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Dear  作者: 雨神
その音だけが
9/62

1-9



 蓮の黒く大きな瞳が驚きでより一層丸みを帯びた。


 反射的にとは言え、一切の力加減などなしに掴み、髪を引っ張ってしまったと言うのに、


(ずるいなぁ……)


 律は、それに対して何も言わないし、顔色のひとつも変えやしない。


 律の腕に座るような形で、不安定な上半身は彼の首から頭に凭れるようにして、蓮はすがるように律の頭を横から抱き締める。


 やはり自分はブラコンかもしれない。

 

 だって先ほどまでの渦がすぅ……と荒れを引いて穏やかになっていくのを感じているのだから。


 荒れ狂ってどうしようもなかった感情を、見失いかけた己を救い上げてくれたのは、他でもない、この兄の存在。


「…………」


「さくらんぼ。俺買ってたからなぁ」


「……」


「おっさんから貰ったの。全部食べてしまうか?」


「じゃあ私は律くんが買ってきたのを優さんと食べるもん」


「買ってきた手数料はよ?」


「……律くんの戦力外っ」


 ふ、と意地悪く楽しそうに笑う、甘えさせてくれる兄の頭を、今度はふんわりと柔らかく抱き締めて、家に戻るまでの間、律の意地悪に全面と立ち向かった。







 好きな音だけで良い。



 蓮の世界は、この音だけが鳴っていれば、お伽噺のように意地悪に謡ってくれるこの声さえあれば、



 蓮は、悪魔を『散らす』ことが出来る。








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