中二と中三
とりあえず、この小説はBLではないです。
たぶん・・・。
今回は主人公であるこの五十嵐睦月が話そう(※主人公はあくまでも大林光太です)
これは2年前の話。季節は秋、中学3年だったオレたちは高校進路・入試に追われた日々を送っていた。
「光太はどこの高校へ行くんだ?」普通に質問しただけなのにすっごくおどろかれた。失礼な。
「東校・・・かな」東校か・・・。レベルはまぁ、高い方だ。光太は頭は悪くないし要領もいいから普通に受かるだろう。面接も問題なさそうだ。最近の光太は雰囲気が柔らかくなった。だから大丈夫だ。オレのおかげだな。
「眠れる獅子光太も丸くなったもんだ」
「5限で寝てたこと掘り起こすな。お前はどこ行くんだよ?」
「何のことだ?オレはどこにも行っていない。ずっとここにいるぞ?」
「なんのことだよ!この流れだったら高校の話だろ!?」あー・・・。光太は確かに丸くなったけど、生まれついての短気はどうしようもないらしい。
「俺は東校行けば付属の大学で教員免許取れるって聞いて選んだ。」光太の夢は小学校の先生だ。面倒見がいいからぴったりだと思う。
「そーいやーさ、睦月、お前の将来の夢なんなんだよ?聞いたことねーぞ」
夢・・・俺の夢・・・?
「夢?笑わせるな。そんなものどこかに置いて来ちまったな」
「どうせどっかのコンビニのトイレとかにだろ?」オレは頷いた。
「マジかよ?」そう、オレはたぶん昨日寄ったコンビニに・・・。涙のヤツが勝手に溢れてきやがった。声が詰まる。鼻を中心に顔が熱い。
「あー・・・泣くなよ~。どこのコンビニだ?何忘れた?」
「・・・ズビッ・・・お、お気に・・・入りの、スッ・・・スト、ラップ・・・だぶん、ぎのうの・・・ゴンビニ・・・」本当にお気に入りなんだ。
「あぁ、わかった。放課後取りに行こうな」オレは頷いた。
失いたくないものだ。あれは・・・。
放課後、昨日行ったコンビニで店員さんに光太がストラップのことを訊いてくれた。オレは人間とうまく話すことができないから。ありがたい。
ストラップはレジの前に落ちていたらしく店で預かってくれていた。
「よかったな、睦月」よかった、見つかって。
「あれ・・・それって」オレは光太の腕を引っ張ってコンビニを出た。お気に入りのストラップはポケットの中で握りしめた。
「お前、まだ持ってたのか」帰り道言われたのはさっきのストラップのことだ。
「お前物持ちいいな。そうそう、物持ちと言えば」オレは光太の話を適当に聞き流した。
物持ちなんて良くない。
ポケットの中で握ったストラップ。ドラゴンに取り外し可能の剣が付いた金のストラップ。よく土産屋で見るものだが。
もう金のメッキは所々禿げていて、剣の柄も欠けてしまった。ドラゴンの目にはまっていた緑の目もどっか行っちゃった。
これは光太がくれた物だった。小学校4年の時、風邪で遠足に行けなかったオレに買ってきてくれた物だった。光太にはオレ意外に友達がいた。でも、オレのことも忘れずにいてくれたことが嬉しかった。
それに初めてだった。友達から、親友からお土産をもらうのは。ずっと一緒だったからお互いに土産なんて渡したこともなかった。
その前も、それからも。
だからこれは光太がオレにくれた最初で最後の土産なんだ。たぶん。
「一ヶ月前、三者面談があったろう?」自分の話を中断された光太は少し顔をしかめた。
「オレも、高校決めた。オレも東校に行く」言ったら光太は唖然としていた。
「な、マジかよ!?お前噂だと超進学校の北川校って」
「噂などただの言葉の戯れに過ぎない。」先生にも言われた。
『お前ならもっと上を狙える。北川高だって余裕だ。東校で止まるなんて・・・。」決めるのはオレだ。オレの権限だ。だから言ったんだ。
「あー、お前一人暮らしすんのが嫌だからだろ?だから近くの東校にしたんだな」光太はケラケラ笑う。そんなにおもしろいかな?
「あぁ、オレの様に神に愛された者が北川校に行けば、誰もが自信喪失してしまうだろ?オレはまだ自由に泳いでいようと思っている。」オレはあの日、あの時先生に言った言葉をそのまま光太にも言った。
「お前そうゆうこと言うから変に誤解されんだよ。ったく、かわいくなーな」ブツブツ文句を言う光太の口元は笑っていた。それを見逃すオレはない。
15年間。コイツと一緒にいた時間は苦労もあったしオレには考えさせられるようななことも多い。でも、退屈しない。楽しい。
いつか自分たちが別々の道に進まなければいけないのはわかっている。ただ、まだ「一緒にいる」ことを選べるならオレはまだ光太と一緒にいたい。
どうか、今のこのバカみたいな関係がもう少し続くように。
どうか、このお土産が本当に光太からの最初で最後のお土産になるように。
「睦月、早く帰るぞ。勉強しねーと」
「あぁ」
いつまで続くかわからないこの関係を、これからも・・・。