3-2
「さぁて、」
律の頭を撫でながら、優は窓の外を見る。
この町は、毎日毎日面白いくらいに灰色の曇り空だ。
思い。想い。
祈りや願いの謳い唄う感情たちがたくさん居るようで、優は曇り空が嫌いではない。
たくさん感情の色が混ざれば、きっとこんな色だろうと想うと、ああ、こんなに美しいものはないと奥底から想える。
こんな風に想える自分を、優は誇らしく思う。図々しいことはわかっていても。
ぐにゃり、と不意に視界がぶれる。円を描くように歪に歪み、物が少ないはずのこの家が複雑に混ざって。
目眩だ。と思う前にいつものものが来てしまったと確認した。
これが知れたら、律に心底心配されてしまう。
我が家では心配と怒るは同義語なのだ。
優は努めていつも通りに振る舞った。
「蓮は、きちんと」
「蓮は馬鹿だけど馬鹿じゃないんでお使いくらいきちんと出来ます。寝てください、優さん」
……つもりだったが、やはり騙せていなかったらしく、ばっさりと体にブランケットをかけられてしまった優は顔にかかったそれに「ぶっ!」と非常に間抜けな声を出してしまった。
我ながらまだまだだと自嘲しながら顔からブランケットを放し、膝にかけながらゆたりと首をかしげた。
「……律?優さんは元気なんだけ」
「優さん。……俺にそんな嘘が通じると?」
「デスヨネー」
ぎろりと睨む、神経が澄むような美しさを持つ碧眼に睨まれながら優は苦笑し、そのまま大人しくソファーのお世話になるしかなかった。
だらん、と左腕を額に乗せて、想うは愛娘のこと。
あの子は、しっかりとお使いができているだろうか?
……絶対に、ただの意地悪だ。
蓮は賑わう商店街からほんの少し離れた、春を待つばかりの木にしがみつきながら家にいる律に怨みの念を発していた。




