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もろマネ 〜とうもろこしお嬢様は常識を知らない〜  作者: 瑞柿けろ
第一章前半 とうもろこしと銭ゲバと
10/18

第10話 勘違い!?俺はそんなやつじゃねぇーー!!


「んだよこれ!?」


 翌日の昼、店を始めて四日目。

 なんとか地獄の勉強を終えたのに、俺を待ち受けていたのは最悪の事実だった。


「いらっしゃいませだにゃーー♡ 昨日から開店しました“フルーツバーガー専門店”だにゃーー♡ ぜひ来て欲しいにゃーー♡」

「なんでメイド服と猫耳を付けて接客してんの!?」


 女子生徒たちが可愛らしい服を着て店をやっている。にしてもこれ……


「男子生徒ウケでも狙ってんのか?」

「うわ見てあっちの客、鼻の下伸ばしてるよ。嫌だね〜〜」

「まさか同じハンバーガーで攻めてくるなんて、とても挑戦的ですわね」


 いや、まぁそうなんだけどさ、


「そもそもフルーツバーガーってなんなの? イメージ湧かないんだけど」

「というと思ってこの私が買ってきましたーー!! テイクアウトで!」


 おー、さすが柊……あ、いや待ってくれ?


「ライバル店の食べ物を目の前で接客中に食べるってどうなん?」

「ささ! 食べてみよ!!」


 俺の疑問に答えることなく、柊が商品の入った箱を開けてみた。


「おぉ! 可愛い!!」

「あらあら、これは素敵ですわね!」

「これは――バーガーなのか?」


 中身を見て嬉しそうな声の二人、それとは対照的な困惑してしまう俺。


 スイーツバーガーの見た目は、俺の知るバーガーとは全く違う物だった。


「生クリームがいっぱい入ってるよ! 美味しそう!」

「苺やオレンジもありますわね! とてもフレッシュで素敵ですわ!!」

「なるほどな、柔らかいパンケーキで挟んでるのか。味も美味いし、……相手もなかなかやるな」


 あくまでも“パンで具材を挟む”ことが定義であるならば、これもバーガーであることには変わらないだろう。


「にしても美味いなこのバーガー……デザート系か……ありだな」

「小鉄が着想を得てる! それは凄い予感!? でも本当に美味しいね!」

「これは女子の学園生は好きそうですわね」

「たしかに……」


 実際、メイド服に釣られたアホな男共もあっちの店にいるが、基本的には女生徒の方が多い。

 “デザートは別腹”という、女性たちには第二胃袋があるからな、人気は女子に向くだろう。


「それにしてもあざと過ぎないか? あれで接客って露骨な戦略だな」

「お、なんでもやるコテツにしては厳しめだね」

「強制するのは駄目だろ? 店員の不満はないのか」

「ふふふ! そのことはもう調査済みだよ!」


 出た、“情報屋の柊”モードだ。

 探究心に忠実なコイツが、メモ帳を自信満々に開けた時は信用できる。


「ライバル店の人たちは“給仕教育部”の人たちみたいだよ!」

「なんだそれ? 部活なのか?」


 柊に疑問を投げかけると、即座に雛子が答えてくれた。


「あら、小鉄様ご存知ありませんの? 特権生徒たちの雇っているメイドが指導者として、給仕のイロハをご教授している部活ですのよ」

「は? んなガチな部活があんの!?」

「将来のメイド育成を目的とした由緒ある部活でしてよ。なんでも優秀な二年生はもうメイドとして、卒業後の就職先が決まっている方もいるとか」


 そんなしっかりしたところの方々が!? 俺たちになんのようなんだよ!?


「あーーそれはねーー!」

「そこからはニャーがお話しますにゃぁーー!」

「うわ、うるさ……なんか来た」

「あら? お隣のお店の方ですわね」

「この人は二年生の霜辺(しもべ)先輩だよ!! ほら! 一番目立ってた!」


 あ、さっき接客してたやけに声の大きくて、語尾があざとい人だな。俺たちになにか?


「コテツ……辛辣だよ」

「仕方ないだろ、事実だ」

「相手に聞こえてなくて良かったよ……」


 真実を言ってなにが悪い、他の男はどうか知らないが俺は客観的に見るぞ。

 どうせあれだ。俺たちがいたのにすぐ近くに店を出すなんて、挑戦的なやつである事は間違いないだろう。


 一言、文句を言ってやる。


「おいアンタ――」

「ニャーたちはご主人様たちの奉仕の精神に感動したんですにゃぁーー!!」


 ぶちころ――え? な、なんだって?


「安い値段で生徒のために頑張ってる姿を見て、部のみんなが感動したんだにゃぁーー! これこそが本来の奉仕の精神だにゃと!」

「え……はぁ?」

「先生やみんなと話し合って、ここでしばらくニャーたちもお店をすることに決めたにゃーー!! 料理の腕も磨けるしにゃぁーー!!」

「ふ……ふぇ??」


 ほ、奉仕って……いやその前にその語尾のせいで話が入ってこないな……。どうにかならんのか。


「ごめんなさいですにゃ! ニャーは仕事モードの時はこの語尾になっちゃうですにゃ!」

「難儀な性格してんなー」

「コテツだけは言われたくないよね。それ」


 それって、俺の性格が難儀って言ってない? 柊? お前にもそれはブーメランだからな?


「あらあら、それは面白い性格してますわね」

「雛子……お前も人のこと言えねぇだろ……」


 あ、駄目だ。この場にいるメンツが一癖も二癖もあるんだった。人のこと言える奴いないわ。

 なんか奉仕の精神と言われると、少し申し訳なさが湧いてくる。


「コテツはお金のことしか考えてないもんね」


 うるせぇ、静かにしてろ。


「商品にならない物を無償で受け取っていると聞きましたにゃぁーー! そんなこと聖人君主のやることにゃ!」

「あ、いや……ただ、安く素材を仕入れたいだけだぞ……」

「それにはもっと喜んでもらえるように、商品を増やし続けて! 自分の時間も削るなんて! ニャーも感動しましたにゃぁーー!」


 あ、いや、それも……


「コテツが売り上げを増やすためにしただけなのにね!」

「小鉄様!? まさかそんな深い考えが!? やっぱり大物ですわね!!」


 金儲けのことしか考えてないのに、勝手に勘違いしないでくんね!? 俺の脳みそには金のことしか入ってねぇよ!?


「これからも奉仕の心得を胸に頑張っていこうにゃぁーー!! よろしくにゃーね!!」

「お、お……おう。よ……よろしくな?」


 変に勘違いをされたまま、先輩と熱い握手を交わす。

 邪な考えしかなかったのに、そんな純粋な眼差しを向けないでくれ……。さすがに心が痛むわ。




 四日目の売り上げは五万ちょっとしかいかなかった。




「明日からもニャーたちはここで奉仕を続けるにゃー! よろしくにゃーね!」

「オロロロロロロッ――」

「コテツが吐いたーーーー!!?」



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