どうしよう
昨日は、忙しくて更新できませんでした。すみません。劉生は、クローバー探してかなり遠くまで行ったのですが、みつかるんですかねえ?
那覇空港の外に出ると、空は高く晴れわたっていた。
まじかよ。ほんとに同じ日本?今、24℃もあるし。俺、間違ってグアムとかに来てんじゃないよな?
白のタンガリーのシャツを脱いで、薄手のカットソーの袖を捲りあげた。コートはすでに脱いでカバンに引っ掛けてある。
こんなに暑いと知ってたら、コートなんか空港のロッカーにでも入れとけばよかったかな。
12月なのに背中にうっすらと汗をかきながら、劉生はモノレールに乗って予約したユースホステルを目指した。
ホテルにチェックインした後、モノレールの車窓から見えた近くの公園に行った。下草の青々とした公園のようだったので、クローバーがあるかもしれない。
公園の遊歩道のそばには、シロツメクサがところどころ群生していた。
シロツメクサもクローバーの仲間だってネットには書いてあった。地元で探した時には手が凍えて辛かったけど、ここでなら何時間でも探せそうだ。
とにかく、早く探して瑠夏のところに行きたい。
劉生は、遊歩道の柵をこえてシロツメクサの群生しているあたりをていねいに探し始めた。
巨体の劉生が身を屈めて草っぱらで探し物をしている光景は、散歩をしている人の目を引いた。
みんな興味津々で劉生に目をやりながら通り過ぎて行く。
大きな足で葉っぱを踏みつぶさないように、ゆっくりと探した。前かがみの中腰で、1時間も探すと、腰が軋みだした。曲げっぱなしの膝も悲鳴を上げる。
こりゃ、思ったよりきついな。
何度か休憩をいればがら、公園の遊歩道を探し終えた時には、もう日が暮れかかっていた。
夕闇が迫る中、目を凝らして四つ葉のクローバーを探すのは無理だと判断した劉生は、探すのを中断して時計に目をやった。
そろそろ4時くらいか?
って
えっ、6時?もうそんな時間か?
沖縄って時差もあったっけ?
劉生は、薄暮の空と腕時計の数字を見比べて、時間の感覚が違う土地に来たのだと自覚した。
体中痛いし、日も暮れる。
今日は、もう終わりにしよう。お腹も減ったし。
公園を出てホテルへと戻る途中で小さな食堂を見つけて入った。
なんにしよう?
壁に書いてあるメニューを眺めて悩んでいると、隣の席にとんかつ定食らしきものが運ばれてきた。
湯気が立ったアツアツの汁に山盛りのご飯、それにボリュームのあるとんかつがキャベツの千切りの上にのせてある。
見ただけでお腹がなり、口の中に唾がたまった。
あれにしよう。
「すみません。」
手をあげて店員を呼ぶと、となりに運ばれてきたものを指さした。
「あれと同じの、お願いします。」
店員は頷いてメモを取った。
特大のとんかつは、きっちりと劉生の腹におさまり、満足して店を出た。
明日は、早起きして宿から少し離れた公園に行ってみよう。
宿に着くと、シャワーを浴びてすぐ横になる。
何分もしないうちに劉生は寝息を立てていた。
翌日から、少しずつ範囲を広げて探したが、四つ葉のクローバーはなかなか見つからなかった。
あったかくて長時間探せるから、何日もしないうちに見つかるだろうとたかをくくっていたら、あっというまに1週間が過ぎた。
さすがに焦りが募る。
予算的には、かなり切り詰めているからまだいけるが、時間が立ち過ぎるのがきにくわない。
暖かくて探しやすいからすぐ見つかると思ったのに・・・・・
どうしよう?
このままここにいるより、寒くて探しにくくても家に戻って探した方がいいのか?
ネットでは、けっこう広い野原みたいなとこや田んぼのあぜ道、牧草地なんかに見かけることが多いって書いてあった。
そういうところなら、うちの近くの方が多い。
勢いに任せて遠すぎたかな。
沖縄なんて。
1週間探しても見つからないので、さすがに後悔の二文字が頭を占めるようになっていた。
劉生は、初日に入った食堂でため息をついた。
初日に入ってから、劉生は食事はずっとここで食べている。ボリュームの割に安いのと、味がよくて気にいってる。
今日も、収穫なしの疲れた体を引きずってこの食堂で夕食を食べていた。
「毎日来るけど、この近くに越して来たのか?」
食器を片づけながら、店員が劉生に声をかけた。
「えっ、は?いえ、俺は旅行で来てます。」
「旅行で?うそつけ。」
「・・・・・・・・・・・」
突然うそつき呼ばわりされて劉生は面食らった。
「あんた、毎日、1週間前、この先の公園で何か探してただろ?何日か、場所を変えて探してたの、偶然見かけた。あんた、ごっつい体してるから目立つんだ。観光客は、そんなことしない。」
見られてたのか。
まあ、周りも気にしないで探しまくってたから、不審がられてもしかたないか。不審がられるの、慣れてるしな。
「なあ、あんなに一生懸命、なにを探してたんだ?探し物、見つかったのか?」
他に客がいないこともあり、店員は、なかなか劉生のそばを離れなかった。
うぜえな、こいつ。
あんま、関わり合いたくないから、もう出よう。明日からはもうここへは来ない方がいいかな。
劉生が無言のまま立ち上がろうとすると、店員が呼び止めた。
「なあ、けっこう膝も汚すくらい一生懸命になにを探してるんだ?もう1週間だろ?そんなに必死に探すってことは、大切なものだろ?探し物が何か教えてくれたら、俺も探すの手伝うぞ?ちょうど、明日、休みだし。」
「手伝うって?俺のこと、よく知りもしないくせに?」
目を細めて警戒心をあらわにする劉生に、店員は破顔した。
「まあ、変に思われるのはしょうがないな。この1週間、うちの売り上げに協力してもらってるお礼だと思ってくれればいい。」
「・・・・・・・・」
劉生は、店員を一瞥してそのままレジに行くと、代金を置いて外へ出た。
店を出て少し歩いたところで後ろから腕を掴まれた。
「なにするんだっ。」
劉生は、腕を振り払おうとした。
「そんな、構えるなよ。さっき、ため息ついてたろ?てことは、まだ見つかってないんだ。そうだろ?」
「なんで、そんなに俺に構おうとするんだ。ほっといてくれ。」
「俺も困ってたところを助けてもらったから。」
「は?」
「さっきの店の主人に。その時、言われたんだ。ひとりで悩んでても解決しないことが、ふたり、三人と一緒に考えてくれる人が増えたらいいアイディアが浮かぶもんなんだって。」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから、おまえも困ってるんだったら、誰かに相談した方がいい。その誰かに俺が立候補してやる。」
「・・・・・そういうの、大きなお世話って言うんだ。」
「大きなお世話でもなんでも、いいだろ。な、困ってるなら話してみ。」
「・・・・・俺は、あんたの名前も知らないんだぞ。」
「なら、自己紹介からな。俺は、飯田 哲郎。あてもなくこの沖縄に来て無銭飲食したら、さっきの店の主人に拾われて、今はそこで働かしてもらってる。」
劉生は呆れた。
これだけ迷惑だと態度に表してもひびかない。
ふつう、ここまで嫌がれば諦めるだろ。まして、俺の風貌はほとんどが敬遠するのに。
まさか・・・・・
「言っとくけど、俺はノーマルだからな。」
っ!
自分の心が見透かされいる気がして劉生は赤くなった。
「ま、あんたの体格は、一部のマニアからは垂涎ものかもしれないけど、俺は興味ないから。世知辛い世の中だけどさ、たまには人のいいやつもいるんだって。信じろよ。」
朗らかに笑う哲郎の顔は、悪人には見えなかった。
よし、腹を決めた。
万が一、何かあったとしても、俺は自分の身くらい自分で守れる。自分の身の心配をするより早く四つ葉のクローバーを探したい。
明日1日手伝ってもらって、それでなければ別の場所を探す。
そうしよう。
「・・・・・わかった。あんたには負けた。探すの、手伝ってもらうよ。俺は、石田劉生。」
「よろしくな、劉生。まあ、立ち話も何だから、店に戻って話を聞かせてくれよ。」
哲郎は顎で劉生を誘うと先になった。劉生は、小さく嘆息すると後に続いた。