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怪我と勝利



怪我と勝利



初めて魔物に遭遇したというのに、その魔物の数は俺の予想を遥かに超えていた。



認識出来たのは、ファイアウルフが2頭、スライム5匹、キノコモドキ1匹、ジャッカロープ2匹だ。


ファイアウルフ以外はレベルが’1’なので、俺でも戦えるけれど、それにしても数が多すぎる。



ティアナは、ファイアウルフ2頭が同時に飛び掛かってきたところに無数の氷弾を放った。


その尖った氷のやいばが、ファイアウルフの目や体に突き刺さると2頭は20mほど後方に弾け飛んだ。


が、1頭が体制を立て直し、その特徴でもある炎のブレスを、ティアナ目掛けて吐き出してきた。



俺の方はというと、動きが俊敏なジャッカロープ(角の生えた兎)に襲いかかられていた。


「くそっ、結構すばしっこいな」


勢いよく突っ込んでくる兎の尖った角を盾で弾き、大きく剣を振る。


しかし剣を両手で持てないため、本来の威力が出し切れない。


そうこうしているうちに、キノコモドキが近くまでやって来て、いきなり毒胞子を撒き散らかした。


「ぐっ、この紫色の煙は絶対に吸ったらいけないやつだ!」


俺はいったん毒胞子の届かないところまで後ずさり、距離を取った。


ただラッキーなことに、この毒を吸い込んだジャッカロープたちが倒れ痙攣し始める。


「しめた、こいつらは連携した戦闘はできないんだな」


後からやってきたスライムの2匹も毒の中で動きを止めた。



この隙にキノコモドキの後ろに回り込み、剣を思いっきり縦に振り降ろすと、エリンギを切ったような感触と共にそれは真っ二つになる。


「よし残りスライム3匹だ!」


これは楽勝かと思ったが、現実はRPGのスライムとは違い結構手強い。



こちらの剣の間合いの外から猛烈な勢いでジャンプし突っ込んで来る。


盾で受け止めるが、かなりの衝撃で一発で腕が痺れ、よろけて倒れそうになる。


すぐさま体勢を立て直そうと踏ん張るが、残りの2匹も次々に突進してくる。


「ぐあっ」


俺はスライム3匹の体当たりを何回も受けて跳ね飛ばされ転がった。


しかも体当たりされた痛みで、あっと言う間にその場で動けなくなった。


「やばい。 速く立ち上がらなければ殺される」


しかし、体当たりを受けた脇腹に激痛が走り、まったく動くことができない。



「くっ、ダメか・・」


冒険が始まったばかりなのに、ここでスライムに殺されるなんて情けないにもほどがある。



「一樹くん、よけて!」


突然、近くから聞こえてきたティアナの声に、痛みをこらえて体を捻った。


ズドォーーン


0.1秒も経たないうちに、俺のからだの上を火炎がものすごい勢いで走り抜けた。


俺に止めを刺そうと突進してきたスライムたちは、その炎の直撃をまともに受け、一瞬で蒸発し消え去った。



「た、助かったのか・・・」


俺は激痛と安堵でそのまま意識を失った。



・・・

・・



今回の戦闘で、左の鎖骨にヒビが入り、肋骨も2本折れていた。


足の骨は大丈夫だったが、無数の痣ができている。



「一樹くん。 ごめんね。 もう少し早く助けてあげられれば、こんなに酷い怪我にはならなかったのに・・」


ティアナは、めちゃめちゃ落ち込んでいるように見える。


「いや、おかげで死なずにすんだよ。  ありがとう」



『あちゃ~ 昇級判定値が2%になっちゃたぁ』 ←落ち込んでいたのはこっちが原因



「一樹くん。 いまから、回復させるからじっとしていてね」


ティアナは光の杖を俺の体の上にくるように持ち直すとすっと目を閉じた。


ティアナの唇が微かに動いたような気がした途端、金色の光の粒が俺の体に降り注いだ。


『ああ、からだがポカポカと暖かいや・・』


まるで少し温めの温泉に浸かっているかのようで心地いい。


その気持ちの良さで俺はいつの間にか眠ってしまったようだった。



・・・

・・



目が覚めると脇腹の痛みも全身の痣もきれいに無くなっていた。


そして、レベルが’2’になっていた。


どうやらレベルが’2’以上になると自分のレベルが分かるようになっているらしい。


「なんだこれ、めっちゃ恥ずかしいんですけどぉーーー」


そう、胸のところにデカデカと大きな数字の’2’が浮き出ていたのだ。


こんなことなら、レベル’1’でもよかったんじゃないのかと落ち込むと。




「うぎゃー 昇級判定値がマイナスになってるぅーーー!!」


ティアナの大絶叫がマルデンの森に響き渡ったのだった。




第十話(マルデン村の猫耳少女)に続く


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