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コロポックルの小さな冒険

作者: 石動 友

 北海道の、深い深い森の奥にある、大きな大きなフキの下には、コロポックルという小さな小さな人達が居ます。

 コロポックルたちは小さいけれど、とても器用です。彼らは木の皮や毛皮で作られた綺麗な模様の服を着て、フキの下に建てた家に暮らしています。

 昔はいろんな所に居た彼らですが、どんどん自然が無くなってしまい、今では人の来ない森の奥で、ひっそりと暮らしています。


 密集したフキの下にあるコロポックルの村では、朝から元気な声が響いています。

「おーい、ピリ。遊びに行こうぜ!」

「ちょっと待ってよ、ポロ」

 子供のコロポックルのポロとピリは、大の仲良しです。

 ポロは勇敢でいつも元気いっぱい。ピリは少し臆病で食いしん坊。

 さてさて、今日は何をしようかな?


 コロポックルにとっては、散歩するだけで大冒険です。

 草や石ころ、木の根っこ。いろんな物を乗り越えて、ポロとピリは進んでいきます。

「あ、大きな笹の葉があるよ」

 歩いていると、ピリが笹を見つけました。

「本当だ、よし、コレで舟を作ろう」

「「よいしょ、よいしょ」」

 2人は腰に下げた短刀で笹の葉を切り取ると、端っこを折り曲げて、舟を2つ作りました。それを持って、川へと向かいます。

 川辺へたどり着くと、日の光を浴びてキラキラする水面に、笹の舟を浮かべ、2人は小枝を使って漕ぎ出しました。

 笹の舟は、川の流れに乗って、どんどん進んでいきます。

 今日は天気も良くて、ポカポカです。そんな日の川下りはとても気持ちが良くて、良い気分です。

 あんまり気持ちが良いものだから、ピリは舟の上で寝っ転がって、ウトウトしはじめました。

 すると、突然舟が揺れ出しました。

「わわわ、どうしたんだろう?」

 水面を覗くと、鮭の群が泳いでいます。

「こんにちは、鮭さん」

 2人は鮭たちに挨拶をしました。

「やぁやぁ、こんにちは。ちょっと下を失礼させてもらうよ」

 鮭たちは全身のヒレを揺らして、元気に泳いできます。

 すると、一匹の鮭のヒレが、ピリの乗っている舟に辺り、船の底が少し破れてしまいました。

「わぁ、舟が沈んじゃう!」

 実は、ピリは泳ぐのが苦手なのです。

 さあ、たいへん!

  2人は急いで舟を漕いで、岸に上がりました。

「ふぅ、危なかった」

 すると、ピリのお腹がグゥ~~っと鳴りました。

「慌てたから、なんだかお腹が減っちゃったよ」

「まったく、君は食いしん坊だな。じゃあ、何か食べ物を探そう」

 ポロは少し呆れながらも、一緒に食べ物を探しました。

「あ、あそこに木イチゴがなってるよ!」

 食いしん坊のピリが、低い木に実っている木イチゴを、いち早く見付けました。

 木イチゴは、どれも赤くて美味しそうです。

「甘酸っぱくて、美味しいね」

 ポロとピリは、木イチゴをお腹一杯食べました。

「ふー、美味しかった」

 お腹が膨れて元気になった2人は、また歩き出しました。

「所で、ここは一体どこだろう?」

 気ままに川下りをしたものだから、すっかり遠くまで来てしまっていました。

「よし、あの背の高い花に登ってみよう」

 ポロは2メートルほども大きなモウズイカに登って、周りを見下ろしてみました。思ったよりも遠くへ来ているようで、村があるフキはこの高さからでは見えません。

 けれど、いつも冒険をしている2人は、これぐらいでは慌てません。とりあえず下ってきた川まで戻って、そこから上流へ行くことにしました。

 しかし、2人が川を目指して歩き始めると、急に草をかき分けて、キタキツネが飛び出してきました。

「なんだ、ネズミかと思ったら、コロポックルか」

「なんだとはなんだ! いきなり出てきて、危ないじゃないか!」

 ポロはキタキツネに文句を言いました。

「うるさい! お前等は俺に食べられるんだ!!」

 キタキツネはそう言うと、口を大きく開けて、ピリを食べようとしました。

「うわーー!!」

 ピリは慌てて、キタキツネの口を避けました。

「助けて、ポロ!」

「ええい、ちょこまかとすばしっこい奴め」

 キタキツネは、今度はポロを食べようとします。

「食べるだって? そんな訳にはいかないぞ!」

 怒ったポロは、腰の短刀を抜きました。

 ポロが襲いかかるキタキツネを迎え撃とうとしたその時です

「うぉーーーー!」

 森の中に、大きな声が響きました。

 なんと、向こうからヒグマが暴れながらやってくるではありませんか。

「ひゃあ、ヒ……ヒグマだ!!」

 暴れるヒグマに、キタキツネは腰を抜かしてしいました。

「うわぁ、ポロ逃げようよ」

 ピリも泣きそうになりながら、ポロの袖を引っ張ります。しかし、勇敢なポロは逃げません。

 ヒグマはなんだか不思議な暴れ方をしていました。木に体を擦りつけたり、地面を転がったりしているのです。

「おい、君はなんだってそんなに暴れているんだい?」

 ポロが暴れるヒグマに尋ねました。

「体がチクチクして、イライラするんだ」

 ヒグマはそう答えました。

「体がチクチクする?」

 よく見ると、ヒグマの体にはオナモミの実がたくさん付いていました。オナモミの実はトゲトゲしていて、よく服や毛にくっついてしまうのです。

「ははぁ、どうやら君は、オナモミがたくさんある道を通ってしまったんだね。よし、ボクたちが取ってあげるよ」

「本当かい!?」

 それを聞いたヒグマは、暴れるのを止めて、2人の前でジッとしました。

「「よいしょ、よいしょ」」

 ポロとピリは、大きなヒグマの体に付いたたくさんのオナモミの実を、全部取ってあげました。

「いやぁ、ありがとう。スッキリしたよ」

 ヒグマは大喜びです。

「どういたしまして」

「お礼にコレをあげよう」

 ヒグマは綺麗な模様のガラス玉を、2つくれました。

「うわぁ、とても綺麗だなぁ」

 ガラス玉を受け取ったポロは、その美しさに、一目ですっかり気に入ってしまいました。

 両手に持ったガラス玉が、太陽の光で眩しいぐらい輝いています。

「まるで、小さな太陽みたいだ」

 ピリもこのガラス玉が気に入りました。

「前に拾ったんだが、儂は食べ物にしか興味がないから、いらないんだよ」

「ありがとう、ヒグマさん」

 2人はヒグマにお礼を言いました。

「それじゃあ、さようなら」

 ヒグマはスッキリした顔で、帰って行きました。

「ヒグマさん、さようなら」

 2人はヒグマに手を振りました。

「ボクたちは、とても良い物をもらったね」

 ポロが手に持ったガラス玉を見ながら言いました。

「うん。みんなに良いお土産ができたね」

 ピリも嬉しそうに言いました。

 すると、さっきのキタキツネが現れました。

「なんだ、まだやるのか?」

 ポロは、自分の分のガラス玉をピリに預けると、短刀に手をかけます。

「あんなに暴れていたヒグマを大人しくさせるなんて、君たちは小さいのにすごいなぁ」

 碑が馬を助けた2人を見て、キタキツネはすっかり感心していました。

「もう君たちを食べようなんて思わないよ。どうか、俺を君たちの友達にしておくれ」

 キタキツネは地面に伏せて、頼みました。

「いいよ。じゃあ、ボクたちは今日から友達だ」

 ポロはキタキツネを許してあげました。

「よろしくね、キタキツネくん」

 2人は握手の代わりに、キタキツネの鼻を撫でました。

 ヒグマの体に付いたオナモミの実を取っている内にすっかり日が暮れてしまったので、2人はキタキツネの背中に乗って、村まで送ってもらうことにしました。

「キタキツネくんの体は、フカフカして気持ちいいね」

 ポロはすっかりご機嫌です。ピリは気持ちよくて、眠ってしまいました。

 村に戻ると、さっそくガラス玉をみんなに見せました。2人のお父さんとお母さんも、他のコロポックルたちも、みんなこのガラス玉を見て驚きました。

「おまえたちは、すごい宝を見付けたぞ!」

「今夜はお祝いだ!」

 その夜、コロポックルたちはお祭りを開きました。

 ポロとピリは今まで滅多に食べたことのない様なごちそうを、お腹いっぱい食べました。もちろん、2人の新しいお友達も一緒です。

 2つのガラス玉は、コロポックルたちの宝物になりました。

 そして、今日もポロとピリは小さな冒険に出かけます。

 さてさて、今日は何をしようかな?



おしまい

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