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レベル1の冒険者


レベル1の冒険者



翌朝、日が昇る前のまだ薄暗い中、俺はティアナに叩き起こされた。


「う~ん。  頼む、もう少しだけ寝かせてくれ~」


「もお、グズグズしているとおいて行くわよ!」


ティアナは容赦なく布団を引っぺがしにかかってきた。


「ちぇーっ。 おもてはまだ暗いじゃんか」


「いいですか! 報酬を先にもらったんだから、わたしたちはそれなりの成果を出さなければならないの!」


「それはそうだけど・・・」


もう少しだけゆっくりしたいのだけれども、ティアナはさらに追い打ちをかけてくる。



「ねえ、チャベル村からマルデン村までの間は、一樹くんの世界の単位で60キロはあるのよ」


「はいーーっ? 60キロって歩くだけでも15時間以上じゃん!」


「そうよ。 いま出発してもマルデン村につくのは夜遅くになるからね」


「そんなにかかるのかぁ・・・ トホホ  ねぇ、出発は明日に・・」


「しませんよ。 村の人たちと契約しましたよね。 それに遭遇した魔物を倒せば、一樹くんのレベルアップも出来るのよ」


「そっかあ。  で、俺の今のステータスっていったいどのくらいなの?  いつかチートって言ってたよね」


「今の一樹くんのレベルは、’1’よ」


「えっ? 今なんて?」


「だから’1’ですって!」


俺は自分の耳を疑った。  だって、レベル1でファイアウルフなんて倒せるわけがないじゃん。


「そっか。  それならMPがすごいんだね?」


「いいえ。 MPは’0’です」


「そ、それなら剣技が」


「ありません」


「わかった、やっぱりもう一度寝る!」


「ダメよ。 もう仕方がないわね。 それじゃあ、いったんこれを貸すから」



そう言ってティアナは、古びた剣と防具を渡してきた。


それはRPGでよく見た、あの初期レベルの装備に見える。


「あの~ これを装着した場合のレベルって?」


「レベルは’1’だけど、素手で戦うよりは勝率があがるでしょ♪」


「いやいや。  相手はファイアウルフでしょ。  これじゃ俺、瞬殺されるやつじゃんね」


「だいじょうぶ。 一樹くんにはスライムとかキノコモドキとかの雑魚を倒してもらうから」


「ちぇっ、カッコわる」


「レベル上げのためだから しばらく我慢するのよ」


「なんだよ。 チートって、結局契約のための嘘だったんじゃないの?」


「い、いやね、もう。  レベルアップしたらチートになれるじゃないの。  頑張りましょうよ」


『ふん、目をそらしている時点で図星だな』



「けっ、俺がRPGのレベル上げにどれだけ無駄な時間をついやしてきたか知らないだろう!」


「RPGって、なにそれ?」


ティアナにゲームの話しをしても仕方がないけど何だか腹立たしい。

 


「まぁいいや。 もうここまで来た時点で俺の負けだわ」


そんなこんなで、俺とティアナはマルデン村を目指して歩き始めたのだった。


・・・

・・


チャベル村を出るとしばらくは、小さな小麦畑が点々とあった。


しかし、もう少し先に進むと畑は荒らされて、作物も大半は枯れている。


なるほど、これじゃあ小麦も収穫できないわけだ。


しかも森には魔物が群れていて危険なために、物流もストップ状態とか詰んでるな。


具体的な状況を見て、今さらながらだけれど村の男たちの気持ちがよく分かった。


・・・

・・


1時間ほど先に進み、暗い森に差し掛かると突然ティアナが立ち止まった。



「一樹くん気を付けて。  この先に魔物がいるわよ」


「えっ、ほんとう?」


魔物とは初めての遭遇だし、ティアナの真剣な目を見て俺は急に怖くなった。


しかも足がガクガクしだす。


もしティアナが一緒にいなかったら、俺は一目散に逃げだしていただろう。



「一樹くん、剣を構えて!」


ティアナの声に、はっと我に返り剣を抜く。


同時に左腕に括り付けた小さな盾を体に引き寄せ、防御態勢をとった。


「来るわよ! 魔物の動きに集中して!」


ティアナの声と同時に恐ろしい唸り声をあげながら、魔物らが俺たち目掛けて突進して来るのが見えた。



第九話(怪我と勝利)に続く

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