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Dear  作者: 雨神
優しすぎる保護者
12/62

2-3

「ただいま戻りました……優さんっ」


「ふっぶぅっ!?」


 鳩尾に一発拳を叩き込もうかとちいさな手をしっかりと握りしめたのだが、それよりも早く買い物袋を持って走って来た律が華麗にラリアットを優に決めてしまったものだから手出しが出来なかった。


 きっちんに立っておやつを作っていたほくほく笑顔の保護者……優に「何をやっているんだ」とお説教タイムに入りたかったのだが、どうやら律がそれをするらしい。


 黒髪を灰色の歪なひよこゴムでちいさく結っている優は大きな音を立ててパステルカラー調の黄色いキッチンマットに背中から思いきり倒れた。


 キッチンマットの上に倒れるようにうまく仕向けたのは律の優しさゆえである。


 蓮はそれを知っているから何も言わない。


 蓮自身もそうだが、律は保護者至上主義者だ。   

 大抵、律は優を第一に優先してことを進める。


 それは身寄りのない自分達を育ててくれたからと言う恩も理由のひとつだが、ただ純粋にこの紫暗色の瞳を持つ保護者が好きだからと言う純粋な理由以外に他ならない。


 いったぁ……と、攻撃されながらもふにゃりと笑う優の顔の横にちょこんと屈んで、蓮も律と同じく「ただいまです」と……それこそ広がり咲く天上の花のように笑った。


 おかえり、と艶やかに笑う保護者の笑顔を見るとやはり自分はこの保護者が大好きなんだなと改めて認識し、


 先程の律のラリアットにも頷ける。


 あれは決して保護者苛めではない。俗に言う「愛の鞭」と言うやつだ。


 がさがさと買ってきたものをキッチン横の茶色いテーブルに整理しながら律の碧眼はこちらを見ずに優に刺々しく訊いた。


「俺、寝てて下さいって言ったじゃないですか」


「そうですそうです、律くんの言う通りです」


 棘のある律の物言いに空かさず蓮も援護射撃を繰り出した。


 こればかりは律が圧倒的に正しい。


 


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