【第6話:システム警告!?暴走する恋愛ルート】
次の日、学園に登校する足取りは重かった。
というのも、エリナが俺を避けている気配がバチバチにあるからだ。
(やっぱ昨日のアレ、完全に誤解されたな……いや誤解じゃねえけど!そもそも俺は男だし!!)
そしてさらに追い打ちをかけるように、脳内システムボイスが唐突にアラートを鳴らした。
【警告:攻略ルート進行に重大なズレが発生しています】
(お、おう……? なんかヤバそうな響きだな)
【クラウス・レオンハルト殿下との恋愛度が特定値を超過しました。バッドエンド#048『愛憎の鎖』への分岐リスクが上昇しています】
(ふぁっ!? 愛憎の鎖って、たしか王子が“独占欲の化身”になって他の全キャラを消し飛ばすBADじゃなかったか!?)
おかしい、ゲームではヒロインと王子がラブラブしない限り発生しないルートだったのに!
(何をどうしたら俺で発動するんだよ!!)
このままでは、トゥルーエンドどころか地獄の監禁√直行になってしまう。
なんとか王子ルートから距離を置かなければ……!
だが。
「ヴィオレット、今日の課題、私と一緒にこなしてくれないか?」
登校早々、王子からのダイレクトお誘いである。
さらに廊下を歩けば、クラスメイトたちが騒ぎ始める。
「ヴィオレット様、最近クラウス様とずいぶん仲が良いみたい……」
「まさか……本命?」
ちがーーーーーう!!
俺は足早に逃げ出し、中庭の物陰で休憩していると、静かな気配とともに別の声が響いた。
「……あなた、また逃げているのですか?」
セシル・オルランド。
「いや、あの、そういうわけじゃ──」
「王子と仲睦まじい姿を見せつけたその舌の根も乾かぬうちに……フフ、興味深い」
「なんでそんな薄ら笑い浮かべてんの!? もしかしてフラグ立てに来てる!?」
やばい。セシルもフラグ建築を始めたら、ルートの制御が完全に不能になる。
その時──
「……ヴィオレット様」
小さな声。振り向けば、そこにはエリナが立っていた。
彼女はぎこちない様子で、でもはっきりとこちらに歩み寄ってくる。
「昨日は……その、私、少しだけ、意地悪な気持ちになってしまって……ごめんなさい」
涙ぐむエリナ。ああ、これ、選択肢ミスったらBAD行くやつだ。
(でも俺は、もう決めたんだ……)
深呼吸して、一歩踏み出す。
「エリナ、違うのよ──違うんですの! ……わたくし、ただ、あなたに幸せになってほしくて……!」
やや口調が混乱していたが、気持ちは伝わったようだ。
エリナはくすっと笑って、小さく頷いた。
(よし、これで好感度リカバリーは成功……!)
だがその瞬間、背後から強烈な殺気。
「……“あなたに幸せに”? ふふ、これはまた興味深い言葉だ」
セシル。
笑ってるのに、目が笑ってない。
また地雷を踏んだ気しかしない俺──じゃない、ヴィオレットの受難は、まだまだ終わらない。