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『文字』が絶滅した世界で、地下の清掃員だけが古代の数式を読める件 〜エリート歌姫の暴走魔法を口笛一吹きで上書きしたら、なぜか聖女候補に執着されるようになりました〜  作者: GenerativeWorks
第2楽章:数理音楽の修行と陰謀

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第18話:【深層のアーカイブと、禁じられた定数】

1. 理論の袋小路


氷結のコンポーザーが去った後、教室内には重苦しい沈黙が流れていた。

学生たちは、自分たちが「魔法」と信じていたものが、カイの手によって無機質な「演算」へと解体されたショックから立ち直れずにいた。


「……カイ。あなたの言う通りなら、私たちが一生をかけて学んできた『聖歌』は、一体何なの?」


一人の女子生徒が、震える声で尋ねた。

カイはチョークを置き、窓の外のひび割れた空を指差す。


「それは、崩壊バグを隠すためのパッチワークだ。心地よい音楽を流して、世界が壊れていることから目を逸らさせている。……だが、もう限界だ。空のひび割れが見えるだろ? あれはシステムのメモリ不足だ」


カイはセシル教授に向き直った。


「教授。約束だ。学院の地下にある『最深部アーカイブ』へのアクセス権をくれ。世界のOSマザー・システムをリブートするための、オリジナル・コードが必要だ」





2. 地下書庫の「亡霊」


セシルに導かれ、二人は学院の最下層、物理的な本と巨大なデータサーバーが混在する『無音書庫』へと降りた。

そこは最新デバイスの電波すら届かない、静寂の領域。


「ここにあるのは、文字が禁止される直前の研究データよ。……でも、誰も読めない。あまりにも複雑な数式コードでロックされているから」


セシルが指し示した中央コンソールには、無数の幾何学的な紋様が明滅していた。

カイは一目見て、その正体を見抜く。


「……『不完全性定理』か。読ませる気がないな」


カイはリアの手を引き、コンソールへと近づけた。

彼がリアの手のひらに直接書き込んだのは、昨日教えた『BOIL』や『SLOW』とは次元の違う、世界の根源を定義する『黄金比の定数』。


『P-H-I』





3. 文字による「解凍(展開)」


「リア、俺の鼓動クロックに合わせろ。……このサーバーの中身を、無理やり『翻訳ビルド』するぞ」


「(……ええ。私のすべてを、あなたの『文字』に捧げるわ)」


リアが静かにハミングを始める。

それはもはや音楽ではなく、デジタル信号に近い高周波。

カイがコンソールを指先でなぞると、明滅していた紋様が次々と「意味を持つ文字列」へと姿を変え、滝のように流れ落ちた。


「これは……マザー・システムの『初期化命令イニシャライズ』!? バカな、そんなものが学園の地下に……!」


セシルが驚愕の声を上げる。

画面には、100年前の言語編纂局が隠蔽した真実が映し出されていた。


『世界は歌で救われたのではない。文字を奪い、民衆の思考(演算能力)をシステム維持のリソースに転用することで、延命されたに過ぎない』


「……つまり、今の人間は、生きて歌っているだけで『世界の電池』にされてるってことか。反吐が出るな」





4. 招かれざる「共鳴」


その時、アーカイブの奥から、カイのそれと酷似した「文字の波動」が放たれた。


「ようやく辿り着いたか、カイ。……君なら、その鍵を開けると信じていたよ」


闇の中から現れたのは、ホログラムではない、実体のシオンだった。

彼の背後には、数百の浮遊する小型スピーカーが不気味に静止している。


「シオン……! なぜここに」


「この学院は元々、僕たちの『文字』を再発見するために作られた実験場だ。……君が開いたそのソースコード、僕が『ディソナンス』のために回収させてもらう」


シオンが指を鳴らす。

瞬間、アーカイブ内のすべてのデータが「物理的な不協和音」へと変換され、暴風となって二人を襲った。


第2章の折り返し。

聖詠学院の地下で、ついに「文字」を持つ二人の天才が、世界の主導権を懸けて激突する。

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