表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

02 幕間――とある会議の議事録――




「……そうなんですよ。昨日一日で寄せられた苦情が、去年の八倍の57件にも上っておりまして……」


「原因については分かっているのですか?技術部門(そちら)の方からの説明は久しく受けていないように記憶しているのですが」


「……つまり、纏めさせて頂いても構いませんか?コールセンターの方で一番多い質問は、[ミライの性格が時々狂う][BGMに音割れが生じる]の二点ですね」


「まあ、そういう事になりますね」


「いま手元にある資料で答えられる範囲ですと、恐らくはサーバーの拡張で解消するしかありませんな。現在のところ、登録ユーザーは五万人超。瞬間最大同時ログイン数は一万九千を記録したこともある。その段階で何が起こっているのかは、正直言って規模が大きすぎますので私ども技術部門にも分かりませんが、恐らくは演算結果を各ユーザーのパソコンに転送するシステムが混乱しているのだと思います。通信衛星の方はどうしようもありませんから、後はサーバーの通信設備の拡張以外に対策しようがありませんから。財務部門さん的には対策費幾らまで出してもらえますか?」


「そうですね……せいぜいが十二億と言った所でしょうか」


「それは例の計画も含めて?」


「いえ、あちらは含んでないですね。向こうについては六十億円相当の投入を見込んでいます」


「でしたら、こういうのはどうです。我々技術部門の算出した概算だけで、あの檜原村のサーバービルディングの工事を行う費用はざっと二十億となっている。まず捻出は不可能です。この際現行の修正案を破棄し、例の計画に全投入してしまうのは。もう二年経ちましたけど、営業部門さんも最近は苦労されてるでしょう?」


「先日、外部の(プロデューサー)も交えての戦略チームを立ち上げましてね。売り込みについてはさほど……。ただ、企画モノがやや低迷気味という印象です」


「どうですか、ここで新たな風を送り込むというのは。二極化した方が話題にもなると思いますよ」


「私は賛成させてもらいます。急速に人気を伸ばしているとはいえ、売上はそこまで凄まじいモノではありません。銀行さんの顔もあまり良いものではないですし、なるべくカネは使いたくないですから。それに、カネをかけたってよくなると断言は出来ないのでしょう?」


「そうですね、十二億では施設の拡張で精一杯かもしれませんな」


「ならば、いいではありませんか。新しく創って潤うなら、その方がいいですよ」

「財務部門さん、ちょっとそれは彼女に対して酷い言い方ではないですか?まるで人間じゃないみたいに」


「はは、何を仰有る。事実彼女は人間(・・)ではないのですよ?」


「それは、そうですけど…………。まあ皆さんがそうまで云うのでしたら、私どもとしましても反対する事はないですね」


「では、決まりということで社長に報告させて頂きます。技術部門さんの何方か、今度の役員会と株主総会にも出席して頂けませんか?」


「私が行きましょう」


「分かりました。では、これにて今日の部門長会議はお開きに……」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ