りがほとんどない。日中、通りすがった村人に聞いても、皆何かを怖れるように口を閉ざしてしまう。

ざわりと風が吹き、おどろおどろしい雰囲気が藤花を取り囲んだ。

(帰ろう・・・)

背筋が寒くなり、藤花は今夜の宿を取るために村へ急いだ。池の茂みを抜け、通りへ出た。

通りといっても、そこに明かりはなく、誰も経営されていない宿屋だけが道の脇にぽつんとあった。歩を進めようと足を一歩踏み出したその時、低く錆びた声が藤花の背後にかけられた。

「こんなところで何をしているんだい、お嬢ちゃん」

振り向けば、髭を生やした粗野な風貌の男がいた。男の後ろには、のっぺりとした顔に似合わない大柄な体つきをした男が控えている。

髭の男がにやにやと下卑た笑みを浮かべているのを見て、嫌な予感を感じた藤花は、思わず後ずさった。

「別に…。散歩をしていただけです」

「そうかい。でも、もう暗いから早く帰ったほうがいい。おじさん達が一緒についていってあげようか」

髭の男は親切そうに言葉を投げる。すると、背後に控えていた大柄の男が髭の男の前に出た。

「いえ、お心遣いありがとうございます。でも大丈夫ですから」

おざなりに頭を下げ、去ろうとする藤花の腕を大柄の男が掴んだ。

「いや、離してください!!」

腕を振り切ろうとするが、男の手はびくともしない。

康造こうぞう、捕まえとけよ。だが、怪我はさせるな。金が減る」

「へい、峨助がすけさん」

康造は頷き、今度は両手で藤花の手首を掴んだ。

「いや!誰か、誰か、助けて!」

叫ぶ藤花に峨助は言った。

「叫んだって誰も来ねえよ。この辺りの連中、あの池にバケモンが出たってんで怖がって、夜なんざ誰も出てきやしねぇ。ま、だから俺たちは悠々と商売ができるんだけどな」

舌なめずりをし、嬉々とする峨助に藤花は青ざめる。このままだと自分の身が危ない。

藤花は、康造の腕に勢いよく噛みついた。

「ぎゃっ!」

康造が悲鳴を上げ、藤花を離す。その隙をつき、藤花は走り出そうとする。

「うぐっ!」

だが、背後から口を塞がれ、右腕を締め上げられる。

「たくっ、手間をかけさせるな。これでも優しくしてやってるんだぜ」

吐息がかかるほどの至近距離で峨助が囁く。

藤花は身を捩るが、右腕をさらに締め上げられ、息が止まる。

「はぁ、しょうがねぇ。優しくするのは止めだ。いいか。これから宿に行く。騒いだり、暴れたりしたら、手足の二、三本は折るからな」

低い声音で峨助が呟く。

「動けないほうが楽しめるって変わった奴もいるらしいが、運ぶのが面倒くせぇ。お前だってそんなのは嫌だろう?」

峨助が藤花の口を塞いだ指で頬をねっとりと撫で上げる。その感触に藤花は鳥肌がたった。見上げれば、峨助はくくっと喉の奥で笑っている。だが、その目は笑っていなかった。

「じゃあ、暴れてくれるなよ?」

念を押す峨助に藤花は小さく頷くほかなかった。

そして、峨助は未だ痛みで呻いている康造の拗ねを蹴り上げた。

康造がまた悲鳴を上げる。

「いつまでヒィヒィ喚いてやがる!さっさと宿に行くぞ!」


青白い顔の藤花を伴い、峨助と康造は一つの宿に入った。

峨助は康造を自分の弟、藤花を娘だと紹介し、部屋を頼んだ。

宿の主は、峨助と康造の風貌に不信を抱いたように眉を上げたが、何も言わず、部屋を提供した。

藤花はできることなら、大声で叫んで助けてもらいたかったが、峨助の言葉に身を竦ませてしまい、峨助に促されるまま、部屋に入った。

藤花は部屋の隅に縮こまるように座る。

峨助に締め上げられた腕が痛んだ。

(どうしてこんな事になってしまったんだろう)

池に行かなければ、今頃は一人で宿にいたはずだ。

女が一人、旅になど出たから罰が当たったのか。

峨助のことも怖かったが、これから自分がどうなるのかを考えただけでも恐ろしかった。峨助達が人買いであることは明白だった。農村では、幼い女の子が誘拐され、女郎屋や吉原に売られることもあるという。

自分もそうなってしまうのだろうか。

藤花は、口煩い両親や気は弱いが仕事のできる番頭、しっかり者の店の従業員達を思い浮かべた。そして、自分を認め、愛してくれた隆彦のことを。

藤花の眦から涙が零れ落ちる。一度流してしまえば、後は止まらなかった。

「……っく、ひっ、うっ」

口を手で覆い、嗚咽を殺しながら藤花は泣いた。


夜も更け、月の光が藤花達のいる部屋を照らした。

藤花の手首には、逃げられないよう紐が巻かれており、部屋の柱に括りつけられていた。

藤花の両隣を峨助と康造が占めている。交代で藤花を見張ることにしたらしく、今は康造が起き、峨助が寝息をたてていた。


隆彦が京に行くと告げたのも、月が綺麗な静かな夜だった。

藤花の父が営む呉服屋に奉公に来て一年。従業員の中では新人の隆彦は、いつものように暖簾を下げ、店閉まいをした店内を掃除していた。その背中を見るのが藤花は好きだった。

「俺、京に行くよ」

「え?」

ぽつりと告げられた言葉に、思わず藤花は聞き返す。

「旦那様に言われたんだ。お前は筋がいい。京に行って、もっと勉強してみないかって」

「父上が…」

藤花は目を見開く。

「勝手に決めて悪い。でも、こんな機会はめったにない。それに…」

隆彦は微かに頬を赤く染めながら、藤花に真剣な眼差しを向けた。

「旦那様に認められれば、お前と一緒になれる」

「隆彦さん…」

藤花の心中は複雑だった。隆彦が父に期待されているのは嬉しいが、離れ離れになってしまうのは辛い。それがたとえ自分のためだとしても。

藤花の思いに気づいたのか、隆彦が苦しげに笑う。

「すまない。でも、このままでいても、先は見えないから。お前には辛い思いをさせるけど、なるべく早く帰ってくる。だから……っ!」

藤花は隆彦の言葉を遮るように、その胸の中に飛び込んだ。そして、大きく息を吸い、言った。

「……いってらっしゃい。気をつけて」

本当は京に行ってなどほしくはない。だが、隆彦の目は本気だった。穏やかな物言いとは反対に、隆彦は一度決めた事はやり通す性格だった。それは、藤花がだだをこね、泣いたとしても変わらないだろう。そういう隆彦たがら、藤花は好きになったのだ。

背中に隆彦の手が触れる。そして、苦しいくらいに抱き締められた。

「あぁ、行ってくる」


藤花は閉じていた瞼をゆっくりと開けた。

月明かりを見ながら、いつの間にか眠ってしまったらしい。

両脇を人買いに固められ、不安定な体勢でいたというのによく眠れたものだ。我ながら己の図太さにあきれてしまう。

久しぶりに隆彦の夢を見た。家にいた時は、思い出すだけで苦しかったが、今は懐かくいとおしい。

(そうだ。こんなところにいる場合じゃない。家に帰らなくちゃ。帰って隆彦さんを待とう)

藤花は唇をきゅっと結び、康造を見た。康造は首を上げ下げし、船を漕いでいた。

「……康造さん、康造さん」

「んあ、なんだぁ?」声を少し大きめに出すと、康造が起きた。

「あの、厠に行きたいんですけど、これ、外してくれませんか?」

「…あぁ、いいぞぉ」寝ぼけているのか、それとも元々の性格なのか、康造は疑うこともせず、藤花から紐を外した。そして、再び寝入ってしまった。

(これなら、ここを出られる!)

藤花は急く足を慎重に踏み出し、襖を開け、部屋を出た。

渡り廊下の隅に鎮座した行灯の明かりが周囲の様子を浮かび上がらせる。

藤花の右側には、手すりと階段が見えた。

藤花は足音をたてないように素早く歩き、階段に足をかけた。

ギィギィと木の軋む音が響く。

四段目に足をかけたその時、バキリと音をたて段が外れた。

「え?」

藤花の体は空を舞い、重力に従って落下した。

床に叩きつけられ、凄まじい衝撃が藤花の体を突き抜けた。

(隆彦さん…)

藤花の脳裏に浮かんだのは、隆彦の顔だった。


藤花が気がついた時、最初に目にしたのは事切れた自分の体だった。

藤花の回りには、宿の主人と峨助と康造がいた。峨助は藤花の体を抱え、主人に食ってかかっていた。主人は平謝りし、藤花の葬儀も全部こちらで取り計ると言った。

唾を飛ばし、怒りを露わにする峨助、茫然とする康造、顔を真っ青にさせ、頭を下げる宿の主人を藤花はぼんやりと眺めていた。


宿の主人が藤花の葬儀をとり行い、輪音寺の住職だという、海導と呼ばれる男が経を唱えた。

自分の体が燃え、その煙が青空に昇っていくのを藤花はただ見つめていた。

葬儀が終わると、面倒なことになる前にと人買いの二人は姿を消した。

藤花の墓は輪音寺に埋葬された。ただ、名を告げることなく、親だという男はどこかへ消えてしまったため、藤花の墓に名はなかった。

己の墓を見つめながら、藤花は何も考えられなかった。自分は死んだ。この姿では、隆彦に会うことも両親や店のみんなに会うこともできない。

藤花は諦めた。いや、実際は怖かったのかもしれない。会いにいって、誰にも気づかれなければ、自分が死んだという事実を改めて突き付けられるのが怖いのだ。

藤花は、隆彦に会いに京へ行くことも、家族に会いに実家に戻ることもできず、輪音寺に留まり続けた。

そこで、あの池の近くに星蘭神社ができたこと、神社の名にちなみ、池の名が星蘭池と名付けられたことを知った。


輪音寺に数年留まり続けた藤花は、時代が移り変わり、自分ひとりだけが置き去りにされていくような言いようない寂しさを感じて、この寺を去ることに決めた。どこに行こうかと考えた時、隆彦を待っていたあの榊の樹を思い出した。

(あそこへ行こう・・・)

藤花は歩き出した。振り返ることなく、ただひたすらに歩き続けた。


「あの樹まで歩きついて、その後はあまりよく覚えていないわ。気付いたら、悠子とあんた達がいたの」

話を終えた藤花は寂しげに笑う。

「池の名前の事も意識せずに言っていたわ。記憶があやふやで、さっきの話も柾弥さんの話を聞いて思い出したのよ」

藤花は、自嘲気味に達騎に告げる。

「そうか。よくわかった」

淡々と冷静に達騎は頷いた。八雲と真白、柾弥も複雑そうな表情を浮かべながら、頷く。

悠子は藤花に近づき、頭を下げた。

「ごめんなさい、藤花さん」

藤花は目を丸くし、首を傾げる。

「どうしてあなたが謝るの?あなたは何も悪くないわ」

「ううん、私がもう少し早くあなたに出会えていれば、辛い思いをずっと抱えこまなくて済んだはずだわ」

「それは仕方がないわよ。未来のことなんて誰にも分からないんだから。でも、結果的にはよかったんじゃない?こうして悠子に会えたんだから。私はよかったって思うけど、悠子は違うの?」

藤花に言われ、悠子は勢いよく首を振った。

「そんなことないわ。私も会えて嬉しい」

すると、藤花は花が咲くように笑った。

「なら、これでこの話は終わり。あーあ、色々話したら、すっきりしたわ。さて・・・」

藤花は星蘭の遺骸を見上げる。

「星蘭を土に還しましょ。私の用はもう済んだわ」

そう言って達騎を見た。



「華火葬々(かひそうそう)」

達騎が言霊を唱えると、槍の刃先から青い炎が灯った。

遺骸にかざせば、その炎は遺骸に移り、舐めるように飲み込んでいく。

泡珠院ほうしゅいん

悠子も言霊を唱えた。燃え上がる遺骸を囲むように泡の膜のようなものが現れる。遺骸は泡の膜に守られながら青い炎を上げ、燃えていく。

星蘭の遺骸はやがて灰になった。悠子は「解」と言い、膜を消す。

そして、灰を手に取った。柾弥、達騎、藤花、八雲もそれに倣う。

彼らは、順々に灰を池の淵に埋めていく。それぞれ手を合わせ、(真白は長い首を下げた)一同は星蘭の冥福を祈った。


「さて、私もそろそろ行こうかな」

祈り終え、立ち上がりながら籐花が言った。

「悠子、高天原に送ってくれない?」

「うん」

悠子は頷き、辺りを見回し、言った。

「でも、ここじゃ足元が覚束ないから、移動してもいいかな」

「いいわよ」

藤花の了承を得て、悠子達は神社の境内へ向かった。

境内の中央に悠子と藤花が向かい合わせに立ち、その周りに達騎、真白、八雲、柾弥がいた。

悠子は扇を広げ、小さく足を踏み、鈴を揺らし始めた。交互に足と手を動かしながら、悠子はリズミカルに舞う。そして、息を吸い、謡いはじめた。


トンッ、シャン、トンッ、シャン。


『目覚めよ、天之常立あめのとこたち。天つ風を吹かせ、和御魂にぎみたまの導きとなせ。我が言霊を楔とし、岩天戸いわのあまとを開きたまえ』


言霊を唱えた直後、突風が吹く。そして、藤花を上へと押し上げた。

「縁があったら、また会いましょう」

にこりと笑い、藤花が言った。それは、蜘蛛の体内で悠子が言った言葉だった。

「えぇ。また会いましょう」

悠子も笑顔で藤花に返す。

「ありがとう。悠子。ありがとう。達騎、八雲さん、真白」

「達者でな」

「おげんきで」

八雲と柾弥が手を上げ、真白が尻尾を振る。達騎は、そっぽを向いた。

悠子が手を大きく振る。藤花も手を振り返し、やがて、その姿は青空に吸い込まれて消えていった。


「それでは、柾弥さん。色々とありがとうございました」

悠子は頭を下げた。

「いえ、こちらこそありがとうございました。何かありましたら、遠慮なく連絡をください」

「はい。ありがとうございます」

「どうも」

達騎も頭を下げ、礼を言う。

八雲はすでに真白の頭の上にいた。達騎は真白の背に跨り、悠子もその後ろに座る。

「いいですか?それじゃ、いきますよー」

二人が座ったのを確認し、真白は空に浮いた。そして、風を掴むと空の上へと昇って行った。


「隠し紙」で姿を隠し、榊の樹が見えてきたところで、悠子は「隠し紙」を外した。

真白が榊の樹のそばで降りる。

先に八雲が降り、順に達騎、悠子の順に降りた。


「それじゃあ、ぼくはかえります。なかなかたのしかったですよー。あ、やくもさん、あとでそうきんおねがいします。ごじかんですから、ごまんろんですよ」

「分かっているわい。全く、のんびりした顔して、こういう事はしっかりしとるのぉ」

真白の言葉に、八雲が肩をすくめて返す。真白はぴんと尻尾をたてた。

「あたりまえです。いくらぼくだって、ただばたらきはいやですからね」

「あの、私も払ったほうがいいのかな?」

悠子が聞くと、真白が首を横に振った。

「ゆうこさんがはらうひつようはないですよ。ぼくをよんだのは、やくもさんですから。あっ、もし、こんどようぜんをつかうときは、あのことばをよんできださい。すぐとんでいきますから。あ、おだいはいちじかんでいちまんろんですから」

「は、はぁ・・・」

運送屋・妖善の相場が分からず、戸惑いながらも藤花は頷いた。

「では、またのごひいきを~」

真白は髭を揺らしながら、青空の向こうへ飛んでいく。

「ありがとう!」

悠子が礼を言うと、真白は尻尾を振り、青空の向こうへ消えていった。


「さて、わしはここに一晩泊めてもらおうかの。このまま屋久島へ行ったら夜中になっちまう」

八雲は、榊の根元に腰を下ろし、その幹に触れた。

「そうですか。八雲さんも色々とありがとうございました」

「いやいや、刺激的で楽しい一日じゃったわい。屋久島に着いたら、こうはいかないじゃろ。いい思い出になった」

白髭をさすり、八雲は笑う。

「何言ってやがる。慌てふためいてたくせに・・・」

達騎が片眉を上げ、低い声で呟く。すると、八雲がふふんと鼻を鳴らし、子供がおもちゃを見つけたような瞳で達騎を見た。

「そういえば、お前さん、悠子が藤花に襲われていた時、ずいぶん余裕そうじゃったのう。どこかでワシらのことを見てたのか?」

「え?」

思わぬ八雲の言葉に悠子が目を瞬かせる。

「そんなことあるか。たまたまだ。嫌な気配を感じてここに来たんだよ」

「じゃが、猿田彦の巫子は、気を探るのが苦手と聞く。雑踏が混じっていればなおさらじゃ。ここは、少し行けば車がよく行き交う通りに出る。店も多いから人も多い」

「・・・・やけに絡むな、おい」

眉を寄せ、不機嫌さを隠そうともしない達騎に八雲がさらに言った。

「そういえば、お前さん、鞄はどうした?その服からして学校帰りじゃろう。そのまま放置していればだれかに盗まれているかもしれんぞ」

達騎は目を見張り、勢いよく振りかえると、背後にある緑の茂みを見た。

「やばっ、あれには今日の食費が・・・!あっ」

まんまと八雲の策に嵌り、墓穴を掘った達騎は舌打ちをし、八雲を睨みつけた。

「こんのたぬきじじいが」

「隠すのが悪いんじゃ。のう、悠子」

達騎を気にすることなく、八雲はひょうひょうとした態度で悠子に話を振った。

「え、えっと・・・」

ぎりぎりと八雲を睨む達騎に悠子は言った。

「鞄、探したほうがいいんじゃない?なくなってたら大変だよ」

「っ、そうだ!」

悠子の言葉に我に返った達騎は、慌てて茂みの中に分け入る。がさがさという音をしばらく響かせていたが、やがて小さく声が上がり、茂みの中から達騎が姿を現した。その手には、紺色のスクールバックがあった。

「よかった。あったんだね」

「あぁ。財布も無事だ」

達騎が安堵の息をつく。悠子はそれを見て、ふと思った。

「今日、土曜日だよね?学校は休みのはずだけど」

「補習だよ。俺は誰かさんと違って優等生じゃないからな」

バックを肩にかけ、達騎は唇を尖らせる。

「私、優等生じゃないよ。ちゃんと学校に行ってるだけだもの」

「学年三十位以内に入っている奴がそれをいうか?」

目を細め、じっとりとした眼差しを達騎が向ける。

「それはそれだよ。草壁くんの場合は、遅刻や休みが多いから補習があるんだよ。青木先生が、草壁くんはちゃんとやれば二十位以内は狙えるっていってたけど」

「はっ、あの青木がそんなことをね。雪か下手したら槍が降りそうだな」

「本当に、本当だってば」

鼻で笑う達騎に悠子は言い募る。

「じゃ、俺は帰るぞ」

小さく息をつき、達騎は歩きだした。

「あ、私も」

一歩踏み出したその時、悠子は八雲のことを思い出した。振り返り、八雲に向き直ると深々と頭を下げる。

「八雲さん、ありがとうございました。お元気で」

「おう、お前さんも達者でな」

目じりを綻ばせ、八雲が笑った。

「はい!」

悠子は微笑み返し、達騎の後を追った。


八雲と別れ、悠子は達騎から五歩の距離を空けて、街路樹が風でさざめく歩道を歩いた。二十歩くらい歩いたところで、達騎は振り返る。

「・・・で、お前はなんで俺の後ろを歩いてるんだ?」

「え。私も同じ方向だから・・・。それに邪魔にならないようにしようかなって」

すると、達騎は眉を寄せ、言った。

「変な遠慮をするな。さっさと来い。さっきまで話していた奴が距離あけて歩いてると、俺が何か悪いことをした気になってくる」

「あ、う、うん」

達騎のためにしたことが、逆に良くないことに気づかされた悠子は、足早に達騎の元へ駆けた。

二人は並んで歩きだす。

「草壁くん、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なんだ?」

「どうしてあそこにいたの?」

「・・・・・・・」

「あ、言いたくなければ言わなくていいよ。助けてくれたのは本当だし。うん」

口を噤んでしまった達騎に、悠子は慌てて片手を振る。

しばらく達騎は黙っていたが、やがて小さく息を吐くと、しぶしぶといった表情で話し出した。

「直に言われたんだ。お前があの樹の弔いに行くから見にいってほしいってな。嫌な予感がしたんだと」

達騎の言葉に悠子の目が軽く見開かれる。

「直ちゃんが・・・」

直―吉沢直は、悠子の同級生にして親友、そして達騎の幼馴染だった。

霊はほとんど見えないが、勘が鋭く、虫の知らせというものをよく感じる。悠子や達騎も直の直感に何度も助けられていた。

今回、直に言われたからといって、達騎が来なければならない理由にはならない。けれど、達騎は来てくれた。

「ありがとう」

「あ?」

「勉強の後だったのに来てくれて」

「別に。あいつとの約束破ったら、後が怖いと思っただけだ」

そっぽを向く達騎に悠子はふふっと声を上げて笑う。

以前、直と悠子、達騎とクラスで仲の良い面々で勉強会をしようと約束したのだが、すっぽかした達騎に直の雷が落ちた。

荒御魂や先生相手にさえ勝気な態度を崩さない達騎が、直の前で正座をし、説教を受けている様子は憐れというより微笑ましささえ感じられた。

「直ちゃんにお礼を言わないと。私一人だったら、どうなっていたか分からなかったし」

すると、達騎が呆れたような眼差しを向けた。

「お前さ、藤花が出る前に警戒して盾ぐらい張っとけよ。あの声と気配はどう感じたって、荒御魂だったろうが。攻撃受けて術を発動しているようじゃ、意味ないだろう」

「う・・・。でも、荒御魂だからって、すぐに攻撃する人ばっかりじゃないし、大丈夫かなと思って」

呻く悠子に達騎が人差し指を悠子に突きつけた。

「そーれーが、甘いっていってるんだよ!超凶悪な荒御魂に出会ったら、それこそ一貫の終わりだぞ。分かってるのか?」

「・・・わっ、分かりました。今度から警戒します・・・」

達騎に若干だじろぎつつ、悠子は素直に頷いた。

「あぁ、そうしてくれ」

達騎は大きく頷いた。


その後、夕食の話や来週の英語の小テストなどたわいのないことを話しながら二人は歩いた。

やがて歩道が途切れ、住宅街が悠子達の前に現れた。

「じゃ、俺はこっちだから」

達騎が指で左を指差して言う。

「あ、うん。じゃあ、また学校でね」

「あぁ」

小さく手を振る悠子に、達騎は片手を上げ、背を向けて住宅街のある方へ歩いていった。

悠子も住宅街から伸びる信号を渡り、家路へと向かっていく。

青空の端に橙や桃の色が帯びているのが視界に映った。


閑静な住宅街を歩き、緑に覆われた公園を横目によぎる。

その左側に「鈴原医院」と書かれた看板を提げた日本家屋の家があった。

悠子は玄関のドアを開けた。

「ただいまー」

靴を脱ぎ、廊下に上がると、居間へ続くドアを開ける。

居間の奥にはテレビがあり、中央には低い丈のテーブル、右脇にはモスグリーンのソファーが置かれていた。

「お帰りなさい。ご苦労様」

その時、悠子の背後から朗らかな声がかかった。

振り返れば、居間と隣接する台所に、髪をボブカットにした四十代の女性が立っていた。女性は悠子を見てにこりと笑う。

悠子の母ー花穂だった。

「疲れたでしょう。お菓子があるわよ」

花穂が、ダイニングテーブルに置かれた円形の籠を指す。そこには、袋に入ったミニドーナツが入れられていた。

「あ、うん。ありがとう」

森川家でトウモロコシを食べてしまったため、お腹はすいていなかったが、その経緯を素直に話して花穂に心配をかけたくなかった悠子は、礼を言って、ドーナツを手に取った。

「おかえり」

その時、低く穏やかな声が悠子の耳を打った。顔を向ければ、悠子が入ってきた居間の出入り口に、花穂と同じ四十代の男が立っていた。

丸い顔に太い眉、短い鼻。悠子と似た顔立ちをし、黒縁眼鏡をかけ、白衣を着た男―拓人は居間のソファーに腰を掛けた。

「ただいま。・・・患者さん?」

拓人―悠子の父は医者だ。家の離れで、人だけでなく、人間社会で暮らしている妖達の治療も行っている。

土曜日の診療は午前中で終わりのはずだが、白衣を来ていることを不思議に思った悠子は、急患でも来たのかと考え、拓人に問う。すると、拓人は大きく頷いた。

「あぁ。凛太郎が急にお腹が痛いといってね。ただの腹痛にしては尋常じゃないから、もっとくわしく検査ができる月読総合病院まで車を飛ばしたんだ」

鈴原医院の設備では限りがある。あまりに症状が重いと判断したら、大学病院である月読総合病院に掛け合うのが常になっていた。

凛太郎は、近所の小学生だ。元気で腕白な少年だが、お腹が弱く、季節問わず医院に来ている。悠子も顔見知りの子だった。

「それで、凛太郎くんは大丈夫だったの?」

「うん。すぐ検査を受けて入院した。今はもう元気だよ。明日で退院できる」

「そう、よかった」

悠子はほっと息をついた。


「あぁ、そうだ。無事に弔いをしたようだね。安心したよ」

「う、うん。」

拓人の何もかも見通すような瞳に微かな怖れを感じながら、悠子は舞を八雲に褒められたことを話した。

拓人は、鈿女の巫子の本家、鈴原家の血を引き、悠子の師でもある。悠子の技も舞も拓人から教わったものだ。

話を聞いた拓人は、嬉しそうに目を細めた。

「それは良かった。他人ひとを感動させることができたなら、もう一人前だ。胸を張りなさい」

「はい」

師である父にも認められ、嬉しく思いながら、悠子は大きく頷いた。

それから一呼吸置き、拓人は言った。

「それとあまり無茶はしないように」

その言葉に悠子の肩がびくりと跳ねる。

目線を悠子から離すことなく、拓人は続けた。

「自分の命も、救いたい命と同じように大切にしなさい。お前のことを心配してくれる友達のためにもね」

「・・・はい」

言葉は違うが達騎に言われたことや、直のことを思い、悠子は神妙に頷いた。


悠子は着替えるために、二階へ上がった。「YUUKO」とネームプレートが下げられたドアを開けた。

部屋の左壁に犬、猫、イルカ、キリンなど様々なぬいぐるみで飾られた棚と洋服箪笥があり、右側には窓がはめられ、その窓の前にはノートや教科書が雑然と置かれた勉強机があった。

その後ろの壁には、服をかけるハンガーラックが立てかけられている。悠子は机に身にドーナツを置いて、私服に着替える。緋雷装束をハンガーにかけて、悠子はベッドに腰を下ろした。

「ふう」

使い慣れた部屋に帰ってきて、肩の力が抜けた悠子は、ベッドの上に寝転がる。

「あっ」

その時、悠子は思いだした。

「藤花さん、会えたかな」

この時間帯なら、高天原に着いて隆彦に会った頃だろうか。確かめるすべはないが、そうあってほしいと悠子は願った。あんな形で引き裂かれてしまった二人が高天原で思いを遂げてくれればと思った。


藤花の先には、何もなかった。ただ、霧に包まれた白い空間だけがあった。

「何なのよ、もう」

歩いても、歩いても先は見えず、藤花はため息をついた。その時だった。

「藤花」

忘れるはずもない、忘れることなどできない声が聞こえ、藤花は目を見開き、勢いよく顔を上げた。

隆彦がそこに立っていた。

「隆彦さん」

「藤花・・・!」

隆彦が泣きそうな顔を浮かべ、藤花に手を伸ばそうとするが、次の瞬間、それをこらえ、ぐっと唇を引き結んだ。

「約束、守れなくてすまなかった」

隆彦は、そう言って藤花に頭を下げた。藤花は目を軽く見開くが、ふっと口角を上げ、優しい瞳で隆彦を見た。

「いいのよ。あなたはこうして待っていてくれたでしょう?私もあなたを待たせた。これでおあいこ」

隆彦が顔を上げるのを見て、藤花は微笑んだ。藤花の笑みに連れられ、隆彦の表情も柔らかいものに変わる。

「・・・ありがとう」

隆彦が藤花の手を引き、力強く抱き締めた。藤花もしっかりと隆彦を抱き締め返す。

「会いたかった・・・!」

藤花は、震える声で隆彦の耳元に囁いた。

「あぁ、俺もだ」

隆彦も万感の思いを込めて、藤花に呟いた。


※※※※※※※※※

日曜日の午後、昼食を食べ終え、英語の小テストの勉強をしていた悠子は、身知った気配が近づいてくることに気付いた。窓を開けると、そこには八雲がいた。

なぜ、八雲がいるのか。屋久島に向かったのではないか。疑問が悠子の頭の中を駆け巡ったが、八雲が興奮したように発した言葉がそれを吹き消した。

「悠子!榊の樹が倒されなくてすむぞ!」

「えっ、本当ですか!?」

驚いた悠子に、八雲は話し出した。

悠子達が帰ってしばらくした後、榊の樹から緑のスーツを着た老婦人が現れ、きびきびとした足取りで市役所へ向かっていった。

老婦人は、市長室まで行くと、市長に向かって榊の樹が住民にどれだけ愛され、歴史的にも価値があるかということを穏やかだが、有無を言わさない口調で語った。

そして、榊の樹を切り倒さないと約束し、工事を取り消してくれるまで居座ると告げたのだ。

市長はなんとか老婦人を市役所から出そうとしたが、彼女の意思は固かった。議論は五時間ほど続き、市長もとうとう根負けし、その場で榊の樹を切り倒さないことを約束し、老婦人の目の前で工事の取り消しの電話をしたという。

「そうなんですか」

何とも破天荒な、行動力のある人だと悠子は思った。けれど、そのおかげで榊の樹は切り倒されなくて済んだのだ。その老婦人に感謝しなければ。

だが、榊の樹から現れたという八雲の言葉に悠子は引っかかった。

「八雲さん、その人ってもしかして榊の樹の精霊ですか?」

悠子が八雲に問うと、八雲はにやりと笑った。

「おう、そうだとも。もう長く生きているから切り倒されてもいいと思っていたらしいが、お前達が色々と手を尽くしてくれるのを見て、奮起したらしい」

悠子は目を丸くしながらも、喜びが胸に広がるのを感じた。

「八雲さん、伝えてくれてありがとうございます。父も近所の人もそれを聞いたら喜ぶと思います」

頭を下げる悠子に、八雲が片手を振った。

「いやいや。礼には及ばん。さて、これで心残りはなかった。安心して屋久島に行ける」

「はい。気をつけてください。お元気で」

「おう、達者でな。あの小僧にもよろしく伝えといてくれ」

「はい」

八雲が風に乗り、雲ひとつない青空へ消えていくのを、悠子は微笑みながら見つめていた。

そして、父に榊の樹のことを伝えるべく、一階へ降りていった。



つたない所もあったと思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。

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