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中二とかわいい者

とうとう見つけたぞ。五十嵐睦月!!」

「お、お前は!?」えーっ・・・なにこの状況!?

時刻は昼。

「あ、あぁ・・・オレの築き上げてきたものが音を立てて崩れていく・・・。」俺は崩れるのを白けた目で眺めた。結構続いたのにな~。

「は~い、お前の負け~」

「クッ・・・!」机の上でジェンガが散らばる。

「お前ほんとアホだよな~。普通一番下の二個目は取らないだろ」

「オレは限界に挑み続ける宿命なのだ。そこに限界の可能性がある限り突き進むのがオレだ。」

「つまり?」

「光ちゃんができたからオレもできると思った。」あー・・・。そうね。俺一番下一本抜いたね。」

「光太にできることをオレができないわけがない」

「さいですか。てかなんでジェンガ?」

「黒ひげ危機一髪もあるぞ?」散らばったジェンガをかき集めて睦月が言う。

「ん~、そうゆうことじゃなくって・・・」

「フッ・・・物が崩壊したり、人が吹っ飛ぶのを見るのは楽しくないか?オレは興奮する。血が騒ぐ。壊れていくさまを見るのは」

「俺もお前の眼鏡壊してやろうか?」

睦月が言うには昨日物置を片付けていたらジェンガだの危機一髪など、小学校で遊んだ物が出てきて、懐かしくてついやりたくなったらしい。で、今日持ってきた。

「つーかなんでクラスに俺達しかいないんだ?」ガラーンとした教室には俺達だけ。どうせ学校で二人っきりになるならかわいい女の子とがいいもんだ。しかもこんな日は。

「今日なんかあったっけ?」

だって変だ。昼休みはそろいも揃ってみんな一番騒ぐ時間だ。

「確かに変だな・・・。」

「だろ?雨も降ってるから教室にいるしかないのにな~」梅雨入りの雨は毎日飽きもせず降っている。静かでなんか・・・良いよな~。だからどうせなら可愛い女の子がいい。

まぁ、湿度は高いしまとわりつく暑さで嫌になるけど。でも、だからこそ可愛い女の子がいい。

静かな教室でしっとりした肌を制服からのぞかせれば、もうそれだけで良い雰囲気なのに・・・。一緒にいるのは幼なじみの男。しかもジェンガ。あぁ、俺って・・・。なんか、寂しいな。 あぁ、彼女が欲しい・・・。

「しかし・・・」睦月がアンニュイに窓を見た。

「今日はオレの心を写したかのような空だ・・・。」切ない感じに言われましても~。

「何お前泣きたいの?」

「うん、負けたから」と顔に書いてある。

「わーたよ。もっかいジェンガするよ」こりゃあ睦月が勝つまでやらされるな~。睦月はいそいそ、俺はだらだらとジェンガを積み上げる。

そのとき教室の引き戸が勢いよく開いて、びびった睦月がせっかく積み上げたジェンガをまた崩してしまった。

「ここであったが百年目!とうとう見つけたぞ、五十嵐睦月!!」

現れたのは5,6人のデカい男子生徒が一列に横に並んでいる。全員制服をきっちり整えた短い黒髪の真面目そうな奴らばっかだ。でもその黒髪の中に一つ明るい茶髪があった。しかもそいつが奴らを従えてるみたいだ。仁王立ちにふんぞり返ったみたいに腕組みなんてしてる。奴らより全然ちっさいが。

でも、どっかで見た顔だ。めちゃくちゃ可愛い子だから。

「おい、睦月知ってる子?」

「知らんな。雑魚をいちいち覚えているほど俺は暇ではないからな」

「ざ!?だ、誰が雑魚だ!誰が!?」デカい目をがんばってつり上げてほっぺを膨らませて怒っている茶髪。なんか、小動物みてぇ~。

でも、やっぱどこかで見たことある。ん~・・・どこだろ?

「テメー!何、律さんに雑魚とかいってんだ!?」

「律さんは成績優秀・スポーツ万能」あれっ?どっかで聞いたような?俺は睦月をちらっと見た。あ、コイツ・・・。

「そのうえとってもかわ・・・とっても凛々しく気高い東校の生徒会長であられるぞ!」律“生徒会長”は今の説明に満足したらしく、得意げにまた腕を組んだ。

「知っていると思うが、生徒会長の有栖川律ありすがわりつだ。貴様等の悪行を」カラカラカラッ

俺は睦月がジェンガでドミノを並べたのを指で倒すことに成功した。たった二十何個のドミノはすぐに全部倒れた。

「ハッ・・・・!!光太、なんてことを!?」

「ハハハッ」

「って、聞けい!!」ツッコミを入れたのは有栖川だった。

「なぜ人が自己紹介しておるのに無視してドミノにいそしんでおるのだ。なんたる屈辱!なんたる無念じゃあ!?」

「えー・・・何コイツ?コイツも中二?」

「おい、そこの者!確かに律は見た目中学二年にも見えるけどな、日本歴史男子なんだぞ!?」

「いや、“日本男子”みたいに言われても・・・。あぁー!!コイツ、やっぱ見たことあると思ったら。コイツこの前体育祭で浴衣着て走ったヤツだ!!」つまり俺のときめき泥棒。つまりこんな可愛くても男。

「さっきっから騒がしいヤツだ。誰ぞ、貴様」一人の男子が有栖川に跪いた。

「はっ、殿。こやつは元大海中の大林光太。別名『荒狂の」

ガッ!!

先に手を挙げたのは俺でなく、睦月だった。睦月は男子の口を手でふさいでいるだけだがその目は大きく見開かれていた。怒っている。

「それ以上のことを言うと・・・殺すぞ」中二の台詞なのに俺でも嫌に背中が強ばった。

「ふん、まぁいい。五十嵐睦月と大林光太、貴様等の不届きな行動に処罰を与える。」

「はぁ!?」俺の声と同時に睦月は男子生徒を放した。

「はぁ、意味わかんねー!!何でだよ!?」

「ふん、そのようなことを聞いてくるとは片腹痛いわ。まず第1に貴様等は今日の昼餉休み体育館に現れなかった。今日は余が今月の目標や注意、処罰の対象にする者共のことを発表する神聖な儀式なのだ。それに来んとは・・・。」有栖川がまたほっぺを膨らませる。

やっべ~、そういやあ、そうだった~。

「第2に貴様等は学業に必要のない物も持ってきておる。貴様等の所有するからくりはすべて没収する」有栖川はジェンガを急いで抱いた睦月を睨んだ。

「第3に五十嵐睦月、貴様は生徒会に手を出した。大林光太もその動きを見せた。すべての行動をふまえて、貴様等二人を停学処分に処す。」有栖川はいかにも勝ち誇った顔だ。

「停学か~。」なんか二人で「あ、いいっすよ」なんて顔に出ちゃう。

「光太、停学ならあそこに行く絶好のチャンスだ」

「あ、ディ●二ー?いいな、それ」

「なっ・・・!」有栖川がショックの顔を見せた。

「貴様等!停学と言う恐ろしい刑をわかっておるのか!?」

「わーてるよ。なぁー」睦月は頷く。

「ふっ・・・貴様等がどうしても停学を免れたいなら、この有栖川律の勝負に勝つが良い」

「いや、だから停学でいいって。」

「貴様の意見は聞いていない!『荒狂の狼・光太』」心臓が大きく跳ねて、俺は硬直した。久々に呼ばれた名だからだ。

バッ!!ガラガラガラッ・・・・。

「な、何をする!?」睦月がジェンガを有栖川に全部投げたのだ。

はぁ~、幼稚園児かよ・・・。

「受けて立つ。有栖川」

睦月は鞄から黒ひげ危機一髪を取り出した。叩き付けるように机に置く。

「俺が勝てば停学と光太を侮辱したことを取り消せ。俺が負ければ、俺は処分に従う。」

「そう来ると思っていたわ」

ええー、俺別に停学で良いのに・・・。あの名前で呼ばれたのも・・・。

「って、マジで勝負黒ひげ!?」

「昼餉休みの時間も考えろ。学問の時間は厳守せねば」

「その通りだ」

バカ二人が何えらそーに言ってやがる。

「生徒会・有栖川律、いざ参る」

「流れ者五十嵐睦月、ここにあり」そんなこんなで中二vs歴男の戦い。

そして15分後・・・。

「ッ・・・!!見えた!ここだ-!?」カチッ、シーン・・・

「ふぅ・・・間一髪だったぜ。黒ひげだけに」

「五十嵐睦月、強者と見た」

うっぜぇ~・・・。

「何が時間考えろだー!15分もやってまだお互い三本しか刺してねーって、どんだけ慎重なんだよ!?」

「黙れい!男の戦いに口出しとは武士の風上にも置けん」

「光太、この張り詰めた空気を感じろ」

「黒ひげもこんなギスギスの空気の中で遊ばれんの予想されねーよ。見たことねーよ。こんなシリアスな黒ひげ危機一髪。」

またさらに10分。

「くっ・・・どっちだ!どっちなんだ・・・。」

俺はあくびをした。退屈すぎる。

「クソッ・・・オレの第3の目を使っても見えないものがあるとは・・・右か?左か?時間がない・・・!!」睦月は時計を見た。昼休み終了1分前。睦月の額に汗が噴き出る。

うん、俺初めて見たよ。黒ひげ危機一髪で爆弾処理ごっこするやつ。何この演出?

「迷いに迷うがいい。五十嵐睦月恐るるにたらん!!」

「さすが律さんです!?」元気良いなコイツら。

「つーかさ、有栖川はなんで睦月にそんな突っかかってくんの?初対面だろ。お前等」

「その方、余を呼び捨てにするとは、なんたる恥知らず。ふん、まぁいいだろう。低脳な貴様に教えてやらんでもない。ことは卯月のころだ」え~、解説編かよ・・・。

自分の番が来ないことを利用して有栖川はしゃべり始めた。


(有栖川解説)

余は成績優秀・スポーツ万能、おまけに才色兼備・眉目秀麗、そして将来有望。これ以上何を望むという完璧に完璧な我の18年の生に傷を付けたのが五十嵐睦月、そやつだった。

余が2年の頃、成績はもちろん優秀で学年でも1位だった。平均点は毎回88点ほど。

そんな中、三年の卯月の頃。試験の結果が貼り出され(当然余は三年1位)ふっと見た二年の試験成発表表で余は正気を失いかけた。

余の平均点を上回る者だと・・・っ!

そう、それが五十嵐睦月。貴様だった。

平均点89点の貴様。二年時平均点88点の余。

過去は変えられぬ。だから・・・。


「つまり、何?逆恨み?」しかも平均1点の差で~。

「逆恨みとはなんだ!?余はやっと余に対等する者をだな・・・」

「うわっ、ちっさ。器も体もちっさ。な、睦月」それにコイツが実は三年ってのにも驚いたわ。

「フンッ!余を愚弄したことを後悔するがいい。五十嵐睦月はもう限界のようだがな」

「む、睦月」

「いや、俺に限界なんてない・・・見えた!!」睦月はおもちゃの短剣の狙いを定める。

「ここだー!」

「おーい、お前等なにしてんだー!授業始めるぞ」短剣を刺す前に数学の先生が入ってきた。

「チッ、今日の所は見逃してやる。せいぜい次に相まみえるまで首を洗っておるがいい」

有栖川は黒髪集を引き連れて教室を出て行った。まーた変なヤツがでてきたもんだ。

「なぁ、結局どうなるんだろうな?」

「この勝負、オレの負けだ・・・。」そう言った睦月は定めた右の穴に短剣を刺した。黒ひげさんは飛んで床にカランと落ちた。

「へ~」

「有栖川律・・・ヤツとは再び戦うことになろう・・・。」俺はもう勘弁だよ。

ちなみに俺達の停学はなくなったらしい。


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