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十三番目の騎士

「おめでとう、君は十三番目の騎士となった」


 一人の老人が目の前の男を見て言った。


 男は黒のシャツにズボンを着て、腰に二本の剣を帯刀していた。


「恐れ入ります、元帥。しかしながら、私のような若輩者がいて平気でしょうか」


 その言葉を聞くと、元帥と言われた老人――ゴードン――は、大声を上げて笑った。


「それほど畏まることなどない。君の実績からみて、今までの褒美では少なすぎるといっても過言ではない」


「しかし……」


 男の続けようとした途端、目の前に手を出され止められた。


「十二神将において異例の十三番目の騎士だからか、ラッド」

 黒服の男は、その言葉に頷く。それを見るなり、ゴードンは息をついて、自分の髭を撫でた。


「ラッド、その考えは改めるべきだ。君の実力は既に私を越えていると言ってもいい。謙虚するの君の良いところだ、だが、謙虚すぎるのは悪いところでもある」


「ですが、ゴードン元帥! 私はただ民のため、国のため、それだけの為に生まれたのです」


 ゴードンにとって、彼の感情に左右されるところは騎士にとって間違いであると思えた。しかしながら、実力においては自分でも太鼓判を押してしまうものである。


「感情論では国は治まらん。それは、君が殺めた彼らもそうであっただろう」


 ラッドの担当は、反抗する民や貴族の鎮圧を主にしており、そして彼らの雄弁はいつも人の心に揺さぶり掛けるものだった。


「君はまだ若い。そして、十二神将になり責任はまた重くなる。君の肩には、国民の命さえあるのだよ。これより執務により失礼するよ」


 ゴードンはたちあがり、部屋から出ていった。


 ラッドは、ただ彼の背中を見ていることしかできなかった。


 そんな日があったことをラッドは思い出しながら、青空を見ていた。


 周りには死臭が漂い、体から血が流れ出て寒気を覚えた。


(私は死ぬのか)


 その日は、この国最高の十二神将と呼ばれる騎士団において、異例の十三人目に選ばれての初任務だった。


(呆気ないものだ)


 初任務は、隣国オルデシアとの戦争だった。始めはこちら側が優勢であり、相手の前線を押し込んでいたが、途端、相手側から巨大な竜が現れるや否や、すぐに此方側の前線は押し込まれていった。


(彼らは生き残っただろうか)


 ラッドは副官に撤退を伝え、殿として自らと数十人の精鋭を引き連れて立ち向かったが、最後にはこの様であった。


(私は守れたのだろうか)


 殿を勤め、私を慕ってくれた兵たちは、皆死んでしまった。彼らは最後まで、私を逃がそうとしたのだ。


「オーディス……アンジー……カナリア……ドッジ……みんな…………」


(私はやはり守れなかったのか)


 空を掴もうとした両手は何も手に入れられず、血で染まった手しか見えなかった。 

 何も掴めず、彼の意識は落ちていった。

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